大樹認知症サポートサービス

認知症について

認知症とは

WHO(世界保健機構)は、認知症を「いったん発達した知能が、さまざまな原因で持続的に低下した状態。通常、慢性あるいは進行性の脳の疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、概念、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能の障がいからなる症候群」と定義しています。
私たちの活動のすべてをコントロールする脳の働きが悪くなったり、細胞が死んだりすることで障がいが起こり、生活するうえでさまざまな支障が出る状態をさします。

「認知症」と「物忘れ」違いとは?

「最近、忘れ物が多いなあ」
「財布、どこに置いたのかしら?」
「人の名前が出てこなくて…」

こうした「物忘れ」で「もしかしたら認知症かも」と心配している方もいるかもしれません。
確かに物忘れは記憶の障がいです。
でも、年を取れば誰でも物忘れが多くなるのも事実です。
しかし、これらの病気ではない物忘れ=加齢による物忘れは「良性の健忘」のため、心配するには及びません。

「ボケ」は、こうした加齢による精神変化として使われる言葉です。
一方、認知症は日常生活に支障をきたす疾患です。
加齢による物忘れは、「体験の一部を忘れている」だけで、きっかけがあれば思い出せますが、認知症は「体験のすべてを忘れている」のが特徴で、忘れていることすらわからない場合があります。
つまり完全に記憶が抜け落ちているのが認知症による物忘れです。

3大認知症の特徴

日本では、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症が3大認知症といわれており、もっとも多いのがアルツハイマー型認知症です。
また、なかには2つ以上の認知症を合併してしまう混合型認知症を発症するケースもあり、いちばん頻度の多いのがアルツハイマー型認知症+血管性認知症です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病が原因で起こります。
アルツハイマー病は、神経細胞の集まりである大脳皮質に変性が起こり、神経細胞が死滅、減少して、脳が委縮していく疾患です。
脳が委縮することで、その箇所の血流が低下し、さらに神経細胞間で情報を伝えていた神経伝達物質も失われてしまい、障がいされた部位が担当していた認知機能が低下していくのです。
発症と進行は比較的穏やかですが、放置すれば確実に悪化し、最終的には日常生活における基本的な作業をおこなう能力さえも失われます。

初期には、軽度の記憶障がいが現れ、時には他の思考に関する問題、例えば適切な言葉が出てこない、判断力が低下する、といったことが目立ってくる場合もあります。
病気が進行するにつれて、記憶障がいはさらに悪化し、他の認知能力の変化がはっきりとしてきます。
また、徘徊、幻覚、妄想などの行動・心理症状も多くみられるようになります。
末期になると、認知機能は著しく障がいされ、会話は成り立たず、家族が誰であるかもわからなくなります。
身体機能の低下も顕著となり、誤嚥性肺炎や転倒による骨折などを起こしやすくなり、1日の大半をベッドの上で過ごすか、寝たきりになる場合があります。

血管性認知症

血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障がいを起こした後、その後遺症として発症します。
割合としては、男性に多い認知症ですが、女性は閉経後に血清コレステロール濃度が急激に上昇することから、脳血管系疾患をもたらし、認知症の原因となることもあります。
原因としてもっとも多いのは、小さい梗塞が多発した多発性脳梗塞で、そのほとんどが多発性ラクナ梗塞といわれる疾患です。
この多発性ラクナ梗塞は、無症状であることも多く、本人が発症したことに気づかないことも珍しくありません。
しかし、10年以上経過すると、高い確率で認知症を発症することが知られています。
血管性認知症の特徴としては、「まだら認知症」になりやすいことがあげられます。
まだら認知症というのは、同じことでも「できるとき」と「できないとき」が起こる症状ですが、これは脳内の障がいされた場所によって血流の悪くなる箇所が異なり、さらにそのときによって状態が変わるために生じると考えられます。
1日の中でも、例えば意欲がなくボーッとしていて、何もできないときと、はっきりしていて、できないと思っていたことができる場合があります。
また、血管性認知症では、感情のコントロールができず、すぐに泣いたり怒ったりする、あるいはうつ傾向になって、能面のような表情になることもあります。
さらに、洋服の前後や上下左右の認識ができない、なかなか言葉が出てこなくなるといった症状もあらわれます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は女性に比べて男性の発症率が高く、女性の2倍といわれています。
レビー小体というのは、神経細胞にできる特殊なタンパク質で、このタンパク質の塊が脳の大脳皮質や脳幹に出現して起こるのがレビー小体型認知症です。
記憶障がいや、理解力、判断力の低下などアルツハイマー型に似ている症状があらわれますが、初期から中期にかけては、記憶障がいはあまり目立ちません。
むしろ視覚的に物事をとらえることが難しくなり、図形描写の障がいが多くみられます。
さらに、実際には存在していない子どもや小動物、虫などが見える幻視があらわれることもしばしばで、特に暗くなると症状が出やすくなります。
これは視覚をつかさどっている後頭葉と呼ばれる部分に病変が出るため、異常が起こるものです。
手が震える、動作が緩慢になる、筋肉がこわばる、体のバランスをとることが難しくなる、などのパーキンソン病と似た症状があらわれることも大きな特徴です。
また、レビー小体型は、頭がはっきりした調子のいいときと、ボーッとしている状態を繰り返しながら進行するため、周りの人は「本当はちゃんとできるのに、怠惰なだけではないか」と思ったり、その結果、無理をさせてしまったりすることがあります。
他にも就寝中に怒鳴ったり、暴れたりするレム睡眠行動障がい、うつ症状、自律神経症状、失神など、特徴的なさまざまな症状が出てきます。

その他の認知症

認知症は原因となる疾患によって、さまざまな種類があり、大きくは2つの群に分類されます。
ひとつは脳の神経細胞が異常に変化、または減少することによって発症する「変性性認知症(一次性認知症)」で、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、パーキンソン病が引き起こす認知症、前頭側頭型認知症などがこれに当たります。

パーキンソン病が引き起こす認知症

パーキンソン病は、神経伝達物質であるドーパミンが異常に減少することで起こる病気です。
初期には認知症は見られませんが、後期になると認知症を発症することが少なくありません。
また、パーキンソン病では、レビー小体が脳幹に出てくることも知られています。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、大脳の前にある前頭葉と横にある側頭葉が、萎縮することで起こります。
前頭葉の働きに障がいが発生すると、問題を解く、計画を立てて行動する、といった能力を失います。
一方、側頭葉の働きに異常が生じると、音や形の記憶を障がいする傾向や、言葉の記憶や言語の理解能力を障がいすることがあります。
しかし、初期では物忘れなどの記憶障がいはあらわれにくく、この点がアルツハイマー型との大きな違いです。

一方、何らかの疾患や外傷の影響を受けて発症する認知症を「二次性認知症(続発性認知症)」といい、血管性認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病による認知症、正常圧水頭症による認知症、慢性硬膜下血腫による認知症などが、これに分類されます。

クロイツフェルト・ヤコブ病による認知症

クロイツフェルト・ヤコブ病は、脳に感染性を有する異常プリオン蛋白が蓄積して、脳神経細胞を破壊する病気です。
発症すると、行動異常、性格変化、認知症、視覚異常、歩行障がいなどの症状が出て、数か月以内に認知症が急速に進行し、しばしばミオクローヌスと呼ばれる不随意運動(自分の意志とは関係なくあらわれる異常運動)が認められます。

正常圧水頭症、および慢性硬膜下血腫による認知症

正常圧水頭症は、脳脊髄液(髄液)と呼ばれる液体が、脳の中心にある脳室という場所に溜まり、周りの脳を圧迫することにより、認知機能の低下、歩行障がい、尿失禁などの症状があらわれる病気です。
特に歩行障がいが重要な症状で、最初にあらわれることが多く、認知症があらわれる他の疾患と区別するポイントになります。
一方、慢性硬膜下血腫は、軽い頭部外傷(打撲)がきっかけで、頭蓋骨の下にある、脳を包んでいる硬膜とくも膜の間に血液が少しずつ溜まり、血腫となって脳を圧迫する病気です。
圧迫症状として、片麻痺(半身の麻痺)、言語障がいなどの初発症状が出ることもあります。
血腫が大きくなるにつれて、認知機能の低下、上体の傾斜、歩行障がいといった症状があらわれます。

監修/佐藤俊彦

◼️宇都宮セントラルクリニック(UCC)理事
◼️セントラルメディカルクラブ(CMC)顧問医
◼️医療法人社団NIDC セントラルクリニック世田谷 理事長
◼️メディカルリサーチ株式会社 顧問医