Vol.82
高額介護サービス費制度が2020年8月から一部変更に。どのような影響がある?
2020.11.01
2025年には、日本人の5人に1人が75歳以上という時代に突入し、首都圏を中心に深刻な介護施設の不足に陥ると予測されています。在宅介護が中心の時代になる中、在宅介護の費用に関わる「高額介護サービス費」についても知っておきましょう。
■介護サービスでかかる費用は?
公的介護保険では、要介護認定を受けると介護サービスを受けることができます。介護サービスには要介護度ごとに利用限度額が決められており、この利用限度額の範囲内で介護サービスを受ける場合は、所得に応じた自己負担分(1~3割)で済みます。
例えば、要介護3の利用限度額は月270,480円なので、限度額までサービスを利用したときの利用者負担は1割負担で27,048円、3割負担なら81,144円です(表1)。
実際に介護サービスを受ける際には、利用者の希望に応じたケアプランが組まれます。例えば要介護3の場合、上限額の範囲で受けられる介護サービスの目安は次の通りです。
介護者の状況などによっては、上限額を超えたケアプランになる場合もありますが、上限額を超えた分は10割負担となります。
■高額介護サービス費とは?
こうした介護サービスの費用負担を軽減してくれるしくみが「高額介護サービス費」です。要介護者やその家族の負担を軽減するための制度で、公的介護保険の自己負担額(1~3割負担分)が1カ月の限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻されます。対象となるのは毎月1日から月末までの自己負担分です。また、同世帯に複数のサービス利用者がいる場合は、世帯で合算することができます。
ただし、次のような費用は対象外となります。
- ・施設における食事・居住費・滞在費・日常生活費
- ・福祉用具の購入費や住宅改修費の自己負担分
- ・1~3割の自己負担分を超えて利用した介護保険サービス分など、公的介護保険の給付外のサービス
高額介護サービス費の自己負担上限額は、現役並み所得者か一般か、住民税非課税者かで、世帯の上限額が異なります。2020年8月以降は、一般世帯では月44,400円が上限となっています。この限度額は原則、毎年見直されています。
■時限措置終了でどのような影響が?
表2中にも記載しましたが、2020年8月の変更の際に「1割負担者のみの世帯の年間上限額446,400円(月額37,200円)」という「時限措置」が終了しました。
それによって、高額介護サービス費が毎月適用されていた1割負担の世帯にとっては、年間で86,000円の負担増になりました。軽減は時限措置だったとはいえ、家計に大きな影響がありそうです。
(44,400円×12カ月-446,400=86,400円)
■今後見込まれる高額介護サービス費の負担増
表2を改めて見ていただくと、現役並み所得者も一般も同じく世帯で44,400円の高額介護サービス費の限度額が適用されています。そのため、現時点では、公的介護保険を利用している1割負担の人も、2割・3割負担の人も、いずれも月間の負担額の上限は世帯で44,400円となっています。
予想ではありますが、「応能負担」の原則により、来年以降の見直しで、公的介護保険の2割・3割負担の人の上限額は上がる可能性があると考えられます。そのため、2割・3割負担の人は、実質的な負担が上がる可能性があることを覚悟して、しっかりと備えておく必要がありそうです。
なお、介護への備えの一環として、大樹生命は、2020年10月1日よりお客さま向け新サービス「大樹の認知症サポートサービス」の提供を開始しました。
本サービスは、認知症予防のための認知機能チェックや各種情報提供等を通して、認知症予防・介護・必要な資金への備えについて、様々なサポートを行うものです。
詳しくは、本サービスの特設サイトをご確認ください。
(執筆者:豊田眞弓)
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