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マネーコラム

Vol.58

高齢期の働き方はココに注意!

2018.11.01

最近は65歳以上でも働く人が増えています。生きがいをもって過ごすため、あるいは老後が長くなる中、老後資金・介護資金に備えるため、必要に迫られて働く人もいることでしょう。高齢期の働き方の注意点などを押さえておきましょう。

●65歳以上の働くシニアが増えている

総務省「労働力調査」(平成28年)を見ると、働いている人の割合は、65~69歳で男性の半数強(53.0%)、女性は3人に1人(33.3%)です。70~74歳も、男性は3人中1人弱(32.5%)、女性は5人に1人弱(18.9%)、75歳以上でも、男性で7人に1人弱(13.4%)、女性では18人弱に1人(5.6%)が働いています。65歳を過ぎても、多くの人が働いていることがわかります。

図表1 60歳以上で働いている人の割合(%)

65歳以上の正規・非正規労働者数の推移を見ると、いずれも年を追うごとに右肩上がりに増えています。特に増えているのは、非正規の労働者です。2016年のデータでは、65歳以上の正規の職員・従業員が99万人に対し、非正規の職員・従業員は301万人。現在のところ、65歳以上でも正規雇用でいられるのは4人中1人だということです。

2004年と比べると、正規雇用が2倍に増えたのに対し、非正規雇用は3倍強に増えています。定年後の働き方として、正規雇用も増えてはいるものの、それ以上に非正規雇用で働く高齢者が増えているということがわかります。

図表2 65歳以上の正規・非正規労働者数の推移(人)

●「定年」はどうなる?

現在、定年は企業が独自に設定しています。かつて、厚生年金の受給開始が段階的に65歳に変わるのに合わせ、定年を65歳まで延長することを義務化するといった動きもがありました。最終的に、2013年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、継続雇用の対象者を労使協定で限定し、企業側が再雇用する対象者を選別できる仕組みが廃止されました。

つまりは、希望すれば定年後も働き続けられるようになったのですが、決して定年が延長されたわけではありません。厚生労働省のサイトの該当ページにも、「定年の65歳への引上げを義務付けるものではありません」とわざわざ赤字で強調されています。

実際のところ、定年を65歳まで延長している企業は一部で、いったん定年したのちに継続雇用を行う企業が多いようです。再雇用か嘱託かなども企業によって異なります。

なお、現在、公務員の定年延長も議論されていて、定年を2021年から3年ごとに1歳ずつ引き上げ、2033年に65歳にする案が出ているようです。60歳以降の給与は50代後半の7割程度になる見込みだそうです。

●高年齢雇用継続給付と失業保険

定年後の継続雇用では、給与が大幅ダウンすることがほとんどです。これに備えて、「高年齢雇用継続給付」という制度があります。雇用保険に5年以上加入し、引き続き加入していないと受けられませんが、給料が60歳時点の75%未満に下がると、65歳に達するまで「高年齢雇用継続給付」を受けられます。給付額は、60歳以降の賃金の原則15%。給与が下がっても給付金で一部を埋められます。

一方、定年退職後に自力で再就職先を探す際に、ハローワークで求職の申し込みをすると、所定の条件を満たしていれば失業手当(基本手当)も受けられます。

●働くなら「在職老齢年金」に注意!

公的年金をもらいながら働くと、厚生年金が減額される可能性があることも押さえておきましょう。これを「在職老齢年金」といいます。将来的には制度の廃止についても議論されていますが、どうなるかはまだわかりません。

60~64歳までは年金月額(年金を12で割った値)と報酬(毎月の給料とボーナス合計の1/12)の合計が28万円を超えると、超えた額の半分が減額されます。65歳以上は、年金月額と報酬の合計が46万円を超えると、同じく超えた額の半分が減額されます。

収入が多く、厚生年金がカットされそうな場合は、老齢厚生年金の繰下げ受給を利用する方法もあります。繰下げの効果によって、受け取る年金額を増やすこともできます。現在は最長70歳まで受給開始を遅らせることができ、70歳から受給すると年金を42%増額できます。長生きをすれば、65歳から受け取るよりもトクになります。

●60歳以降のキャリアプランは50代から

人生100年時代といわれ、老後が長くなる中、公的年金の受取り開始年齢が70歳やそれ以上になる可能性があると考えるなら、75歳くらいまでは働く覚悟も必要になるかもしれません。

60歳以降のキャリアプランについては50代から考え、準備もしておく必要があります。定年後は別の仕事をしたいと考える場合も同様です。

種まきの1つが、副業や週末起業です。仕事が終わってからの時間帯や休日に別の仕事をしたり、週末起業では、文字通り週末や祭日、あるいは平日の夜間などを使って起業します。いずれにしても、職場が副業禁止でないことを確認してから始めましょう。

種まきの2つめは、専門職の資格を取っておいて、定年後に事務所を開設するという方法も。社会保険労務士、税理士、行政書士、中小企業診断士、キャリア・コンサルタントをはじめ、さまざまな資格があります。教育訓練給付金を活用するといいでしょう。

他にも、趣味や特技を極め、講師として教える側になって活動するのも一考です。人手不足の状態が続くなら、職種にこだわらなければ再就職には困らないかもしれませんので、ともかく健康を維持することが大事ですね!

社会保障など制度の変化に翻弄されないためにも、70歳以降も月数万円でも労働収入がある状態を作っておくと安心度は高くなるように思います。

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