大樹認知症サポートサービス

認知症情報 vol.19 2024.4

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予想されています。認知症は誰もがなり得るものであり、家族や身近な人が認知症になることなども含めて、多くの人にとって身近なものになっています。
認知症の予防に取り組んだり、認知症になった場合に備えるためには、正しい知識と十分な情報が必要になります。大樹生命は、認知症に関する最新の情報をお届けいたします。

アルツハイマー型認知症の新薬 “レカネマブ”が登場

国内初、認知症の原因物質を標的とした治療薬が承認

世界一の高齢国となった日本。加齢とともに発症リスクが高まる認知症の予防や治療に対する関心が高まっています。

こうした中、日本のエーザイと米国のバイオジェンが共同開発した新しい認知症治療薬レカネマブが日本で承認され、2023年12月より医療機関での使用が開始されました。レカネマブは、認知症の原因とされる物質を脳内から取り除くことで、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせることが期待できる世界初の治療薬として話題になっています。

これまでの認知症治療薬との違い

認知症の原因はさまざまな仮説があり解明されていない部分もありますが、原因のひとつとして、「アミロイドβ(アミロイドベータ)」というタンパク質が脳に蓄積することで、脳の神経細胞が破壊されてしまうことが考えられています。
レカネマブはこのアミロイドβを標的とした、抗体医薬という種類の治療薬です。

アミロイドβは健康な人の脳内にも存在していますが、アミロイドβが集積してかたまりを作ることで神経毒性を持ち、脳神経細胞を破壊していくとされています。レカネマブは、アミロイドβのかたまりに結合して、これを取り除く作用があります。

これまで日本では4種類の認知症治療薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン)が承認されていました。
これらは全て認知機能障がいの症状緩和を狙ったものですが、レカネマブは、神経細胞を壊してしまう原因に直接アプローチする部分が画期的と評価されています。

レカネマブの効果と対象患者

50〜90歳までの早期アルツハイマー病の患者約1,800名を対象にレカネマブの効果を調べた臨床試験(治験)では、レカネマブを投与した患者さんは、プラセボ薬(偽薬)を投与した患者さんに比べて、認知機能や地域社会生活などの評価指標の悪化を約27%抑制する効果(進行を7.5ヶ月遅らせることに相当)が確認されました。また、脳内のアミロイドβの蓄積量も有意に減少していました。

一方、脳浮腫や脳胞液の貯留、微小な出血などの副作用も報告されており、頻度は低いものの重篤なケースも見られているため、治療においてはMRI検査を定期的に行って管理することが定められています。

アミロイドβによって一度破壊されてしまった脳神経細胞は元に戻らないため、治療効果を得るには神経細胞が破壊される前の投与が必要です。そこで、レカネマブの使用対象となるのは、軽度認知障がい(MCI)あるいは軽度認知症と診断された方となっています。

対象となるかどうかの判定として、アミロイドβが実際に蓄積されているかどうかを確認するために、アミロイドPETまたは脳脊髄液(CSF)検査を行うことが要件となっています。

治療にかかる費用

レカネマブの用量は10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注することとなっています。
体重50kgの患者さんの場合、1ヶ月の薬価はおよそ22〜23万円、年間では約298万円となります。
公的保険の対象になっているため、患者さんの負担上限は月額4〜9万円程度に抑えられますが、年間数十万程度の費用負担が想定されます。

新薬レカネマブの登場は認知症治療の新たな道を開く可能性がありますが、残念ながら認知症の進行を完全に止めたり、進行した認知症の症状を元に戻したりするまでの効果はありません。今後さらなる治療法の開発・進化が望まれます。

  • ※当記事は、株式会社うぇるなす「健康経営ニュース(2024年1月)」より転載して作成しております。
  • ※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
  • ※当記事の内容は、上記発行年月時点の情報に基づき記載しております。発行後の法令・制度等の改正、医療の状況の変化等は考慮しておりませんのでご注意ください。

掲載記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
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