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マネーコラム

Vol.52

医療費はどのくらいかかる?(1)

2018.05.01

「病気やケガで入院・手術を受けた場合、どれくらいの医療費がかかるのでしょう? 医療費の負担を軽減してくれる高額療養費制度についても押さえておきましょう。

●入院時には1日20,000円かかる!?

医療保障を検討する際に気になるのが、もしも入院したらどれくらいの医療費がかかるのか、ではないでしょうか。(公財)生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(平成28年度)のデータを見ると、入院時の1日あたりの「自己負担費」は平均で19,835円となっています。

同データは、過去5年間に入院して自己負担費用を支払った人のデータで、治療費や食事代、差額ベッド代(次回解説します)に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品費などを含んでいます。

治療費については、高額療養費制度(後述)を適用後の金額です。つまり、純粋に治療費だけではないということを頭に置く必要がありますが、それでも平均で1日20,000円近くかかっているというのは驚きです。費用の分布で見ると、平均だけでなく、性別・年代ともに「10,000円以上15,000円未満」が最も多くなっています。

ちなみに、同調査の平均在院日数は19.1日で、その内42.9%が7日以下で短いことも、日額が高めになる一因ではないかと推測します。細かく見ていくと、高額療養費制度を利用した割合が6割程度に留まっているのもやや疑問で、あとで高額療養費の支給を受けているケースも含まれるかもしれません。また、「40,000円以上」と回答した人の中に超高額の費用がかかった人が含まれれば、平均額は引き上げられます。

なお、同調査では「入院中の逸失収入」についても聞いています。本来働いていれば得られたはずの収入が得られなかった分です。会社員であれば有給休暇や傷病手当金(病気やケガの療養で仕事を連続3日間休んだ場合、4日目以降支給される。標準報酬日額の2/3)もありますが、自営業等にはそうした保障がありません。

それを合わせた「自己負担費用と逸失収入の総額」は、1日平均で23,901円と試算されています。前述の自己負担費用を除くと1日平均4,066円の逸失収入があります。

図表1 1日あたりの自己負担費用

*過去5年間に入院し自己負担費用を支払った人のデータ(高額療養費制度を利用した人+利用しなかった人[適用外含む])。治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品費などを含む。

●押さえておこう!高額療養費制度

医療保障を知る上で押さえておくべき制度として高額療養費制度があります。医療費が高額になったときのセーフティーネットです。

会社員なら健康保険、自営業なら国民健康保険と、私たちは何らかの公的医療保険に加入しています。そのおかげで、病院で治療を受けても、個人が負担する金額は実際にかかった医療費の3割で済みます(未就学児は2割、70歳以上は1~3割)。しかし、その医療費が一定以上高額になった場合に、軽減してもらうことができます。

具体的には、1カ月間(1日から末日まで)に同じ医療機関で診療を受け、自己負担限度額を超えた場合に、その超えた分が軽減(返金)されます。図表2と図表3に整理しましたが、70歳未満と70歳以上で異なります。

なお、同じ公的医療保険に加入している家族が治療を受けたり、1人が複数の病院で治療を受けたときは、同月の自己負担が21,000円以上の分を合算できます。過去1年に3回、高額療養費の支給を受けた人は4回目以降は「多数該当」となり上限額が下がります。

図表2 高額療養費制度(70歳未満)

図表3 高額療養費制度(70歳以上)

実際の高額療養費の効果を試算してみましょう。Aさん(45歳、年収500万円)が狭心症で1週間入院し、100万円の医療費がかかったとします。

狭心症で1週間入院し、100万円の医療費がかかったケース

つまり、自己負担は87,430円で、窓口で30万円を負担した場合は、212,570円は後から戻ります。現在、70歳以上の方は病院窓口で高額療養費も含めて精算されています。70歳未満の方でも、事前に健保組合などから「限度額適用認定証」を受け取って病院に提示すれば、高額療養費精算後の自己負担分で済みます。Aさんも事前に手続きをすれば、高額の自己負担をせずに済みます。

●高額療養費制度が適用にならない費用もある

高額療養費制度の対象になるのはあくまでも公的医療保険が適用される医療費分で、次のような費用は対象になりません。

  • ・入院中の食事代(1食460円、住民税非課税世帯1食210円、低所得層世帯1食100円)
  • ・差額ベッド代
  • ・国が認めた医療機関で受ける「先進医療」の技術料
  • ・医療保険制度以外の民間療法など
  • ・正常分娩
  • ・労災事故など

高額療養費制度により、医療費そのものは思ったよりもかからないと感じるかもしれません。とはいえ、所得が高くて自己負担が高い人や、入院するなら個室にしたいということで差額ベッド代がかさむ人、先進医療の技術料など100%自己負担の費用がかさむ人などは、負担が大きくなる可能性があります。

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