検索

マネーコラム

Vol.33

外貨建て資産との上手な付き合い方

2016.10.01

資産形成や老後資金を考える際に、一般的に一部に外貨建て商品を組み込んだ方がよいといわれます。為替変動によって資産の価値が変動するリスク商品ですが、なぜ組み込むとよいのでしょうか?価値が変動した時など、どのように対応すればよいのでしょうか?外貨建て商品との上手な付き合い方について考えてみます。

■今なぜ外貨建て商品が注目されている?

マイナス金利の影響で、預金金利が低くなるばかりか個人年金保険のような貯蓄型保険の値上げが相次いでいる話は前回のコラムに書きました。そんな中、最近注目されているのが外貨建て商品です。代表的なものとしては、外貨預金や外貨建て保険、外貨建て投資信託などがあります。

外貨建て商品のメリットとしては次のようなものが挙げられます。

  • ・超低金利の日本よりも金利が高い
  • ・為替差益が狙える(差損のリスクもあり)
  • ・円資産の価値が下がったときの資産防衛にもなる

外貨建て商品は、日本よりも金利が高いことがメリットです。
さらに為替が変動することで為替差益を得られる可能性もあります。例えば、1米ドル=100円が80円になるのが、米ドルに対して円の価値が上がる「円高」で、120円になるのが円の価値が下がる「円安」ですが、円高になると為替差損のリスクはあるものの、円安によるリターンが狙える点はメリットとされています。

日本は超高齢化と少子化により労働人口が減り、経済力が弱まるのではという不安や膨大な負債を抱え、財政問題も深刻です。さまざまな理由で為替は変動しますが、このような理由から、長期的に円が売られて円安が進んだ場合、保有資産が円建てだけだと資産の価値が目減りします。こうした事態への防衛策が、資産に外貨建て商品を組込むことなのです。

つまり、外貨建て商品を持つことは、資産を「増やす」ことと、資産を「守る」ことの2つの意味があるのです。

■押さえておきたい「為替手数料」

外貨建ての金融商品を利用する際に、必ず押さえておきたいのが「為替手数料」です。

円⇒外貨に交換するときの為替レートは「TTS(電信売相場)」、外貨⇒円に交換する場合は「TTB(電信買相場)」と呼ばれます。TTSとTTBを決定するための基準になる為替レートが「TTM(電信売買相場の仲値)」です。TTMが1米ドル=100円で為替手数料が1円だった場合、TTS=TTM+1円=101円、TTB=TTM-1円=99円となります。

表 2人以上世帯の金融資産(金融資産を保有していない世帯を含む)

この例の場合、“往復”で2円の為替手数料がかかります。そのため、1米ドル=102円より円安にならなければ為替差益が出ないことがわかります。

為替手数料は通貨や金融機関で異なりますが、外貨建て商品で投資をする際には必ずチェックしましょう。外貨建て保険でも同じです。同様の商品であるなら、為替手数料が0.5円より0.25円と低い方が有利です。往復で考えればその差は0.5円になり、その分利益が出やすくなります。

■外貨建て商品は出口戦略が大事!

外貨建て商品は出口戦略がとても重要です。それも利用時に決めておけば安心です。

ここからは外貨建て保険(終身保険や養老保険)を想定して考えます。外貨建て保険に加入する目的としては次のようなものがあるでしょう。
1・死亡保障(葬儀費用など。家族に残す) 2・相続対策資金用 3・資産運用

1・2であれば、国内と国外の予定利率などの差から割安な保険料で保障を準備できることから、円建ての終身保険の代わりに利用する人もいます。保障目的なので、基本的には解約せずに持ち続けることになります。

3のように、目的が運用という場合は、円安になったときの行動をあらかじめ決めておくことが大事です。「長期運用と割り切って持ち続ける」だけでなく、「一定の利益が出たら利益を確定する」という選択肢も視野に入れてもいいでしょう。例えば、外貨建て養老保険の中には、円換算の解約返戻金に目標設定をしておいて、それに到達をすると運用成果を確保し年金移行するような商品もあり、そのような商品を利用するのも一つの方法です。

■為替差損が出そうなときは?

外貨建て商品には「為替差損」というリスクも付きまといます。リスクを避ける方法には、「円安の波が来るまで待つ」と「外貨で使う」があります。

円高のタイミングで外貨建て養老保険が満期になった例で考えます。円に戻さなければ為替差損は確定しませんので、満期保険金は銀行の外貨口座に外貨のまま送金してもらいます。この外貨は、有利な外貨建て商品を見つけて投資するか、または海外旅行などで使うもよしです。銀行によっては外貨デビット機能付きキャッシュカードを出しているところもあり、口座の外貨でショッピングもできます。

ですので、外貨建て保険などで選ぶのは、海外旅行やお子さんやお孫さんの留学資金などで使える通貨がいいでしょう。個人的には長期的な安定が期待でき、世界の基軸通貨といわれる米ドルをメインにしています。アメリカ(ハワイ・グアム含む)だけでなく、ベトナムやカンボジアなどでも使えます。オーストラリアが好きなら豪ドルもいいですね。

ファイナンシャルプランナー 豊田眞弓

バックナンバー

全てを表示閉じる