大樹認知症サポートサービス

認知症情報 vol.6 2021.3

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予想されています。認知症は誰もがなり得るものであり、家族や身近な人が認知症になることなども含めて、多くの人にとって身近なものになっています。
認知症の予防に取り組んだり、認知症になった場合に備えるためには、正しい知識と十分な情報が必要になります。大樹生命は、認知症に関する最新の情報をお届けいたします。

認知症の人を“悪質商法”から守る制度

振り込め詐欺をはじめ、高齢者をターゲットにした犯罪は依然後を絶ちませんが、中でも認知症の人を狙った悪質な商法が増えています。悪徳業者の言葉巧みな手口にはまり、よく分からないまま高額取引の契約をさせられたにもかかわらず、契約したこと自体を忘れてしまうなど、深刻なケースも多く見受けられます。
被害に気付きにくい認知症の人がだまされないためには、家族や介護スタッフなどの周囲の人をはじめ、ご近所など地域の見守りも不可欠です。誰もが正しい知識を身に付けて、認知症の人を悪質商法から守りましょう。

巧妙化、多様化する悪質商法

訪問販売や電話勧誘による悪質商法は、近年その手口が巧妙化し多様化しています。認知症の人の場合は被害に遭った意識が薄いことから潜在化する被害も多く、表面化してこない傾向があります。

点検商法
屋根や床下、水道水、布団などの点検と言って家に上がり込み、「工事をしないと危険」「このまま地震が来たら危ない」「近所にも迷惑を掛ける」「健康に悪い」など、事実と異なることを伝えて不安をあおり、高額な商品の販売や工事の契約をさせます。
送りつけ商法
注文していない商品を一方的に送りつけて、商品の返品や購入しない旨の連絡をしない限り、その商品を購入したものとしてその代金を請求する商法です。
SF商法(催眠商法)
閉め切った会場に人を集め、日用品などをただ同然で配って雰囲気を盛り上げた後、巧みな話術で高額な商品を契約させます。
訪問販売
販売業者が消費者の自宅を訪問し、商品やサービスを勧誘・販売する方法。強引な勧誘や長時間に及ぶ勧誘などが問題になっています。
次々販売
一度契約した客に対し異なる複数の商品を次々に契約させるケースや、複数の業者が次々に契約させるケースなどがあります。
資産形成取引
企業の未公開株や、商品先物取引市場における金、大豆、債券などの先物取引に誘い込み、金銭をだまし取ります。他にも現物が存在しない会員権などのサービスを買わせる「現物まがい商法」や、ほとんど利用価値のない土地や山林を将来値上がりすると言って売りつける「原野商法」などがあります。

認知症の人は、その場で的確な判断や対応ができないことが多いため、悪徳業者にだまされやすく、本人が被害を認識していなかったり、おかしいと気付いても事実を隠したりしてしまうことがあります。また、被害が発覚しても、悪徳業者を信頼してしまっている場合は、家族や周囲の人の声に耳を傾けないことが多く、その間にまた同じ被害を繰り返してしまう場合もあります。
そのため、できるだけ被害が発生する前に防止することが大切で、家族やホームヘルパーやケアマネジャーなどの日常的に接する人だけでなく、地域、医療機関などの周囲の人たちが見守っていくことが重要です。

認知症の人を守る制度について

悪質商法にだまされてしまっても、早期に発見することで被害を防ぐことができる可能性があります。認知症の人がいる家族や周囲の人は、普段から「だまされていないか」「被害に遭っていないか」を見守り、なんらかのサインがないかチェックすることが重要です。

<被害に遭っているときのサイン>

  • ・見慣れない人が出入りしている
  • ・知らないうちに家が改修されている
  • ・新しい物や不必要と思われる商品、契約書がある
  • ・電話が切れなくて困っている
【認知症の人を守る制度】

被害を防ぐためには、判断能力が不十分な人を守るための制度を活用することも方法の1つです。

成年後見制度
20歳以上の判断能力が不十分な人を保護するための制度です。家庭裁判所から選任された成年後見人(配偶者や親族、法律の専門家など)が、悪質商法など本人に不利益な契約を後から取り消したりすることができます。1人暮らしで親族のいない認知症の人でも、申し立てを行えば弁護士など、裁判所から一番ふさわしいと判断された成年後見人が付いてくれます。
日常生活
自立支援事業
各都道府県、市区町村の社会福祉協議会が窓口となり、福祉サービスの利用や日常的な金銭管理の支援をしてくれる制度です。生活支援員による定期的な訪問サービスがあります。
クーリング・オフ
制度
特定商取引法に基づく制度で、契約の申込日または締結後一定期間内は、消費者が無条件で申込みの撤回、または解除を行うことができます。(ただし、通信販売に関してはクーリング・オフ制度が適用されませんので、注意が必要です。)
消費者契約法に
基づく契約解除
事業者が契約の際、消費者の自由な意思を妨げた場合、消費者は事業者に対してその契約を取り消すことができます。また、消費者の利益を一方的に害する契約条項は一定の場合、無効になります。

認知症の始まりは、本人だけでなく周囲の人もなかなか気付きにくいもの。悪質商法の被害が発覚して、初めて病気に気付くことも多いようです。しかし、どんなにしっかりした人でも、誰もが認知症になる可能性を持っています。みんなでお互いを見守りあい、「気付いてあげる」「気付いてもらう」ことができるお付き合いを、日頃から心掛けたいものです。

<参考資料>
『 地域のみなさんへ“認知症”でも大丈夫 正しく知ってみんなで支えよう』(NPO法人 地域高齢者支援協会・制作/社会保険研究所)ほか

原稿:社会保険研究所©

  • *当記事は、ティーペック株式会社『ティーペック健康ニュース』(2016年10月)を転載して作成しております。
  • ※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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