Vol.58
「ゲームと健康」
2019.04.01
「ゲームと健康」というタイトルを見て、どのような内容を思い浮かべますか? 目に悪いとか、運動不足になるとか、健康へのマイナス面を指摘する内容を想像するのではないでしょうか?
今回は、大人向けに、健康へのマイナス面をなるべく減らし、プラス面を意識したゲームの方法をご紹介しようと思います。
※ここでのゲームとは、テレビやパソコン、スマートフォンを使ったゲームのことを言います。
■ゲームと視力
・ゲームで視力は低下するのか?
子どもの頃、「ゲームをすると目が悪くなる」と注意されたことはありませんか? ゲームをすると本当に視力は低下するのでしょうか?
結論から先に言うと、ゲームをすることで一時的に視力が低下することがあります。ゲームに夢中になっているときは、比較的近くで画面を見続けてしまいがち。この状態は、目の毛様体筋(ピント調整の役割を持つ)を緊張させ、目を疲れさせます。この眼精疲労の状態が「仮性近視」と呼ばれるような視力低下を一時的に引き起こすのです。
仮性近視は偽の近視ですが、放っておくと本当の近視が進み、本格的な視力低下を引き起こすことも。本当の近視は外科的治療でしか治せませんが、仮性近視なら対策を講じれば治せます。
対策としては、長時間近くのゲーム画面を見続けないようにすること。休憩を入れて目を休めることです。よく、「緑を見ると目に良い」と言われますが、これは、緑の木々などを見ることで自然と遠くを見るからです。
・目を休ませながらできるおすすめストレッチ
加えて、ゲームの休憩時間に目を休めながら行ってほしいのがストレッチ。
長時間ゲームをすることにより、目と同様に酷使するのが手や腕。そんな手や腕をケアするストレッチがアメリカの手の外科学会William W.Walsh代表によって推奨されているのでご紹介します。手のストレッチをすれば、自ずと目も休まるので一石二鳥です。
【参考:米誌Forbes Videogame Victims,2005年】
・ゲームで視力アップ?!
一方で、ゲームが視力をアップさせるという研究結果もいくつか報告されています。
例えば、アメリカのロチェスター大学の認知科学者Daphne Bavelier氏の調査(※1)では、標的を狙う類のアクションゲームがコントラスト感度(はっきりした輪郭を持たず、しかも濃淡のはっきりしない模様を識別できる能力)をアップさせる効果があったこと、また、この効果は調査終了後2年間持続したことなどが報告されています。
このような調査結果は、弱視の人や、夜間運転中などに見えにくい人にとって大きな希望になるでしょう。日本にも、動体視力などの視力アップを狙ったゲームがあり、その効果が期待されています。
■ゲームと運動
・フィットネス系ゲームがアツい!
視力の心配以外にも、運動不足の心配もあります。ゲームは家の中に閉じこもってじっとしているイメージがあります。運動不足は、体力低下だけでなく、生活習慣病をも引き起こしかねません。
しかし、近年のゲームはそのような不健康なイメージを一掃するものが増えています。その代表格がフィットネス系のゲーム。ダンスやヨガ、ボクシングなど多種多様。
ミシガン州立大学Wei Peng氏の調査では、このようなフィットネス系の家庭用ゲームでは運動不足を解消できないということが明らかにされているのですが、同調査には「軽度から中程度の強度の運動にはなる」ということと「運動習慣のきっかけになる」ということが付け加えられています。
体力の低下や忙しさを理由に運動をしていない中高年の運動の動機付けにゲームが一役買うかもしれません。
・ゲームが介護予防にも繋がるかも?!
総務省の家計調査によると、2018年のスポーツクラブ年間平均使用料は5,169円。健康志向の高まりにより、その額は年々上昇しており、年代別に言うと、60歳代がもっとも多くなっています。
大手フィットネスクラブの月額利用料は1万円前後(回数や時間の制限なし)ですが、料金を支払いながらも、なかなか続かず、コスパが悪いという人も。
年齢が高くなればなるほど体調によっては外へ出たくない日もあるでしょう。その点、自宅でのゲームならいくらかの初期投資は必要なものの、自分のペースで軽く行えます。
働き盛りの世代が、運動不足解消と家族団欒を兼ねて週末に複数人でできるゲームをするのもよいでしょう。また、働き盛りの世代がそろそろ心配になるのは親の介護。そんな親世代も、子や孫と楽しくゲームで身体を動かせば介護予防にも繋がるかもしれません。
たとえば、来月に控えた子どもの日や母の日に、子どもや親にゲームをプレゼントするのはいかがでしょう? ただし、いくら楽しくても休憩時間をしっかりとって目や手を休めましょう!
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