Vol.25
40代、50代は家計の曲がり角!?
あなたのセカンドライフ「夫婦で3,000万円」で足りますか?
2016.02.01
教育資金でぎりぎりの家計なのに、親の介護問題、自分たちの健康問題など、何かと重なりがちなアラフィフ時代。
老後資金準備に「全く手が回らない」という人は、今すぐ家計の見直しが必要かもしれません。まずは、老後資金としていくら必要かを考えてみましょう。
一般にいわれることが多い金額である3,000万円では足りないケースもあるのでは?
■リタイア後は年金だけで暮らせない!?
2014年の簡易生命表によると、「平均寿命」は男性80.50歳、女性86.83歳。2014年時点で60歳の「平均余命」を加味した年齢は、男性83.36歳、女性88.68歳となります。
また、70歳では男性85.49歳、女性89.81歳で、もはや「人生90年時代」です。毎年寿命が伸び続けていることを前提に考えるなら、余裕を5年ほど見て「人生95年時代」として老後資金準備をしておくことは大事になってきそうです。
企業の定年は段階的に65歳に変わりつつありますが、「人生95年時代」を前提にするなら、いわゆる「リタイア後」は30年あります。その間の生活費・イベント等を、主に公的年金と退職金、自力で準備した老後資金でまかなうことになります。
データを見てみましょう。総務省「家計調査」(2014年)によると、高齢夫婦無職世帯は、生活費が月26.9万円(税・社会保険料込み)かかる一方で、実収入は20.7万円。月約6.2万円は貯蓄を取り崩しています。高齢単身無職世帯では、生活費が約15.4万円で、実収入は約11.2万円。月約4.2万円の不足分は貯蓄で補っています。
30年分の不足額の累計は、高齢夫婦無職世帯で約2,232万円、高齢単身無職世帯で約1,512万円。生活費の不足分だけでこれだけの額が必要なのです。後述しますが、他にもかかる費用があります。
ましてや、年金額は減額傾向、医療・介護の保険料も利用者負担が増加しています。消費税も2017年4月に10%に引き上げられますが、その後は引き上げが無いとは言えず、その上、物価まで上がろうものなら、状況はさらに厳しくなります。
■あなた自身の老後資金を把握
家計調査はあくまでも平均データですので、「自分の老後資金」が気になります。それを見積もるには、まず、どんな老後を送りたいかを想定する必要があります。前出のデータは生活費だけですが、他にも、定年後のイベントや生活費以外にかかるものもあります。
住宅のリフォームや建て直し、車の買い換え、海外・国内旅行、趣味のためのお金。子どもたちの結婚や住宅取得時にサポートをしたい場合はその費用も見積もる必要があります。
また、要介護期にどこで介護サービスを受けるのかも想定しておく必要があります。どこで誰に介護をしてもらうのか、費用はどれくらいかかるのか等も大まかに把握しましょう。
次のような費用がどれくらいかかるか書き出し、ざっくりでいいので累計を出してみてください。
【老後にかかる費用】
1.公的年金や企業年金等で不足する生活費
住居費を除くリタイア後の生活費はいくらかかりそうでしょうか。
今の家計から想定するか、あるいは前述のデータを参照し、想定してみましょう。
一方で、公的年金はどれくらいもらえそうか「ねんきん定期便」で試算し、企業年金は職場で調べるなどし、差額の累計を計算してみましょう。
2.住居費
リタイア後の「住居プラン」を想定します。持ち家なら建て替えやリフォーム費用、固定資産税、さらに、マンションなら管理費・修繕積立金がかかります。
ずっと賃貸の人は、リタイアの段階でその後の家賃分を用意しておく必要が。有料老人ホームへの入居を希望するのであれば、入居一時費や月々の費用もかかります。
3.車関係費
車が生活必需品なら、買い替え費用も計算に入れましょう。リタイア後に何台買い替えるかで、金額も異なります。
ガソリン代や駐車場代、自動車保険料なども忘れずに見積もりましょう。
4.リタイア後の子どもの教育費
晩婚や晩産で、リタイア後に教育費がかかる場合は、その分を残しておきましょう。
5.子どもの結婚資金や住宅取得資金の援助
子どもの結婚資金や住宅取得資金などの援助をする予定なら、その分も見込んでおきます。
6.夢&生きがい費用
世界1周旅行をする、大学院で学ぶ、ショップを開くなど、リタイア後に実現予定の夢や生きがいがあれば、その費用も加えます。
7.医療・介護予備費
リタイア後は病気の罹患率も上がり、介護リスクも上がります。
あるいは親の介護という予測できないリスクもあるため、「予備費」は多めに用意しましょう。目安としては300万~500万円。
8.負債
住宅ローンやリフォームローン、教育ローンをはじめ、リタイア時点で残る負債分も想定しておく必要があります。
9.葬儀費用など
自分たちが亡くなったときの葬儀費用など。墓石費用なども含め1人200万円程度、夫婦2人なら400万円程度が目安。
終身保険などで備えている場合には見積もる必要はありません。
10.その他
例えば、相続税納税の準備資金など。
■準備できている分は?
前項の<a>で、老後にかかる費用から準備できている資金を差し引けば、「現時点の不足分」が見えてきます。準備できる老後資金は次のような項目から試算します。公的年金は前項で計算に入れていますので、こちらには含めません。
【準備できる老後資金】
11.退職金
職場などでもらえる予想額を調べてみてください。自営業の場合は、退職金代わりに加入する「小規模企業共済」に入っていれば、その額を記入しましょう。
なお、確定拠出年金の場合は、将来いくらになっているかわからないので、定年までの掛け金合計額で代用するのも手です。
12.年金財形・社内預金
職場で年金財形や社内預金などを行っている人は、将来の予測額を記入しましょう。
13.自分年金
個人で加入している個人年金保険や、老後資金用に行っている投資信託の積立、その他老後資金用の資産を洗い出してみましょう。
14.定期収入
定年後も働くなら、無理のない予測額を。また、不動産収入などがある場合は、経費を引いた利益で計算しましょう。
■差額はいくら?
それぞれの額を書き出し、自分自身の場合の<a>-<b>の額を把握することが、まず第一歩です。
<a>-<b>の額が小さければ、これから準備する老後資金は少なくて済みます。
逆に、大きい場合は、想定している老後の予定を修正するか、老後の生活費を下げる、あるいは老後資金が貯められるように家計を大改造する必要があります。
ファイナンシャルプランナー 豊田眞弓
バックナンバー
- Vol.130 年末調整と確定申告
2024.10.31
- Vol.129 正しい給与明細書の見方
2024.10.01
- Vol.128 家計簿を付けるメリットと長続きさせる“手抜き”技
2024.9.01
- Vol.127 ルールを決めてお金の管理を!
2024.8.01
- Vol.126 家計のムダを減らす 節約のヒント
2024.7.01
- Vol.125 収入に合わせて予算を決め、予算内でやりくりする
2024.6.01
- Vol.124 人生にかかるお金はいくら?
2024.5.01
- Vol.123 もっと学びを 金融リテラシーが求められる時代
2024.4.01
- Vol.122 雇用保険に注目 リスキリングに手厚い支援
2024.03.01
- Vol.121 相続時にメリット 生命保険を賢く活用しよう
2024.02.01
- Vol.120 資産形成の第一歩
2024.01.01
- Vol.119 源泉徴収票を理解する
2023.12.01
- Vol.118 離婚することになったとき決めておくべき 3つの重要事項
2023.11.01
- Vol.117 1年未納で年に約2万円減 国民年金は満額受け取れますか?
2023.10.01
- Vol.116 会社員要注目!知っておきたい所得控除3選
2023.8.31
- Vol.115 関東大震災から100年 地震保険に加入していますか
2023.8.01
- Vol.114 進化するがん治療への備え 多様ながん保険 じっくり検討を
2023.7.01
- Vol.113 安心・安全なカーライフのために 自動車事故への備えをチェック
2023.6.01
- Vol.112 認知症への備え 成年後見制度でお金の管理を
2023.5.01
- Vol.111 2024年1月以降の贈与から使い勝手が向上 相続時精算課税
2023.4.01
- Vol.110 2024年から新制度に移行 新しいNISAで何が変わる?
2023.3.01
- Vol.109 公的制度を上手に活用 仕事と介護の両立を目指す
2023.2.01
- Vol.108 安心して赤ちゃんを産むために 出産に伴う休みとお金の話
2023.1.01
- Vol.107 気楽に書き始める エンディングノートのすすめ
2022.12.01
- Vol.106 会社勤めの冬の風物詩 年末調整って 何だろう?
2022.11.01
- Vol.105 変わる葬儀のスタイル 家族葬が増加 費用は低下傾向
2022.10.01
- Vol.104 法務局に預けて安心 自筆遺言作成のハードルが低下
2022.9.01
- Vol.103 「値上げ時代」を賢く生きる お財布に優しい省エネ・節電ライフ
2022.8.01
- Vol.102 家族の死亡時に保険契約の有無を照会できる生命保険協会の契約照会制度
2022.7.01
- Vol.101 10月から「106万円の壁」の適用範囲が拡大
2022.6.01
- Vol.100 これからの働き方・稼ぎ方を考える 「所得の分散」で実収入を増やす
2022.5.01
- Vol.99 資産を2倍にするのにかかる期間は? おおよその年数がわかる「72の法則」
2022.4.01
- Vol.98 高校の新学習指導要領始まる 家庭科の授業で投資信託を学ぶ
2022.3.01
- Vol.97 病気やけがで障がいが残ったら 程度に応じて年金・一時金が受給可能
2022.2.01
- Vol.96 支給期間が「通算1年6か月」に延長 傷病手当金の使い勝手が向上
2022.1.01
- Vol.95 年金ライフの選択の幅が広がる 受給開始を75歳まで繰り下げ可能に
2021.12.01
- Vol.94 知っておいてほしい 専業主婦(夫)の年金事情
2021.11.01
- Vol.93 ねんきんネットを活用しよう!
2021.10.01
- Vol.92 公的年金制度の仕組み
2021.09.01
- Vol.91 「ふるさと納税」のメリットは?
2021.08.01
- Vol.90 上手に貯めて使いたいマイル
2021.07.01
- Vol.89 新型コロナ禍の家計防衛術
2021.06.01
- Vol.88 投資商品選びのアドバイス
2021.05.01
- Vol.87 つみたてNISAやiDeCoにも採用されている定額購入法の長所と短所
2021.04.01
- Vol.86 2021年4月から「70歳雇用」が企業の努力義務に。何がどう変わる?
2021.03.01
- Vol.85 年末調整で手続きを忘れても確定申告でできる!生命保険料控除はしっかり活用を
2021.2.01
- Vol.84 コロナ禍でリフォームをする際も「減税」を活用しよう!
2021.01.01
- Vol.83 ボーナスが減ってもやっていける強い家計の作り方
2020.12.11
- Vol.82 高額介護サービス費制度が2020年8月から一部変更に。どのような影響がある?
2020.11.01
- Vol.81 2020年10月から酒税変更でビールが減税に!その他の発泡酒やワインは増税!?
2020.10.01
- Vol.80 もしも自然災害に遭ってしまったときのお金の話
2020.09.11
- Vol.79 年金改正法成立と、私たちの生活への影響
2020.08.01
- Vol.78 会社員が副業を始める前に注意しておきたいポイントをご紹介
2020.07.01
- Vol.77 マイナンバーカードによる消費活性化策、マイナポイントがスタート!
2020.06.01
- Vol.76 生涯現役に向けて資格を取ろう!雇用保険の「教育訓練給付制度」
2020.05.01
- Vol.75 2020年4月から「同一労働同一賃金」がスタート。何が変わる?
2020.04.01
- Vol.74 「家計の金融行動に関する世論調査」でわかる年代別平均貯蓄額は?
2020.03.01
- Vol.73 生命保険の付帯サービスって意外に役立つ!
2020.02.01
- Vol.72 知っトク家族信託!上手に活用しよう
2020.01.01
- Vol.71 保険金や給付金の請求漏れを防ぐには?
2019.12.01
- Vol.70 消費増税で高齢者に関する介護・年金にどんな変化が?
2019.11.01
- Vol.69 60代でもキャッシュレス決済に挑戦!税金のポイントをゲットしよう
2019.10.01
- Vol.68 「あげすぎ」にご用心!生前贈与を整理しておこう
2019.09.01
- Vol.67 持病も増える50代以降。医療費を節約する7つの方法
2019.08.01
- Vol.66 海外滞在中の病気やケガ、死亡でも生命保険は備えられる?
2019.07.01
- Vol.65 おひとり様が不安なく楽しい老後を過ごすには?
2019.06.01
- Vol.64 これからの時代とっても大事。金融リテラシーを身に付けよう!
2019.05.01
- Vol.63 住宅ローン控除の拡大などで住宅取得はいつが有利に?
2019.04.01
- Vol.62 3~5歳児の幼児教育・保育の無償化で教育資金の貯め方は変わる?
2019.03.01
- Vol.61 知っトク!相続に関わる民法改正のポイント
2019.02.01
- Vol.60 2019年、消費増税でどうなる?どうする?わが家の家計
2019.01.10
- Vol.59 まだ間に合う!年末までにやっておきたい家計のツボ
2018.12.01
- Vol.58 高齢期の働き方はココに注意!
2018.11.01
- Vol.57 「ハイパーインフレ」ってどんなもの?備えるには?
2018.10.10
- Vol.56 保険はどんなときに見直しますか?
2018.09.01
- Vol.55 人生100年時代。老後資金への備えは複合的に!
2018.08.01
- Vol.54 介護保険、2018年8月から高所得者が3割負担に!
2018.07.01
- Vol.53 医療費はどのくらいかかる?(2)
2018.06.01
- Vol.52 医療費はどのくらいかかる?(1)
2018.05.01
- Vol.51 40~50代は「責任世代」。将来も見据えてどんな病気・ケガに備えるべき?
2018.04.01
- Vol.50 人生100年時代。資産形成の1つの方法として「つみたてNISA」を始めませんか?
2018.03.01
- Vol.49 配偶者控除・配偶者特別控除が改正に。妻の働き方はどうなる?
2018.02.01
- Vol.48 実はトラブルも多い!?成年後見制度を活用するポイントは?
2018.01.01
- Vol.47 ふるさと納税で応援したい自治体をサポートしてお礼をゲット
2017.12.01
- Vol.46 大学時代の教育資金をサポートする制度
2017.11.01
- Vol.45 雇用保険の教育訓練給付制度で退職後の武器をつくろう!
2017.10.01
- Vol.44 知っておくと安心!?契約者貸付制度のしくみ
2017.09.01
- Vol.43 個人型確定拠出年金「iDeCo」は本当におトクなの?
2017.08.01
- Vol.42 「高齢者」の定義が65歳⇒75歳になるとどうなる?
2017.07.01
- Vol.41 日本人の平均貯蓄額は1,600万円ってホント?
2017.06.01
- Vol.40 増える医療の自己負担。今度は高齢者の「高額療養費制度」が変更に!
2017.05.01
- Vol.39 年金制度改革でもらえる年金がさらに目減りする!?
2017.04.01
- Vol.38 セルフメディケーション税制でちょっとお得に健康管理
2017.03.01
- Vol.37 確定申告でもマイナンバーが必要に!
2017.02.01
- Vol.36 ご存知ですか?介護費の一部も医療費控除の対象です
2017.01.01
- Vol.35 70代になったら考えてもらおう!親の終活
2016.12.01
- Vol.34 40代から考えよう!自分のセカンドライフと終活
2016.11.01
- Vol.33 外貨建て資産との上手な付き合い方
2016.10.01
- Vol.32 マイナス金利時代の老後資金準備はどうなる?
2016.09.01
- Vol.31 自分の年代の病気やケガのリスクを知っていますか?
2016.08.01
- Vol.30 4月からスタートした「患者申出療養」について知ろう!
2016.07.01
- Vol.29 40代、50代は家計の曲がり角!? 子育てにめどがついたら生命保険の見直しを!
2016.06.01
- Vol.28 40代、50代は家計の曲がり角!? 老後資金準備のために、住宅ローンは55歳完済を目指せ!
2016.05.01
- Vol.27 40代、50代は家計の曲がり角!? アラフィフ家計の漬物石!? 教育費負担を見直す
2016.04.01
- Vol.26 40代、50代は家計の曲がり角!? 老後破綻を回避する、今からできる7つの方法
2016.03.01
- Vol.25 40代、50代は家計の曲がり角!?あなたのセカンドライフ「夫婦で3,000万円」で足りますか?
2016.02.01
- Vol.24 40代、50代は家計の曲がり角!?はまっていませんか?アラフィフ世代の家計のワナ
2016.01.01