大樹認知症サポートサービス

認知症情報 vol.16 2023.7

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予想されています。認知症は誰もがなり得るものであり、家族や身近な人が認知症になることなども含めて、多くの人にとって身近なものになっています。
認知症の予防に取り組んだり、認知症になった場合に備えるためには、正しい知識と十分な情報が必要になります。大樹生命は、認知症に関する最新の情報をお届けいたします。

“脳PET検査”でアルツハイマー病を早期発見!

人は誕生してから、成長、成熟、退行の道をたどります。この過程を加齢といいます。この加齢にともなう、特に成熟期以降の身体の変化を、老化と呼んでいます。
知能の老化が始まれば、誰でも記憶力や判断力が低下しますし、物忘れが多くなります。物忘れは良性の健忘で認知症ではありません。最近では、「物忘れがあるが認知機能は正常であり、日常生活は自立していて認知症と診断できない状態」を、軽度認知障がい(MCI)として捉えるようになりました。

認知症の一歩手前の状態=軽度認知障がい(MCI)

MCIは、正常な状態と認知症の中間であり、記憶力や注意力などの認知機能に低下がみられるものの、日常生活に支障をきたすほどではない状態を指します。65歳以上でMCIの人の割合は15~25%と推定されており(※1)、MCIであることが気づかれないままになっている人も少なくないと考えられます。

  • ※1:日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」

早期に発見し適切な対策を講じれば、MCIを改善したり、認知症の発症を予防できる可能性があります。となれば、やはりMCIの状態で変化に気づき、何かしらの働きかけ(早期介入)を行うことが何よりです。
では、どうしたらMCIに早期の段階で気づくことが出来るのでしょうか?
今回はMCIを早期発見するために知っておきたいことや進行を防ぐための方法、早期治療のための“脳PET検査”などについて解説します。

早期発見のカギは“脳PET検査”

“脳PET検査”とは、がんの早期発見で用いられる 「PET検査」 を利用して脳の画像を撮影し、糖代謝(※2)の状況により脳の活動の状況を画像化し確認する検査です。

  • ※2:脳の働きのために糖をエネルギーとして消費すること

糖代謝が落ちている場合、超早期のMCIの診断に有効で、定期的に検査することでその推移を時系列で確認できるので、少しの変化も見逃しません。

実際に私の診察を受けた患者さんの中には“脳PET検査”を受けたことで「人生が変わった」人たちがいます。
例えば、「脳MRI検査」を受けただけの人の場合、MRI検査では、海馬(※3)体積を評価しているので、若年性アルツハイマー病のように連合野(※4)に異常を生じるものをチェックすることはできません。

糖尿病でアミロイドβがたまりやすくなり、アルツハイマー型認知症に
  • ※3:記憶を司る脳の器官
  • ※4:脳のうち「運動」「感覚」を除いた様々な機能や情報を処理する部位

そこで、“脳PET検査”を受けることによって、脳全体の代謝低下の部位を評価できるので、すべての認知症がPETでは診断可能となります。

◆ “脳PET検査”は次のような方にお勧めです。

  • ■ 最近、物忘れが増えてきた方
  • ■ 肥満や生活習慣病の恐れがある方
  • ■ 様子が少し変わってきたような気がするご両親やご家族
“脳PET検査”の他にもある、軽度認知症障がい(MCI)を見つける検査

● MCIスクリーニング検査

アルツハイマー病の前段階である軽度認知障がいのリスクを判定する血液検査です。アルツハイマー病はアミロイドベータペプチドという老廃物が脳に蓄積し、神経細胞を破壊することで発症します。この検査ではアミロイドベータペプチドの排除や毒性を弱める機能を持つ血液中の3つのタンパク質を調べることで、MCIのリスクを判定します。

● ホモシステイン酸の測定

ホモシステイン酸とは認知機能と相関関係があるとされているマーカーで、血液検査により測定します。ホモシステイン酸はホモシステインが酸化したもので、多量に体内にある場合に脳神経に影響を及ぼし神経毒となります。このホモシステイン酸の数値を定期的に測定することにより、その数値の動きを把握し認知機能の障がいを超早期に発見できる可能性があります。

MCIは正常な状態に戻る可能性がある

もしMCIの診断が出たとしても、落ち込むことはありません。
MCIは必ず認知症に進行するというわけではなく、正常な状態に戻る可能性もあります。健常状態に戻る率は14~44%(※5)とも言われています。

  • ※5:J. J. Manly, M. X. Tang, N. Schupf, Y. Stern, J. P. Vonsattel and R. Mayeux, “Frequency and Course of Mild Cognitive Impairment in a Multiethnic Community,” Ann Neurol 63, 2008, 494-506. https://doi.org/10.1002/ana.21326

MCIを改善するための対策には、健康的な食事や運動、認知機能トレーニングなどがあります。また最近はH2(水素)サプリメントなどを取り入れる人もいます。
日常生活では、日記をつける、積極的に運動教室や文化セミナーなど地域で開催されているサークル活動などに参加する、人とコミュニケーションを図るなど、意識して認知機能を使い、機能の改善や維持に努めましょう。

MCIは正常な状態に戻る可能性がある

高血圧や糖尿病、脂質異常症などの病気があると、MCIから認知症へ進行しやすくなると考えられているため、こうした持病がある場合はその治療もしっかりと継続することが大切です。

  • ※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
  • ※当記事の内容は、上記発行年月時点の情報に基づき記載しております。発行後の法令・制度等の改正、医療の状況の変化等は考慮しておりませんのでご注意ください。

掲載記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
また、診断や治療を必要とされる方は、適切な医療機関を受診の上、医師の指示に従ってください。
本情報に関して発生した損害等について、弊社は一切の責任を負いかねますことをご了承ください。

記事の著作者/メディカルリサーチ株式会社
監修/医師 佐藤俊彦先生

◼️宇都宮セントラルクリニック(UCC)理事
◼️セントラルメディカルクラブ(CMC)顧問医
◼️医療法人社団NIDC セントラルクリニック世田谷 理事長
◼️メディカルリサーチ株式会社 顧問医