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マネーコラム

Vol.39

年金制度改革で
もらえる年金がさらに目減りする!?

2017.04.01

年金制度の持続性を重視した「年金制度改革関連法」が成立し、新ルールが導入されました。
現役世代の賃金が下がると高齢者の年金も減るなど、現役世代にも年金受給世代にも深く関わる変更ですので、しっかり理解しておきましょう。

■「年金制度改革関連法」成立でどうなった?

2016年後半に世間をにぎわせた話題の1つが、「年金制度改革関連法」ではないでしょうか。正式な法律名は「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」で、若い世代の将来の年金を守ることを前面に打ち出した改正でした。

すでに12月に成立しましたが、今後、私たちの生活に影響が現れるものとして、次の3点を挙げておきます。


1.厚生年金加入対象者の拡大(2017年4月~)
厚生年金は「勤務時間週30時間以上、年収130万円以上」の人が加入していましたが、2016年10月以降は「501人以上の事業所で、週20時間以上、年収106万円以上」に変更されました。今回の改正では「500人以下の事業所で、週20時間以上、年収106万円以上」でも厚生年金に加入できることになりました(労使合意が必要)。

2.産前産後期の国民年金保険料の免除(2019年4月~)
厚生年金ではすでに導入されていますが、今回は自営業・自由業の女性でも産休中の国民年金保険料が免除されることになりました。

3.年金額の改定ルールの変更(次項以降で解説します)
次の2つによって、年金額の改定ルールが変更されました。
・マクロ経済スライドの強化(2018年4月~)
・賃金下落率に合わせた年金額改定(2021年4月~)

もう1つ、年金に関する別の法案が通りました。
関連する内容なので4つめとして挙げておきます。

4.国民年金の受給資格期間が10年に(2017年8月~)
公的年金は免除期間を含め25年以上払わなければ受給できなかったのですが、この期間が10年に短縮されました。25年に届かず、無年金を覚悟していた人にとってはかなり助かる変更です。

老後生活を考える際に、「3.年金額の改定ルールの見直し」は重要ですのでしっかり理解しておきましょう。今回の改正が「年金カット法」と騒がれたのはこの見直しのためです。どのような内容か詳しく見ていきましょう。

■「マクロ経済スライド」が厳密化

年金額の改定ルール変更の1つめが、「マクロ経済スライド」の強化です。

公的年金制度は100年持続できる制度となるよう、5年ごとに見直されています。現在は、現役時代の所得の50%を維持すると法律で定められていて、それまで60%だったものを徐々に下げていくことになっています。そのための仕組みが平成16年に導入された「マクロ経済スライド」です。

現役世代の人口減少や平均余命の伸びに合わせて年金の給付水準を調整する仕組みで、賃金や物価による年金額の伸びから「スライド調整率」(現在は約0.9%)を引いて年金額が計算されます。しかし、デフレが続いたため、スライド調整率が引かれたのはたったの1回だけでした。

「マクロ経済スライド」のイメージ

【参照】「一緒に検証!公的年金」(厚生労働省)

今回の改正で、2018年4月からは、賃金や物価が下落している間は「マクロ経済スライド」を発動しない代わりに、上昇したときに数年分をまとめて引くことに。
ただし、この「マクロ経済スライド」では、年金額そのものが減ることはありません。賃金や物価が上がっても年金額が上がらず、じわじわと“見えない削減”が行われるということです。

■賃金が下がれば年金も減額に!

年金額改定ルールのもう1つの変更が、「賃金・物価スライド」の見直しです。

年金額は賃金や物価の変動に合わせて毎年見直されていますが、これまでは、賃金が下がっても物価が同程度に上がれば、年金額は据え置かれました。現役世代の視点で考えると、自分たちの賃金が下がっているのに、年金受給世代の年金は維持され、自分たちが将来受け取る年金原資が減るとなれば、不公平を感じてしまいます。

そのため今回の改正で、2021年4月からは賃金が下がれば年金額も減額されることになりました。こちらは“見える削減”です。年金受給者にとっては痛い変更ですが、政府は「現役世代の賃金が上がれば年金が下がることはない」と説明していました。

賃金・物価スライドのイメージ

今回の改正に限らず、公的年金が削減に向かうことに備える必要があります。
【参照】「一緒に検証!公的年金」(厚生労働省)


ファイナンシャルプランナー 豊田眞弓

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