大樹認知症サポートサービス

認知症情報 vol.27 2026.7

2030年には65歳以上の約3人に1人が認知症または軽度認知障がいになると推計されています。認知症は誰もがなり得るものであり、ご家族が認知症になることなども含めて、多くの人にとって身近なものになっています。
認知症の予防に取り組んだり、認知症になった場合に備えるためには、正しい知識と十分な情報が必要になります。大樹生命は、認知症に関する最新の情報をお届けいたします。

高血圧を制する者は、認知症を制す。

これまで、高血圧の放置による悪影響といえば、「脳卒中」や「心筋梗塞」といった、ある日突然命を脅かすような深刻な病だったかもしれません。
しかし、近年の目覚ましい研究の進歩により、アルツハイマー型認知症を含む認知症の発症や進行に、「血管の健康状態」、とりわけ「高血圧」が深く関わっていることが、次々と科学的に証明されてきました。

「人は血管とともに老いる」脳の病気としての高血圧

私たちの体には、くまなく血管が張り巡らされています。そのすべてをつなぎ合わせると、約10万キロメートル、地球を2周半もする長さになると言われています。そして、その血管ネットワークの中で、最も繊細で、最も大量の血液を必要とする臓器こそが「脳」なのです。脳は体重のわずか2.5%ほどの重さしかありませんが、心臓が送り出す血液の実に20%をも消費する、いわば大食漢の臓器です。このため、血管の健康が脳の健康に直結することになってしまいます。

認知症の二大巨頭は「アルツハイマー型認知症」と「血管性認知症」です。

・血管性認知症

こちらは文字通り、血管の病気が原因です。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病によって動脈硬化が進行し、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)することで、神経細胞にダメージが及び、認知機能が低下します。脳に無数の小さな梗塞ができてまだら状に機能が落ちる「まだら認知症」などもこの一種です。
原因は脳卒中と同じく、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などです。

・アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳に「アミロイドβ」という特殊なタンパク質のゴミが溜まることで神経細胞が死んでいく「神経変性疾患」とされ、長らく血管の問題とは切り離して考えられてきました。しかし、アルツハイマー型認知症患者の4割の方に脳血管の異常がみられたという報告もあります。つまり、アルツハイマー型認知症と血管の問題は無関係ではなさそうだ…といえるでしょう。

生活習慣病の管理が認知機能の低下につながる

この関係性を裏付ける研究結果があります。
フランスのリール大学で行われた、アルツハイマー型認知症患者を対象とした研究では、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を持つアルツハイマー型認知症患者を3つのグループに分け、2年半の認知機能の推移を比較しました。

  • ①生活習慣病をまったく管理しなかった人々
  • ②ある程度管理した人々
  • ③すべて管理した人々

その結果、③のすべて管理した人々は、認知機能の低下がほぼ横ばいで、自立した生活を維持できていました。それに対し、①のまったく管理しなかった人々は、認知機能が急激に低下し、2年半で人の助けがなければ生活できないレベルにまで悪化してしまいました。
つまり、「難病」と考えられていたアルツハイマー型認知症の進行も、高血圧をはじめとする生活習慣病の管理によって大きく左右される可能性があるということです。高血圧を適切に管理し、血管の健康を保つことは、認知症予防や進行抑制につながる「究極の脳トレ」ともいえる実践的なアプローチとして注目されています。

◆最大の敵 「塩分」 のコントロール

日本人が高血圧になりやすい最大の原因は、世界的に見ても突出して多い「食塩の摂取量」です。塩分の摂りすぎは、血液の浸透圧を高め、体内に水分を溜め込み、血液量を増やして血圧を上昇させます。

目標は1日6g未満

日本高血圧学会では、1日の食塩摂取量を6g未満にすることを推奨しています。しかし、日本人の平均摂取量は約10g(2022年)。このギャップは非常に大きいのが現実です。

「減塩」から「適塩(かるしお)へ」 

「減塩はおいしくない」というイメージが、実践を阻む大きな壁です。
しかし、国立循環器病研究センターが提唱する「かるしお」の考え方は、「減らす」のではなく「工夫する」ことにあります。出汁の旨味、香辛料の香り、香味野菜の風味、お酢や柑橘類の酸味などを上手に使うことで、麺類のスープは飲まない、漬物や加工食品を控える。
そうした小さな工夫の積み重ねが、あたなの血管を守ることにつながります。

◆血管を鍛える「運動」の習慣

適度な運動は、血管そのものをしなやかにし、血圧を下げる効果があります。
特にウォーキングなどの有酸素運動は、血行を促進し、心肺機能を高め、体重管理にも役立ちます。
さらに一歩進んで、歩きながら計算をしたり、しりとりをしたりする「デュアルタスク(二重の課題)」を取り入れれば、身体機能と脳機能の両方に良い刺激を与えることができ、認知症予防効果はさらに高まると考えられます。

◆禁煙ー 血管を傷つける最悪の習慣からの決別

喫煙は、血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を促進する最悪の生活習慣です。
血圧を直接上昇させるだけでなく、血管の弾力性を失わせ、血液をドロドロにします。高血圧と喫煙という二つのリスクが重なると、循環器病のリスクは爆発的に高まります。
イギリスが国を挙げて認知症を減少させることに成功した背景には、タバコの価格を1箱1000円以上に引き上げるなど、徹底した禁煙政策がありました。禁煙は、心臓と脳を守るために重要であるといえるでしょう。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来などで専門家の助けを借りることもよいでしょう。

結論:あなたの血圧計の数値は、未来の脳の健康を示す“羅針盤”

これまで、血圧の数値を気にすることは、主に心臓や脳卒中への不安からだったかもしれません。しかし、あなたの家の血圧計が示す数値は、10年後、20年後のあなたの「脳の明晰さ」を占う、未来への羅針盤といえるでしょう。
血圧をコントロールすることは、単に病気を予防するだけではありません。それは、あなたの人生の質そのものを守り、輝かしい未来をその手で創り上げていく、力強い第一歩となることでしょう。

<参考文献>

  • ※当記事は、『認知症予防習慣』コラムを引用して作成したものです。【2026 MCBI,Inc.】
  • ※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
  • ※当記事の内容は、上記発行年月時点の情報に基づき記載しております。発行後の法令・制度等の改正、医療の状況の変化等は考慮しておりませんのでご注意ください。

掲載記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
また、診断や治療を必要とされる方は、適切な医療機関を受診の上、医師の指示に従ってください。
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