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マネーコラム

Vol.48

実はトラブルも多い!?成年後見制度を活用するポイントは?

2018.01.01

2025年には認知症患者が約700万人になるとの予測もある中、親や自分の終活を考える際に避けて通れないものの1つが成年後見制度です。実はトラブルも多いことなどを知っておきましょう。

●2つの成年後見制度を知っておこう

成年後見制度は、老化や認知症、病気、事故などで判断能力が十分でない人の財産管理や生活面の監護などを成年後見人等が行う仕組みです。

その役割は、預貯金をはじめ財産を管理することや、介護サービスや施設との契約などの契約を代わって行うなどのサポートをすることです。

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。

<法定後見制度>

法定後見制度は判断能力や理解力が低下した状態で利用する制度です。本人や配偶者、4親等内の親族などが家庭裁判所に申立てをします。身寄りがない場合などは検察官や市区町村長が申立てを行うこともできます。

家庭裁判所に申立てをすると、鑑定・調査の結果、判断能力の不十分さの程度に合わせて「後見」「保佐」「補助」等を開始するという審判がおり、家庭裁判所が選任した後見人、保佐人、補助人がその事務を行います。

表1 法定後見の種類

<任意後見制度>

一方、任意後見制度は、あらかじめ後見人を選んで契約をしておくもの。将来、後見人になってほしい人と、頼みたいことの範囲(住居や介護に関する契約や財産管理など)をあらかじめ決めておくことができます。公正証書を作成して任意後見契約を結びます。

任意後見人を頼むのは、成人であれば親族でも友人でも可能です(破産者等は除く)。通常は、子どもや兄弟姉妹、甥姪などが多いようですが、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士などの専門家のほか、法人(弁護士会の成年後見センター、司法書士のリーガルサポートセンター、社会福祉協議会など)などに頼むこともできます。後見が始まる前であれば、依頼者も任意後見人も双方から解約することができます。

後見を開始するときは、家庭裁判所に後見開始を申立てて「任意後見監督人」を選任してもらいます。任意後見監督人は任意後見人を監督し、問題があれば家庭裁判所に請求して解任する権限も持っています。

●成年後見制度の実際と問題点

成年後見制度の利用者数のデータを見ると、右肩上がりに増えていることがわかります(図表2)。ただし、任意後見の利用者数はまだまだ少ないようです。

図表2 成年後見制度利用者数の推移(平成28年12月末)

また、成年後見人等として選任されるのは親族が中心かと想像しがちですが、実は、司法書士や弁護士、社会福祉士をはじめ第三者が選任されるケースが7割強となっています(図表3)。

家庭裁判所では、被後見人等の資産が数千万円以上など大きい場合はもちろん、そうでなくてももめる可能性が少しでもあると判断される場合は専門家を指定する傾向があるようです。

図表3 成年後見人等と本人との関係別件数(平成27年)

専門家が法定後見人に指定される傾向が強まった背景には、親族による不正が目立つためです(図表4)。家裁に申請したのに専門家が選定されてしまった…などという声はよく耳にします。

図表4 法定後見人による不正

●成年後見制度を活用する際のポイント

以上、見てきたように問題も少なくない成年後見ですが、これを上手に活用するためのポイントを整理してみましょう。

まず、法定後見人を特定の人に頼むつもりでいる方は、意思能力があるうちに任意後見契約を結んでおく方が希望が叶う可能性は高まります。

また、要後見状態になったときには、後見制度支援信託を活用するのも本人の財産を適切に保護するためのポイントです。本人の財産のうち、日常的な支払いをする分だけ預貯金で後見人が管理し、しばらく使用しない分を信託銀行等に信託する仕組みで、家庭裁判所の指示を受けて信託銀行等との間で信託契約を締結します。信託財産を払い戻したり、信託契約を解約するには、家庭裁判所が発行する指示書が必要になります。

そしてもう1つ。できればやはり、いろいろ頼める親族を1人でいいので確保しておくことも大事です。第三者の後見人の場合、身元引受人等にはなれませんし、病院に入院する際の保証人や、手術の同意、延命治療をするかしないかの判断など、家族が担うべき部分は関われないためです。

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