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健康コラム

Vol.123

最新の知見を盛り込んだ日常活動の指針

2024.09.01

歩数や運動習慣者の割合は伸び悩み

私たちは健康を維持するため、日々どの程度、体を動かせばいいのでしょうか。国はそんな疑問に答えるガイドラインを策定して公開しています。

最初は1989年に「健康づくりのための運動所要量」、次いで1993年に「健康づくりのための運動指針」、さらに2006年には「健康づくりのための運動基準2006」と、それに基づく「健康づくりのための運動指針 2006」を策定してきました。

それから7年後の2013年には国民健康づくり運動の「健康日本21(第二次)」がスタートしたのに合わせて、「健康づくりのための身体活動基準 2013」と、それに基づく「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」を策定。日々の身体活動の目安とされてきました。

それからさらに10年を経て身体活動や運動に関する新たな知見が蓄積されたことを受け、内容を刷新した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が2024年1月に厚生労働省から公開されました。これは本稿の監修をしている中島康晴・九州大学教授が座長を務める専門家会議での検討を経てまとめられたものです。

同ガイドでは、安静な状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全活動を「身体活動」と定義。このうち、日常生活での家事や労働、通勤・通学に伴う活動を「生活活動」、健康・体力の維持・増進を目的として計画的・定期的に実施されるスポーツやフィットネスなどを「運動」、デスクワークに加え、座ったり寝転んだりした状態でテレビやスマートフォンを見ることを「座位行動」と定義(概念図参照)して、推奨事項や注意事項を示しました。また、身体活動の強さを表す単位として「メッツ」を採用。安静座位が1メッツ(座位行動は1.5メッツ以下)、歩行が3メッツに相当します。

身体活動や運動の量が多い人は少ない人と比較して、循環器病、2型糖尿病、がん、ロコモティブシンドローム、うつ病、認知症などの発症・罹患リスクが低いことが報告されています。しかし、「健康づくりのための身体活動基準2013」策定からの10年間で、「日常生活における歩数」や「運動習慣者の割合」などの指標は横ばいから減少傾向で推移しており、今回のガイドは身体活動・運動分野の取り組みをさらに促進する狙いがあります。

推奨される身体活動・運動の内容や量については、次号で詳報します。

松下 幸生

監修/中島 康晴

九州大学整形外科学教室教授。日本整形外科学会理事長。専門は成人股関節外科・小児整形外科・関節リウマチ。

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