Vol.135
健康コラム

口とのどにできるがん 早期発見で機能温存を

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口腔・咽頭・喉頭の3がん 喫煙と大量飲酒は危険因子

食べ物を飲み込んだり、味を感じたり、あるいは言葉を発して会話をしたりと、日常生活で大切な機能を担っている口とのど。しかし、そこにもがんはできます。しかも、早期には目立った症状が現れず、症状が出ても口内炎や風邪などと間違われて、がんと気付くのが遅れがち。早期に発見して早く治療を始めるほど、機能を残せる可能性は高まりますので、日頃から注意してほしいと思います。

口にできるがんは、総称して口腔がんと呼ばれます。さまざまな部位にできる可能性がありますが、最も多いのは舌にできる舌がんで、口腔がんの約40%を占めます。このほか、歯ぐき(歯肉)にできる歯肉がんや、舌の下面にできる口腔底がんは気付きにくいがんの代表です。

のどにできるがんは、咽頭がんと喉頭がんに大別されます。咽頭とは鼻の奥と食道をつなぎ、食べ物や空気の通り道となっている部分。3つに分かれており、がんができた部位によって上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分類されます。

一方の喉頭とは、「のどぼとけ」の部分のことで、気管と咽頭をつなぐ、空気の通り道になっているほか、飲食物が気管に入るのを防ぐ誤嚥防止も大切な役割。そこにできるがんで最も多いのは、発声に必要な声帯の部分にできる声門がんです。

口・のどのがんともに、重大なリスク因子は喫煙と習慣飲酒。たばこの煙に含まれる発がん性物質、アルコールが体内で分解される際に生じる発がん性物質がリスクを高めるのです。また、飲酒や喫煙の習慣がなくても安心できません。近年、ヒトパピローマウイルス(HPV)が関与する中咽頭がんが増えており、のどの症状がなく、頸部の腫れで気付いたという女性や若年のがん患者が見られます。

がんを疑う症状としては、部位によって特徴があります。例えば、舌がんの場合、舌の左右の側面にできやすく、この部分に硬いしこりや腫れがあれば注意が必要。また、歯が内側に傾いたり、義歯の尖ったところが当たるなどして、口内炎のようなただれができることがあり、10日程度で治らず、3週間以上も続く場合はがんの疑いがあり、要注意です。このほか、ザラザラな白いシミが広がってきた場合もがんの可能性があります。

のどのがんの場合は、声のかすれやのどの痛みといった風邪に似た症状のほか、食べ物が飲み込みにくい、飲み込んだとき、つねに違和感があるといった、痛みを感じない症状が出ることもあります。あるいは、風邪や熱などの症状はないのに、頸部に痛みのないウズラ卵大のしこりができるケースもあり、そのしこりが3週間以上も消えない場合などは放置せず、なるべく早く受診することをおすすめします。

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三谷 浩樹

公益財団法人がん研究会有明病院(がん研有明病院、東京都江東区)頭頸科部長。専門は頭頸部がん。