大樹認知症サポートサービス

認知症情報 vol.11 2022.4

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予想されています。認知症は誰もがなり得るものであり、家族や身近な人が認知症になることなども含めて、多くの人にとって身近なものになっています。
認知症の予防に取り組んだり、認知症になった場合に備えるためには、正しい知識と十分な情報が必要になります。大樹生命は、認知症に関する最新の情報をお届けいたします。

中年期の肥満が認知症のリスクに

認知症リスクを高めるメタボリックシンドローム

●検診で早い時期から対策を

40歳以上の定期健診では、2008年度から腹囲の計測が義務付けられました。これは内臓脂肪の量を測るためで、腹囲が一定の基準値を超えると代謝異常、いわゆるメタボリックシンドロームの可能性が高いと判断するためです。
日本人の死亡原因の上位を占める心血管病が、メタボリックシンドロームの人に多く見られることから、心血管病予防の一環として腹囲計測が始まりました。近年では生活習慣病の低年齢化が進んでいることもあり、早い段階で医師や保健師から指導を入れられる仕組みとなっています。

日本でもだいぶ浸透したメタボリックシンドロームという言葉ですが、最近ではこのメタボリックシンドロームと認知症の関連が示唆されています。

●メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、健診で測定する腹囲だけで決まるものではありません。ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)に加えて、血圧・血糖・脂質の3つのうち、2つ以上が基準値から外れた場合に該当します。

●メタボリックシンドロームの基準

<必須項目>
内臓脂肪蓄積 腹囲 男性85cm以上、女性90cm以上

<2項目以上あてはまる>
血圧 130/85mmHg以上
空腹時血糖 110mg/dl以上
中性脂肪 150mg/dl以上 かつ/または HDLコレステロール 40mg/dl未満

●メタボリックシンドロームと認知症の関係

メタボリックシンドロームになると認知症を発症しやすくなると言われています。
その理由はいくつかありますが、まず最初に挙げられるのは、①脂肪が蓄積する肥満や代謝異常によって、認知機能が低下しやすくなることがあげられます。
そして、②動脈硬化による血圧の上昇がみられると、脳血管障がいを引き起こし、認知症になりやすい状態になります。最後に、③高血糖状態では、インスリンの神経保護作用が低下し、認知症の原因物質であるアミロイドβが分解されにくくなるからです。
メタボリックシンドロームはこれらの要因が複合的にからみあい、結果的に認知症の発症リスクが高くなります。

●中年の腹部肥満と認知症発症率

中年期に肥満の人は認知症のリスクが高くなるという報告が、2020年イギリスの研究者からありました。
50歳以上の参加者6,582人を平均11年間追跡調査したところ、研究開始時にBMIが30以上だった人は、BMIが標準値(18.5~24.9)の人に比べて、認知症発症リスクが31%高いということです。特に腹囲が大きいことを特徴とするタイプの肥満(腹部肥満)が見られる女性では顕著で、そうでない女性と比べると、認知症発症のリスクが39%高まるという結果でした。
腹囲の大きな肥満(腹部肥満)とは、身体の中心に肥満が見られる中心性肥満です。これは、皮下脂肪型と内蔵型に分けられる肥満型のうち、後者の内蔵型肥満にあたります。

体脂肪を減らして、認知症リスクも減らしましょう

生活習慣病につながる腹部肥満やメタボリックシンドロームを改善することで、認知症のリスクも低くなります。中年期に改善できるところから認知症予防に取り組むことで、高齢期に入った時の身体状態に大きな差がでます。

●生活習慣を見直して、できることから少しずつ

メタボリックシンドロームの保健指導の標語 『1に運動 2に食事 しっかり禁煙 最後にクスリ』 にあるように、運動習慣や食習慣の改善が重要な指導内容です。
普段の生活習慣を少し変えてみようかなと意識することで、気持ちが前向きになり、たまには身体を動かしてみようかな、食べるものや飲むものはこれで良いかな、と改善の一歩を踏み出すことができます。日々の取り組みは小さくとも、「塵も積もれば山となる」3日、1週間、3ヶ月・・・と経過するうちに、変化を実感できるようになります。

●ガレート型カテキンが内臓脂肪を減少させる

手軽に見直しができることの一つに、飲み物を変えることがあげられます。日本人に馴染みの深い緑茶には、カテキンが多く含まれていることは有名です。ここ最近、カテキンの中でも脂肪の吸収を抑制する「ガレート型カテキン」が、体脂肪減少に効果的であるとして注目されています。

BMIが22.5~30の20歳~65歳の方に、ガレート型カテキンを含む緑茶飲料を食事とともに12週間摂取した結果、ガレート型カテキンを含まない緑茶飲料を摂取した群に比べて、内臓脂肪と皮下脂肪が減少したという報告があります。
いつもの飲み物から、体脂肪を減らす効果のあるガレート型カテキンを含んだ緑茶に変えてみてはいかがでしょうか。体脂肪を減らすことで、認知症につながる中年期の腹部肥満やメタボリックシンドロームを予防する取り組みを応援します。

<参考文献>

  • ■ez-ヘルスネット(厚生労働省)メタボリックシンドロームの診断基準
  • ■Higher risk of dementia in English older individuals who are overweight or obese Yixuan Ma, Olesya Ajnakina, Andrew Steptoe,Dorina Cadar International Journal of Epidemiology, Volume 49, Issue 4, August 2020, Pages 1353-1365.
  • ■Kobayashi M et al. Green tea beverages enriched with catechins with a galloyl moiety reduce body fat in moderately obese adults: a randomized double-blind placebo-controlled trial. Food Funct. 2016, Jan;7(1):498-507.
  • ※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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