Vol.56
保険はどんなときに見直しますか?
2018.09.01
入って終わりでないのが生命保険。ときどきは見直しをする必要があります。どんなときに見直しが必要なのか、考えてみましょう。
●保険はライフイベントで見直す!
生命保険は、リスクに合わせて加入しますが、契約が済んだら何もしなくていいわけではありません。むしろ、見直しをしながら、保障を適切な状態に保つことが重要です。必要な保障に影響するようなライフイベントがあったときには、見直しましょう。具体的には次のようなケースが挙げられます。
・社会人になったとき
学校を卒業して社会に出たら、リスクマネジメントも自己責任です。かつてのように保険営業の方が職場にくることは少なくなっていますから、自分で行動を起こすことが大切です。自分で保険に入り、リスクに備えましょう。
保障としては、もしものときの葬儀費用に加え、奨学金に返済があればその残額分などの死亡保障と、医療保障・がん保障などをカバーしておきたいもの。病気やケガで働けない状態になったときに備える就業不能保障も検討しましょう。
・結婚したとき(女性は婚約したとき)
結婚したらしっかりと保障を付けたいので、保険の見直しは必須です。夫婦共に葬儀費用+αの死亡保障と、医療保障・がん保障・就業不能保障などをカバーしましょう。「+α」の死亡保障は、配偶者が専業主婦・主夫の場合は多めの金額を設定しましょう。
結婚前にすでに入っていた保険がある場合は、死亡保険金の受取人を親から配偶者へと変更することも忘れないようにしましょう。元の保険で不足する分のみ新たに加入する方法と、元の保険をやめて新たに加入する方法があります。
また、女性は妊娠がわかると、どんなに経過が順調であっても一般的には医療保障が付けられなくなるので(例外商品あり)、できれば、婚約をした時点で医療保障をつけましょう。
・子どもが誕生したとき(夫は妻の妊娠がわかったとき)
最も重要な見直しのタイミングが、子どもが誕生したときです。それまでの死亡保障に加え、夫婦ともに死亡保障を厚くして、医療保障・がん保障・就業不能保障なども適切にカバーしましょう。
夫の死亡保障を見直すタイミングとしては、生まれてからではなく、妻の妊娠がわかったときの方がいいでしょう。妊娠中に夫に万一のことがあった場合にも備えることができます。
また、子どもが生まれたら、教育資金の準備もスタートしましょう。基本の考え方は、教育費の負担が重くなる大学・専門学校の時期に備えて貯蓄をしておきます。表1にあるように、大学時代は、自宅通学でも、国公立で4年間で500万円弱、私立文系で700万円弱、理系で900万円弱かかります。
自宅外の場合、このほかに仕送りが年約145万円、4年で約580万円かかります。そのため、教育資金は300万~500万円程度を目標に貯めておきたいもの。大学時代の学費から家計でまかなえる分を引けば、あとは奨学金を利用することでカバーできるはずです。学生自身のおこづかいは、アルバイトでまかなえばさらに下げられます。
なお、教育資金の準備ができる保険として、学資保険(こども保険)があります。保険料を払う形で積立になり、満期金などが大学時代の学費のベースとなります。契約者である親に万一のことがあったときには、以後の保険料が払込免除になり、教育資金は確実に残せるという商品です。貯蓄性をしっかり確認して加入する必要があります。
・住宅ローンを借りてマイホームを購入したとき
住宅ローンを借りてマイホームを購入すると、通常は団体信用生命保険(以下「団信」)に加入し、万一のことが起きたときには、ローンの残債分が保険金として支払われます。そのため、団信に加入したときは死亡保障を減らすことも検討可能です。中には、団信に任意加入の住宅ローンもあり、もしも加入せずに住宅ローンを借りた場合は、むしろ保障額を大きくする必要があります。もしものときに、住宅ローンの残債をカバーできるくらいの保障が必要です。
また、住宅ローンを借りている状態は、病気やケガで入院・療養となったときのリスクが強まるので、入院保障や就業不能保障は厚めにしておくといいでしょう。
・会社員→自営業、自営業→会社員と変化したとき
会社員から自営業や個人事業主になったときは、生命保険の見直しが必要です。年金が厚生年金から国民年金に変わり、もしものときの遺族年金が、<遺族基礎年金+遺族厚生年金>から<遺族基礎年金>のみになるからです。
その場合は死亡保障を増額する必要があるでしょう。ただし、25年以上厚生年金に加入していた場合は、国民年金であっても遺族厚生年金が出ますので、死亡保障の増額は不要と考えられます。
注意すべきは医療保障やがん保障、就業不能保障です。有給休暇も傷病手当金制度もないため、自営業になったら入院日額などの引き上げも必要と考えられます。
逆に、自営業だった人が就職をして会社員になった場合は、死亡保障や医療保障などを減らすことができる可能性があります。
・子どもが自立したとき、定年を迎えたとき
子どもが社会人になって扶養を外れると、家族の生活を守るための高額な死亡保障は不要になり、引き下げることができます。葬儀費用+配偶者に残す分程度の死亡保障でいいでしょう。定年を迎えたときも同様です。ただし、定年後も子どもがまだ学生の場合、死亡保障を減らすのは子どもが自立するまで待ちましょう。
それと同時に、医療保障やがん保障の見直しも行います(終身型かどうか?保障内容はどうか?などを点検)。老後に向けて、個人年金保険や介護保険なども検討するといいでしょう。夫だけでなく、妻の保障も見直します。
・離婚したとき
離婚をして、妻側が子どもの親権を持つ場合は、死亡保障を厚くする必要があります。リスクが高まるため、医療保障やがん保障、就業不能保障もしっかり付けましょう。夫側が親権を取らない場合は死亡保障を減らすこともできますが、子どもに対する養育の義務があるので、子どもを受取人にして死亡保障をつけておきたいもの。
・親を介護、扶養するとき
親を扶養する場合は、親のためにも死亡保障を上乗せしておくと安心です。ただし、親の資産が大きい場合や、ほかにも兄弟姉妹がいるのであれば、上乗せはしなくてもいいかもしれません。なお、配偶者と親のために死亡保険に入る場合、1本の保険で受取人を連名にする方法と、受取人ごとに2本に分けて入る方法があります。
・相続対策が必要になったとき(または必要だったことに気づいたとき)
自分にもしものことがあったときに、相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超える資産がある場合は、生命保険を使った相続税対策を取るといいでしょう。死亡保険には、法定相続人1人につき500万円までの非課税枠があります。この場合、終身保険を活用します。あるいは家族が外貨建ての商品に慣れている場合は、外貨建て終身保険も候補に入ります。
終身保険の場合、将来的に資産が減って相続対策が不要になったとき、一部解約などで自分の老後資金として活用することもできます。
●「定期点検」も1つの方法
保険を見直すタイミングとなるライフイベントをさまざま見てきましたが、思い当たるものがある場合には、早めに見直しをしましょう。必要な保障額などはご家庭で異なりますので、信頼できるコンサルタントに相談をして試算してもらいましょう。
こうしたライフイベントが特になくても、ときどきは保険の見直しをしたいもの。時間の経過によっても適切な保障設計に変化が出る場合があるためです。定期的に保険の「点検」をするなど、タイミングを決めておくのも手です。変更がなくても、入っている保険の内容を再確認する意味もあります。
例えば次のようなタイミングを決めておくのはいかがでしょう。
- ・3年または5年に1回見直す(西暦で3または5の倍数の年に見直すなど)
- ・オリンピックの年に見直す
●「人生100年時代」を見据えた備えを
保険の見直しの際には、「人生100年時代」を念頭に置くことも大事です。
例えば、子どもの自立や定年を機に死亡保障を減らす際にも、現在の資産の状況で妻の老後資金が不足する可能性があるなら、葬儀費用だけでなく、妻のための死亡保障を残すことも考えましょう。男性より女性は平均6歳長生きで、しかも高齢単身女性の貧困率が高いためです。
また、医療保険やがん保険は終身型で、なおかつ医療の現状に合うものに加入したいもの。古すぎる保障内容のものは、どこかで切り替える必要があります。
さらに、長生きによって介護期間が伸びる可能性があるのであれば、介護リスクにも備えておきたいですし、老後資金不足にならないように個人年金保険なども検討しましょう。
「人生100年時代」は、これまで以上にリスクマネジメントが大事な時代といえます。
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