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マネーコラム

Vol.66

海外滞在中の病気やケガ、死亡でも生命保険は備えられる?

2019.07.01

仕事や旅行などで海外にいるときに病気やケガで入院・手術をすることもあります。亡くなったり、高度障害になることもないとは限りません。そんなとき、今入っている医療保険や死亡保険は請求できるのでしょうか?

■生命保険は海外でも保障される?

そもそも、日本で入っている医療保険や終身保険、定期保険などは、海外での入院・手術や、死亡・高度障害でも保障されるのでしょうか?

答えはYesです。有効な保険であれば、国内同様、給付金や死亡保険金などが支払われます。ただし、請求の際の必要書類や請求方法などが、国内での入院・手術、死亡・高度障害の場合と一部異なる場合があります。

海外で入院・手術を受けた場合、まずは保険会社へ電話を入れます。その後、現地で診断書などを準備しておいて、請求手続きを行うのが一般的です。

電話は、入院給付金・手術給付金の受取人がかける必要があり、本人か、本人の意識がないなどの状況の場合は、指定代理請求人として指定されている人などが電話することになります。海外にいて保険証券番号がわからなくても、名前・生年月日から保障内容を確認してもらえます。

電話の際に聞かれることとして、次のような点は確認してから電話をしましょう。

<確認される内容>

実際の請求方法としては3つあります。

  • ・帰国後に請求
  • ・海外から請求(日本の親族などを経由して必要書類を提出)
  • ・代理人が請求(日本の三親等以内の親族を代理人として請求・受領を委任。委任通知書の提出が必要)

なお、請求に必要な書類は次の通りです。保険種類や状況などによって異なる場合があるので、請求の際に確認しましょう。

<請求に必要な書類>

■海外で死亡・高度障害になったときの請求は?

死亡保障のある保険に加入している被保険者が、海外滞在中・旅行中に亡くなった場合、まずは、受取人から保険会社へ連絡をして、国内の自宅へ必要書類を送ってもらいます。

連絡を入れると次のような点について聞かれますので、事前に確認してから電話をしましょう。前述のとおり、連絡の際には保険証券番号がわからなくても問題はありません。

<確認される内容>

死亡保険の場合は、基本的に帰国してからの請求となります。事前に連絡をすることで、海外にいる間に徴求しておいた方が良い書類を用意することができます。

実際の請求の際に必要となる書類は次のようなものです。

<請求に必要な書類>

なお、病気や不慮の事故で所定の高度障害状態になった場合については、高度障害保険金の支払い対象となりますが、身体障害状態の詳細な内容を確認する必要があり、帰国後に日本国内の医師が証明した「障害診断書」で請求することになります。
原因が交通事故の場合は警察などの証明、その他の事故の場合は勤務先などの証明や新聞記事などの提出も必要ですので、海外にいる間に入手しておきましょう。

■「海外療養費制度」も考えてみる

実は、日本の公的医療保険には、「海外療養費制度」というしくみもあります。海外赴任中や海外旅行中にケガや病気で海外の病院を受診した場合、公的医療保険で認められている医療費については、請求することで自己負担分以外は給付されるのです。

ただし、基準になるのは国内での医療費です。例えば、海外で虫垂炎で入院・手術をして250万円の治療費がかかり、その金額を現地で支払ってきたとします。日本では虫垂炎は約40万円が平均的な治療費となるため、その3割の約12万円が自己負担分になり、それを引いた7割の約28万円がこの制度から払い戻されます。この制度により、実質の負担は250万円から222万円に軽減されます。

この制度の申請を行うには、現地で「海外診療内容明細書」や「領収明細書」を受取っておく必要があります。さらに、日本語に訳した書類の添付も必要です。請求するためのハードルは高いですが、少しでも軽減されるなら利用したいですね。

■問題は海外の医療費の高さ

海外での入院・手術、死亡・高度障害でも、国内で加入した保険の対象になり、さらには公的な「海外療養費制度」も利用できます。しかし海外での医療費は、非常に高額であるというそもそもの問題があります。

入院・手術となると、国によっては百万円単位でかかる例は少なくありません。実際に、1,000万円を超える請求を受けたケースもあるようです。となると、海外での医療保障や死亡保障としては、今入っている医療保険や死亡保険だけでは十分とは言えない可能性があります。

そのため、外務省の海外安全ホームページの中に「海外旅行保険加入のおすすめ」というページがあり、そこでも強調されていますが、海外へ行くときには海外旅行保険は必須といえます。

海外旅行保険は、旅行の日程に合わせて加入する保険です。海外旅行中の事故・ケガでの診療費や入院費、死亡補償のほか、家族が駆け付けるための渡航費や宿泊費も補償される損害保険です。特約で疾病治療や賠償責任、携行品損害、救援費用等の補償も付けられ、海外滞在中のリスクに備えられます。

日本語で24時間対応するアシスタンスサービスや、保険会社が直接払いをしてくれる提携医療機関を紹介してもらうこともできます。海外へ行く際には、このような海外旅行保険を利用することも大事です。

■おわりに

海外での「もしも」のときは、海外旅行保険のことをまず考えがちですが、医療保険や死亡保険も請求できることを忘れずに、必要書類などをそろえて請求するようにしましょう。

海外滞在中・旅行中の保障や万一の場合の手続きについて、保険会社は「海外渡航のてびき」といったものを作成しているはずです。海外へ行く際には、1度目を通してみるといいでしょう。

【参照】大樹生命「海外渡航のてびき」

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