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マネーコラム

Vol.68

「あげすぎ」にご用心!生前贈与を整理しておこう

2019.09.01

生前贈与が延長されたり、消費増税対策で拡大されたりしています。一方で節税になるから、子供たちが喜ぶからと、「あげすぎ」てはいませんか?

■親にとっては節税、子にとっては助かる生前贈与

親からの生前贈与は、住宅ローンや子どもの教育費などに追われる子世帯からすると、非常にありがたいものです。親世帯にとっても、非課税でできる生前贈与を活用することは、子供や孫に喜んでもらえて、しかも、将来の相続税の節税にもなり、一石二鳥といえます。

まずは、4つの生前贈与について整理してみましょう。

1・暦年贈与

「暦年贈与」とは、1月1日~12月31日までの1年間に受けた贈与には、110万円の基礎控除があるという制度です。課税されるのはこの基礎控除を超えた分ですので、1年間の合計が110万円以下に収まる贈与には贈与税はかかりません。この暦年贈与で子供や孫に贈与することで相続税対策にもなります。

ただし、「毎年、同じ日に、同額を、〇年間贈与する」といった約束をしていたとすると、万が一、税務署の調査が入ったときには、合計分を分割して渡していたとみなされ(連年贈与)、合計額に対して贈与税がかかる可能性がある点は注意しましょう。

2・住宅取得等資金の贈与の特例

自宅を新築、増改築等するための資金を、父母や祖父母など直系尊属から贈与された場合、要件を満たせば、限度額までは非課税で受け取れるという特例があります。2019年4月~2020年3月31日までに契約し、消費税10%が適用される物件は2,500万円(省エネ等住宅3,000万円)までは非課税です。これは、2019年10月の消費税増税対策の1つで、限度額は過去最大になっています。

贈与を受ける子・孫は1月1日時点で20歳以上、床面積が50㎡以上240㎡以下で、床面積の1/2以上が受贈者の居住用であることなど、条件があるので確認しましょう。

図表 住宅取得等資金の贈与の特例

3・教育資金の一括贈与

30歳未満の子・孫への教育資金の一括贈与は、1,500万円までなら非課税で行うことができます。対象となる教育資金は、学校に納める入学金や授業料、給食費や修学旅行の費用のほか、塾やお稽古ごとなど学校以外の支出も含まれます(500万円まで)。

期限が2021年3月末まで延長されたほか、2019年度から下記の条件が変わりました。

  • ・贈与を受ける子・孫の前年の合計所得額は1,000万円以下
  • ・23歳以上の子・孫はスキルアップにつながる講座や大学、大学院などに限定。趣味やスポーツなどの費用は対象外
  • ・原則、子・孫が30歳になった時点の残額は贈与税の対象だが、23歳以上の子・孫に贈与した後に父母や祖父母が亡くなった場合、死亡前3年間の贈与分の残額は相続財産として課税

4・結婚・子育て資金の一括贈与

20歳以上50歳未満の子・孫への結婚・子育て資金の一括贈与は、1,000万円まで非課税です(結婚資金は300万円まで)。対象となる結婚資金は、挙式や結納、新居を借りる資金、引越し費用などで、子育て資金は、妊娠・出産や不妊治療費、産後ケア費、小学校入学前の子の医療費や保育料・幼稚園代などです。

期限は2021年3月末まで。2019年4月からは、贈与を受ける子・孫の前年の合計所得額は1,000万円以下という条件が追加されました。贈与者が亡くなると、残額は相続税の対象になります。また、子・孫が50歳になった時点で残額があるときは贈与税の対象になります。

■生前贈与をする前にチェック!

親世代から子・孫世代への生前贈与を4つ見てきましたが、利用できる制度を検討する前に、次の点をチェックしてみましょう。

老後資金は足りる?

必要な老後資金は手元に残しておかなくてはなりません。できるなら100歳まで持続できるような金額を残しておきましょう。下記の簡易試算式でおおまかに確認できます。

必要な老後資金の目安

介護資金は確保している?

有料老人ホームに入るには、入居金や月々の費用で合計数千万円のお金が必要な場合もあります。ちなみに、過去3年間に介護経験のある人へのアンケートから試算した介護にかかる費用は総額約500万円です。超高齢化が進むため、今後は自己負担額も増えることも予想できます。

受けたい介護にかかる介護資金は自分で準備をしておく必要があります。子供たちに生前贈与をすることで、「将来、要介護になったときも面倒を見てもらえるだろう」などと過度な期待を抱くより、自力で資金を確保しておくことが大事です。

介護でかかる費用

■おわりに

今、子・孫の喜ぶ顔見たさに、ムリをして生前贈与をしているとしたら、ちょっとペースを下げてみてはどうでしょう。ご自身の老後資金・介護資金の準備もしっかりしておく必要があります。

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