大樹認知症サポートサービス

認知症情報 vol.13 2022.10

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予想されています。認知症は誰もがなり得るものであり、家族や身近な人が認知症になることなども含めて、多くの人にとって身近なものになっています。
認知症の予防に取り組んだり、認知症になった場合に備えるためには、正しい知識と十分な情報が必要になります。大樹生命は、認知症に関する最新の情報をお届けいたします。

親を認知症にさせないために ~ 食事に関するアドバイス②

食事に関するアドバイス② 『高血糖による血管損傷を防ぐ』

昔から「老化は血管から始まる」と言われているように、血管の状態で体内年齢が分かります。あたまやからだの中の一つひとつの細胞に酸素と栄養を届ける血管が正常に機能していれば、あたまやからだは健やかな状態を保ちます。しかし、血管が弱ってしまうと、細胞に酸素や栄養が行きわたらず、細胞の機能が低下して、それらの細胞が構成する臓器の働きにも悪い影響がでてきます。
血管の状態を悪くする原因にはさまざまありますが、今回は、そのひとつである高血糖について解説します。

《食事に関するアドバイス》

  • (1)食事をとらない時間をしっかり確保する(脳の炎症抑制)
  • (2)小腹がすいたら、甘いものでなくタンパク質を(高血糖による血管損傷を防ぐ)
  • (3)精製された白い主食は卒業する(糖化による老化促進を阻止)
小腹がすいたら、甘いものでなくタンパク質を

お菓子や甘い飲み物には、糖質が多く含まれています。これら糖質がからだに与える影響にはどのようなものがあるのでしょうか。多くの糖質が血液中に漂う「高血糖」について説明します。

●高血糖の状態が血管を傷つける

糖質は腸で分解されることでブドウ糖になります。ブドウ糖は腸から血液中に吸収されて全身に運ばれ、体中の一つひとつの細胞に取り込まれて、エネルギーとして使われます。細胞に取り込まれなかった余ったブドウ糖は、肝臓や筋肉ではグリコーゲンとして、脂肪細胞では脂肪として各所で蓄えられ、徐々に血糖値が下がっていきます。しかしそれでもブドウ糖が余っていると、ブドウ糖は血液中を漂うことになります。この状態が「高血糖」です。

高血糖の状態では、血液の中にブドウ糖があふれています。ブドウ糖はやがて、血管の内壁に付着していきます。すると血管の細胞内で活性酸素が生じ、細胞を傷つけはじめます。活性酸素は強力な酸化作用をもつため、増えてくると正常な細胞まで傷つけしまうのです。これが血管が傷つけられる原因の一つです。
また活性酸素によって血管の内壁が傷つけられると、それを修復するために血小板が集まってきます。寄り集まった血小板は役目を終えると流れていきますが、そのまま残ってしまう場合、それらは血栓となり、血流が阻害されてしまいます。このようなかたちで血管がむしばまれていくのが高血糖の状態です

●血糖値のコントロールを

私たちのからだは、高血糖の状態にならないよう、インスリンというホルモンの分泌によって血糖値を一定に保つ仕組みが備わっています。インスリンはすい臓から分泌され、ブドウ糖を細胞に取り込む働きをします。インスリンが働くことでブドウ糖が細胞に取り込まれるようになり、エネルギーとして使われます。血液中のブドウ糖を細胞に渡すことができるので、ブドウ糖が減り、血糖値が下がっていきます。

糖質を摂取するとインスリンが分泌されますが、極端に多くの糖質を摂取すると、インスリンもそれに合わせて分泌量が増えます。
例えば、お腹がすいて胃が空っぽのところに、糖質の多いものや甘いものを食べると、急激に血糖値が上がるので、インスリンが大量に分泌され、ブドウ糖の処理スピードが速くなります。このような無理な働かせ方をしていると、やがてすい臓が疲弊し、インスリンの分泌量が少なくなったり、インスリンが十分に働かなくなったりします。インスリンが働かなくなると、ブドウ糖が血液中にあふれて高血糖の状態になり、活性酸素によって血管が傷つけられることになります。

●血糖値を急激に上げない、高血糖の状態をつくらない習慣

血糖値の急激な上昇を避け、血管の損傷をしないように、食事の時に気を付けられることがあります。
まずよく噛んでゆっくり時間をかけて食べること、続いて最初に野菜から食べること。このちょっとした心がけによって、ブドウ糖の吸収がゆるやかになります。食物繊維の多い野菜は消化に時間がかかるうえ、胃腸をゆっくり移動する性質があるので、先に食物繊維を胃に入れておくことで、あとから入ってきた糖質は、ブドウ糖として吸収されるまでに時間がかかります。

口寂しいからと、飴や甘いものをよく口に入れていたり、お腹がすいてきたおやつの頃に、甘いお饅頭や、お米から作られているおせんべいを食べる習慣はありませんか。
これらのことも、高血糖や急激な血糖値の変動になります。口寂しいときや間食には、糖質の少ないものを心がけると良いでしょう。例えば、ナッツ、ゆで卵、あたりめ、茎ワカメ、おしゃぶり昆布などが望ましいおやつです。最近では低糖質のおやつも手に入りますので、時には甘く感じるものを上手にとり入れて継続できると良いでしょう。

●血糖値を急激に上げないための心がけ

脳は大変繊細な臓器です。あたまの血管の状態が悪くなることで、酸素や栄養の供給が停滞すると、すぐに弱ってしまいます。すると、脳細胞に異変が生じて、認知機能の低下につながります。脳が正常に機能できるように配慮することが大切で、認知症の予防につながります。

  • ■よく噛んでゆっくり時間をかけて食べる
  • ■野菜から食べる
  • ■小腹がすいたら糖質の少ない食品を食べる

私たちにとって食事は1日の中でも楽しみな時間ではないでしょうか。その楽しみを奪うように、親世代へあれこれ制限をかけてしまうと、ストレスに感じられてしまうかもしれません。そういったストレスは脳にとって逆効果になってしまうので、無理のない範囲で、脳の健康のためならばと前向きに取り組める程度で提案してみるのが良いかもしれません。
例えば、手土産には甘いお菓子でなく、美味しいお肉やお魚を用意して、高血糖の状態をつくらないことが脳の健康につながると話すことで、なるほどと聞き入れてくれるかもしれません。高血糖によるリスクをなくすよう、親の認知症予防のために提案してみてはいかがでしょうか。
なお、疾患によっては蛋白質を多く摂ることで体調が悪化する場合があります。また、高血糖予防のために良いと考えられる食品であっても、他のことで悪影響をもたらす場合があります。食習慣を変える場合はまず、医師へ相談されることをお勧めします。

<参考文献>

  • ■e-ヘルスネット(厚生労働省)
  • ■藤田絋一郎「親をボケさせないために、今できる方法」
  • ※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
  • ※当記事の内容は、上記発行年月時点の情報に基づき記載しております。発行後の法令・制度等の改正、医療の状況の変化等は考慮しておりませんのでご注意ください。
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