大樹認知症サポートサービス

認知症情報 vol.20 2024.7

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予想されています。認知症は誰もがなり得るものであり、家族や身近な人が認知症になることなども含めて、多くの人にとって身近なものになっています。
認知症の予防に取り組んだり、認知症になった場合に備えるためには、正しい知識と十分な情報が必要になります。大樹生命は、認知症に関する最新の情報をお届けいたします。

新たに公表された認知症患者数の将来推計

超高齢社会と認知症の関係

ご存じのとおり、日本はすでに“超高齢社会”に突入しています。超高齢社会とは、人口に対する65歳以上の方の割合(高齢化率)が21%を超える場合と定義されています。 ※日本の高齢化率:29.1%(2023年推計)
そして、高齢化率の高まりは、高齢者ほど有病率が高い“認知症”の患者数増加につながると考えられています。

国は、2024年5月の「認知症施策推進関係者会議」において、新たな研究結果として、『認知症及び軽度認知障がい(MCI)の有病率調査ならびに将来統計に関する研究』の報告書を公表しましたので、今回は、その内容について確認していきます。

認知症および軽度認知障がい(MCI)に関する将来推計

今回公表された報告書では、前回の厚生労働省報告から約10年ぶりに、認知症の患者数および有病率の将来推計が算出され、また、新たに軽度認知障がい(MCI)の将来推計についてもあわせて公表されています。
その結果によると、2022年の認知症患者数は約443万人、有病率は12.3%と、高齢者の約8人に1人の割合になっています。そこに軽度認知障がいも加えると、患者数合計は1,000万人を超え、高齢者の3~4人に1人の割合となります。
将来推計を見ると、2040年には認知症患者数は約584万人と、2022年から141万人増加、また軽度認知障がいも加えると患者数合計は1,197万人となり、200万人近く増加すると推計されています。

【わが国における認知症および軽度認知障がい(MCI)の患者数と有病率の将来推計】

【わが国における認知症および軽度認知障がい(MCI)の患者数と有病率の将来推計】
CI:信頼区間
  • ・2022年の4地域(久山町、中島町、中山町、海士町)から得られた認知症およびMCI者の性年齢階級別有病率が2025年以降も一定と仮定して推計した。
  • ・2025年以降の性年齢歳階級別人口分布の出典:国立社会保障・人口問題研究所、日本の将来推計人口:性年齢階級別人口分布・出生中位(死亡中位)推計
    https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp

内閣官房 認知症施策推進関係者会議(第2回)資料9『認知症及び軽度認知障がいの有病率並びに将来推計に関する研究報告書』より当社にて作成
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ninchisho_kankeisha/dai2/siryou9.pdf

性別・年齢階級別の認知症有病率

今回の報告書には、性別・年齢階級別の認知症有病率データも掲載されています。

これによると、65~69歳の有病率は1%程度であるものの、80~84歳になり15%を超えるなど、加齢に伴う上昇傾向が認められます。

また、全般的に女性のほうが男性よりも有病率が高く、85~89歳において男性25.2%に対して女性37.2%、90歳以上においては、男性36.6%に対して女性55.1%と、高年齢ほど男女差が拡大しています。

内閣官房 認知症施策推進関係者会議(第2回)資料9 『認知症及び軽度認知障がいの有病率並びに将来推計に関する研究』より
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ninchisho_kankeisha/dai2/siryou9.pdf

前回報告の将来推計との比較

前回2012年調査による報告では、下表のとおり、2025年の認知症患者数は675万人と推計されていました。

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)

  • (※)久山町研究からモデルを作成すると、年齢、性別、生活習慣病(糖尿病)の有病率が認知症の有病率に影響することがわかった。
    本推計では2060年までに糖尿病有病率が20%増加すると仮定した。

厚生労働省 第222回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1『認知症への対応力強化』より(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001140075.pdf

今回の報告ではそれを下回る471万人、2030年以降についても、同様に前回報告を下回る推計患者数となりました。
要因は明らかではありませんが、喫煙率の全体的な低下、生活習慣病管理の改善、健康に関する情報や教育の普及による健康意識の変化などにより、認知機能低下の進行が抑制され、認知症の有病率が低下した可能性が挙げられています。
今後も、一人ひとりが自分事として認知症とその予防に対する理解を深め、それでも認知症のリスクを回避することはできませんので、経済的な準備など、必要な備えについて考えることが、将来の安心につながるのではないでしょうか。

  • ※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
  • ※当記事の内容は、上記発行年月時点の情報に基づき記載しております。発行後の法令・制度等の改正、医療の状況の変化等は考慮しておりませんのでご注意ください。

掲載記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
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