大樹認知症サポートサービス

認知症の予防・早期発見・治療

認知症医療で後悔しないために

認知症医療で後悔しないためには、まず予防、早期発見、正しい早期治療の3つを理解しておくことが大切です。

早期発見

特に大事なのは、早期発見です。症状があらわれた段階では、脳はすでに激しく損傷していますから、手遅れにならないためには「認知症予備軍」といわれるMCIという段階での発見が重要です。
MCIとは、Mild Cognitive Impairment =軽度認知障がいのことで、まだ認知症とは呼べない「健常と認知症の中間」にあたる「グレーゾーン」の段階をいいます。
記憶、決定、理由付け、実行などの認知機能のうち、ひとつの機能に問題が生じてはいるものの、日常生活にはまだ支障がない状態です。
一般に、MCIの定義は、次の5項目とされています。

MCIの定義5項目

  • 1.本人または家族(介護者)による物忘れの訴えがある。
  • 2.客観的に記憶障がいがある。(新しいことを覚えられない、記憶を維持できない、思い出せない)
  • 3.日常生活は基本的にできる。
  • 4.全般的な認知機能は保たれている。
  • 5.認知症ではない。

社会保障審議会 介護給付費分会 第115回(H25.11.19)参考資料1」に基づき当社にて作成

しかし、認知症を発症する前に、このMCIを自覚して検診を受ける人は、残念ながら少ないのが現状です。
MCIは日常生活や社会活動に影響しないため、多くの場合、見落とされがちです。
MCIのうちに気づいて対応することが、認知症を予防できるかできないかの大きな分かれ道になることを、どうか肝に銘じておいてください。
今は、自分でMCI状態を判別できるMCI早期発見のツールもありますから、これらを活用して定期的にチェックすることをおすすめします。
そして、少しでも評価に変化があらわれたなら、すみやかに脳PET検査を受けましょう。
なぜなら脳PET検査は、グレーゾーンであるMCIの発見に極めて有効だからです。

アルツハイマー型認知症を判断可能な時期

認知症診断は「長谷川式認知症スケール」、「MRI検査」、「PET検査」の3つがあります。
それぞれに長所、短所がありますが、こと認知症の早期発見ではPET検査が圧倒的な威力を発揮します。
また、MCI(軽度認知障がい)や、アルツハイマー病の発症リスクを調べる血液検査もあります。

長谷川式認知症スケール
認知症検査で広く用いられているもので、

  • 自己の見当識(年齢を問う)
  • 時間に関する見当識(月、日、曜日、年)
  • 場所に関する見当識(ここはどこか)
  • 作業記憶(3単語の直後再生、数字の逆唱)
  • 計算
  • 近時記(3単語の遅延再生)
  • 非言語性記銘(5品目の視覚的保持・再生)
  • 前頭葉機能

……などを検査します。

MRI検査
大脳の萎縮や血管障がい、梗塞などの有無を診ますが、これは65歳以上のアルツハイマー型認知症に有効で、進行期では大脳の萎縮がみられるようになり、特に記憶に深く関係している海馬と呼ばれる部分は、他の部位と比較して早い時期から萎縮が目立つようになります。

PET検査
FDG-PET検査は糖代謝を診るものです。脳は糖をエネルギー源としていますから、その糖代謝が落ちているところ(=脳神経細胞が死んでいる、または機能が低下している)を発見することで、認知症の芽があると診断できます。
また、レビー小体病が疑われるときは、FDG-PET検査とあわせてFMT-PET検査を行います。
このFMT-PET検査は、パーキンソン病および類似疾患における早期診断や進行度の評価ができる脳画像検査です。

MCIスクリーニング検査
MCIスクリーニング検査は、アルツハイマー病の前段階であるMCI(軽度認知障がい)のリスクをはかる血液検査です。
この検査では、血液中の3つのタンパク質を調べることで、MCIのリスクを判定します。

APOE遺伝子検査
APOE遺伝子検査は、アルツハイマー病の発症リスクを調べるものであり、将来の発症の有無を判定するものではありませんが、リスクを知り、予防につなげるための検査です。

早期治療

現在の認知症の治療は、投薬が中心となります。
実はこの薬物治療は、MCIの人にはとても有効な方法です。
認知症の薬は進行度が軽い人ほど効果を発揮し、症状が重くなってしまった人にはあまり効果がありません。
薬が効かないのは、診断が遅いからです。

MRI検査でアルツハイマー型認知症と診断された時点で、脳神経細胞は激減し、糖代謝は落ち、血流が低下している状態です。
つまり、手遅れになってから薬を飲み始めるというわけです。
それではどう考えても、効くわけがありません。
一番重要なことは、脳神経細胞がまだたくさん残っている段階で、早くPET検査で診断をしてもらい、投薬を開始することなのです。
MCIの人に治療薬を処方すれば、進行を抑えることができます。
しかし、認知症は薬では治りません。

それは、1つに今の認知症治療法がすべて対症療法でしかないからです。
正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など、手術で治る認知症もありますが、アルツハイマー型認知症など、これまで治らないとされてきた認知症に薬の効果は大きく期待できません。
それは、アルツハイマー型認知症の原因は脳内にアミロイドβが蓄積することで起こるというのが仮説として主流となっていましたが、これについて疑義が生じているためと言えるでしょう。

多くの医師や学者は、これまでこのアミロイド仮説に基づきアミロイドβをターゲットとした多くの治療薬の開発を進めてきました。
しかし、抗アミロイドβ薬で有効なものが未だ出ていないのが現状であり、このことは仮説自体が「絶対ではない」ことを意味し、あるいは、他にも原因がいくつもあったということに他なりません。

認知症治療薬は認知症を根本的に治すものではなく、記憶障がいなどの中核症状を改善し、進行を遅らせるものです。
たしかに早期に薬物投与を始めると、より改善効果が高くなることがわかっています。
しかし、認知症治療薬には重い副作用が出るものもあり、十分な注意が必要です。

日本神経学会では、認知症治療において薬物療法を始める前に、適切なケアやリハビリテーションの検討を推奨しています。
特に高齢者の場合、薬物療法を開始した後は薬による過剰反応や有害な事象(副作用)が生じやすいため、定期的に薬の種類や量、期間などに気をつけなければならないと、注意を促しています。

認知症予防のために

誰もが認知症にはなりたくないと思っています。
しかし、いくら気をつけていても、65歳以上の約4人の1人が認知症およびMCI(軽度認知障がい)になる時代です。

MCIは近頃は大手保険会社でも保険の取り扱いができ、ドラマでも話題になりました。
寿命も延びていますし、病気も薬や治療法が常に進化する中で、認知症だけは全世界においてコントロールできていません。
従って、「絶対に自分だけは大丈夫」などといっている場合ではないのです。認知症予防の実践が必要になってきます。
画像診断を適切な頻度で行うことで、いち早く”認知症の芽”を発見することが重要となります。

認知症予防の実践
≪実践①≫症状が出る前に、40~50歳代から脳の検査をする
MCIは、日常生活に支障がなく、全般的な認知機能も保たれているが、本人または家族から見てもの忘れの訴えがあり、客観的にも記憶障がいがあるといった状態ですが、脳PET検査は、理想的にはこうした症状が出現する前から適切な頻度で行うことが望まれます。
つまり、がん検診と同じように、一定年齢(50歳代くらい)になったら、脳の検査も必要だということです。

≪実践②≫運動で脳の動きを活性化する
近年の研究では、「運動」と「睡眠」が、アルツハイマー病の進行を防いだり、予防につながる、という報告があります。
例えば、アルツハイマー病になると、脳の中央に位置する海馬が、加速度的に縮小していきますが、運動をすることによって、その海馬が大きくなることが確認されています。
ウォーキングや軽いジョギング、サイクリング、エアロバイクなど、30分程度の有酸素運動を週3~4回、できれば毎日行うことが理想的だと言われています。

≪実践③≫質のよい睡眠で脳内老廃物の排出を促す
脳の活動の一つに、老廃物の排出があります。
質のよい睡眠をとらないと、日中の活動で生じた脳の老廃物(アミロイドβなど)が脳の中に溜まりやすくなってしまい、アルツハイマー病の発症を促進したり、より悪化させてしまうことになると考えられています。

≪実践④≫インスリン値を正常に保つ生活を送る
近年注目されているのが、アルツハイマー病と糖尿病の関係です。
ある研究チームの調査によると、糖尿病やその予備軍ともいえる耐糖能異常の人がアルツハイマー病を発症するリスクは、健康な人の4.6倍にものぼるという結果が出ています。

≪実践⑤≫好きなことを楽しく行い脳機能を向上させる
読書や音楽(演奏、歌唱)、手芸、パソコン、家事などの知的活動は、複数の脳の部位を同時に使うことができるため、認知症の予防に繋がるとされています。
特に手指を使う知的活動は脳に良い刺激をもたらし、非常に有効な予防法です。
好きなことを楽しく行うことで、脳の機能の向上につながります。

ホモシステイン酸の抑制が有効

私たちの体内には、身体の酸化を防ぐための酵素SOD(Superoxide Dismutase)が存在していますが、これが年齢とともに不足するとホモシステインの酸化が促進され、ホモシステイン酸が生成しやすくなります。
このホモシステイン酸は神経毒であり、脳にダメージを与え認知症が発病されると言われています。
SODが低下してきた場合、それを補うことは、抗酸化サプリメントでしかできませんので、最も効率の高い水素や高濃度VCが有効です。

監修/佐藤俊彦

◼️宇都宮セントラルクリニック(UCC)理事
◼️セントラルメディカルクラブ(CMC)顧問医
◼️医療法人社団NIDC セントラルクリニック世田谷 理事長
◼️メディカルリサーチ株式会社 顧問医