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マネーコラム

Vol.62

3~5歳児の幼児教育・保育の無償化で教育資金の貯め方は変わる?

2019.03.01

2019年10月から幼児教育・保育の無償化が始まります。その内容を、内閣府の資料(「幼児教育無償化の制度の具体化に向けた方針の概要」)などから整理するとともに、この制度の導入によって教育資金の準備法に何か影響があるのかについても考えてみましょう。

■2019年10月から幼児教育・保育無償化

政府が力を入れる「人づくり改革」の柱の1つとして、2019年10月から「幼児教育・保育の無償化」がスタートします。少子化対策と生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性の面から、高校無償化や高等教育(大学)無償化などと並行して進められてきた幼児教育・保育の無償化ですが、財源として消費税増税分を充てることが決まったことで具体化した形です。

10月からスタートするのは主に3~5歳の無償化で、所得や家庭環境に関係なく無償化されます。0~2歳は住民税非課税世帯を対象とするもので、これはすでに導入されていました。0~2歳の完全無償化は次の段階で行われることになっています。

無償化の対象施設は、幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育(標準的な利用料)です。一方、支援を受けられる「認可外保育施設」には、認可外保育施設のほか、幼稚園の預かり保育、病児保育、地方自治体独自の認証保育施設、ベビーホテル、ベビーシッター、認可外の事業所内保育等のうち、国が定める基準を満たすことが必要です(5年間の猶予期間あり)。また、保育の必要性があると自治体から認定されながら認可施設を利用できない子どもが対象です。

ちなみに、幼児教育無償化には1,532億円が必要で、財源としては、消費税増収分を活用し必要な地方財源を確保することになっています。負担割合は、国が1/2、都道府県が1/4、市町村1/4。ただし、公立施設の場合(幼稚園、保育所、認定こども園)は、市町村等が10/10。初年度(2019年度)のみ全額を国が負担することになっています。

■幼児教育・保育無償化の家計への影響は?

今回の制度導入は、3~5歳の幼児教育・保育無償化がメインで、実際に幼稚園や保育所に通うお子さんがいる世帯にとっては大きな変化となるはずです。

では、今回の幼児教育・保育無償化は個々の家庭にとってどれくらいプラスになるのでしょうか? 幼稚園も保育所も利用料は自治体ごとに異なり、しかも親の年収で違ってきます。また、2人目は半額、3人目は無料といった制度もすでに導入されていました。

表1は東京都新宿区の平成30年度の保育料です。幼稚園や認定こども園はすでに負担額が下がっていて、2人目については年収が1,000万円以下は無料となっています。一方、保育所の費用は幼稚園に比べると負担が大きく、しかも年収が上がると負担も大きくなります。

表1 保育料はいくら?(月額)

仮に、1万5,800円の保育所の保育料が3~5歳の無償化でかからなくなると、3年間の累計で56万8,800円が軽減されることになります。認可保育所に入れず、認可外保育施設の支援として満額の月3万7,000円の補助を受け続けた場合は、133万2,000円の負担が軽減される計算です(3年間ずっと認可外はあまり多くないかもしれません)。

■教育資金の準備は早めに終えよう!

こうした流れの中で、教育資金の準備はどう考えたらいいでしょうか?
そもそも教育資金の準備は、公立中心の進路の場合、最も費用がかさむ大学進学時の費用が中心になります。高校まではその年の家計の中でまかないつつ、受験期から大学進学後の費用の一部を貯蓄等で準備をする考え方です。

「人生100年時代」といわれ、老後資金の準備も手が抜けない時代になっていることから、上記の教育資金を末子が中学を卒業するまでに貯め終えるという目標を立ててみてはいかがでしょう。その後は老後資金の準備にウエイトを置くことができます。例えば、将来の学費として「500万円貯める」という目標を立てたなら、これを15年間で貯め終えるのです。月2万8,000円の積立を続ければ達成できます。

「500万円」が厳しければ、「300万円」など目標額を下げるのも一法です。中学卒業までは児童手当も出るので、それも含めて貯めれば決して難しい額ではないはず。まだ時間があるし…などと思っていると、後で慌てることになりかねません。

貯め方も、安全度が高めの、職場の財形貯蓄や個人向け国債(10年)、学資保険(円建て)などでベースを作るといいでしょう。例えば学資保険も15歳や12歳までなど短期払いも上手に活用するといいですね。「つみたてNISA」などリスクのある商品を組み入れる場合は、1/3までに抑えたいものです。

■おわりに

期待しすぎてはいけないのですが、こうした3~5歳児の幼児教育・保育の無償化に続いて、0~2歳児の無償化も行う予定だと当初の計画にありました。これが実現すると、特に保育園に預けて働く親にとってはさらに負担が軽減されますね。

「ゆとりができた分で早期教育や習い事を」と判断する前に、まずは中長期のお金を俯瞰して見てください。自分たちの老後資金とのバランスなども考えてみてくださいね!

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