のどのがんは咽頭と喉頭の2か所
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早期なら声の温存を目指す 進行したら切除も検討
のどは、咽頭と喉頭という2つの器官から成り立っています。このうち、咽頭は鼻の奥から食道の入り口までをつないでいる部分で、食べ物と空気の両方の通り道です。一方、喉頭はいわゆる「のどぼとけ」のことで、声帯を有しており、発声の役割を果たしています。
のどにできるがんのうち、咽頭がんは発生する部位によって上・中・下咽頭がんの3つに分かれます。多いのは中・下咽頭がんで、上咽頭がんはごく少数です。中・下咽頭がんは、初期にはほとんど症状が出ません。進行してくると、風邪にしては長い、3週間以上のどの痛みが続いたり、食物を飲み込んだときに限ってのどに違和感が出現したり、あるいは痛みがないのに、ウズラの卵ほどのしこりが首にできて治らず、むしろ大きくなってきたりと、症状はさまざまです。
一方、喉頭がんも発生部位によって3つに分かれ、最も多い声門がんは、早期から声のかすれが出ますので、耳鼻咽喉科の診察で発見されやすいのです。
治療は手術・放射線・抗がん剤の3つの治療法の単独、または複数の組み合わせで行われます。上咽頭がんは手術が難しいのですが、放射線治療と抗がん剤治療を併用した化学放射線治療がとても効果的です。
一方、喉頭がんと中・下咽頭がんの場合は、治る成績を落とさずに、声や飲み込む機能を残すことを目指した治療が理想的ですので、放射線治療単独、または同時に化学療法を併用した治療のほか、がんが限局しているケースでは、口から医療器具を入れてがんを除去する経口的切除術が検討されます。この手術は身体への負担が少なく、発声や食事をする機能への影響も小さい治療法です。最近では、より精密な治療が可能な医療用ロボットも積極的に利用されています。
しかし、とても進行している場合や、既往症により化学放射線治療ができないときは、手術によるがん切除を検討します。下咽頭と喉頭の進行がんでは、喉頭(声帯)も含めての切除となり発声機能を失うことになるので、新しい空気の通り道を作成します(永久気管孔と呼びます)。さらに大きな切除を要する場合は小腸の一部を採取して移植し、食事の通り道の再建も行いますので8時間ほどかかる大手術になります。
喉頭(声帯)の切除で発声機能を失った後は、まずは筆談でコミュニケーションを取ります。また、人工喉頭による代替発声法も有用です。人工喉頭を使用しない食道発声法を練習することも可能ですが、上達が難しいので、その他の方法として、気管孔に特殊な器具を15分の手術で装着することで、肉声に近い発声が得られるケースがあります。