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マネーコラム

Vol.96

支給期間が「通算1年6か月」に延長 傷病手当金の使い勝手が向上

2022.01.01

企業などに勤めている人が病気やけがで働けなくなったときに受給できる公的保障制度があります。そのひとつが「傷病手当金」です。ただし、自分で申請しないと受給できないため、制度を知らないと受けとれませんので、ぜひ知っておいてほしいと思います。

傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やけがのために会社を休み、十分な報酬を受けられない場合に支給されます。健康保険とは、中小企業で働く従業員やその家族などが加入する協会けんぽ(全国健康保険協会)や、個別企業で組織された健康保険組合、公務員や私立学校教職員が加入する共済組合などです。

①業務外の事由による病気やけがの療養のための休養、②仕事に就くことができない、③連続する3日間を含む4日以上仕事に就けなかった、④休業期間について給与の支払いがない※1。以上の4条件を満たした場合が対象となります。

支給される金額は、下に示した計算式のとおりで、標準報酬月額(支給開始前12か月の平均)の3分の2。会社から支払われている給与(各種手当を含む)のざっと3分の2の水準の額が保障されると考えてよいでしょう。正確な標準報酬月額を知りたい場合は、以前ご紹介した「ねんきん定期便」を見れば、記載されています。

支給期間は最長1年6か月。この「1年6か月」に関して、この1月から法改正による制度変更が施行されました。従来は、病気治療などのための欠勤と出勤を繰り返した場合、出勤期間も含めて最長1年6か月しか支給されませんでしたが、制度変更により、欠勤期間だけを通算して1年6か月に改められました※2。

がんの治療などで入退院を繰り返す人などにとってより優しく、使いやすい制度になったといえるでしょう。

  • ※1給与の支払いがあっても傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
  • ※2共済組合は以前から欠勤期間だけを通算。

傷病手当金の支給期間(2022年1月からルールが変更に)

かづな先生の今月のおさらい

会社員や公務員が仕事外の病気やけがで働けなくなり、収入が一定以上減ったときは公的保障である「傷病手当金」から給付があります。傷病手当金は毎月保険料を支払っている健康保険から支払われ、会社も本人も新たな負担はありませんので、体調が悪い場合は無理せず病院で診察してもらい、該当する場合は申請しましょう。一方、個人事業主や国民健康保険の加入者への給付はありませんので、働けなくなったときの経済的リスクに備えておきたいものです。

田中 香津奈

田中 香津奈

株式会社フェリーチェプラン代表取締役。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。テレビ・ラジオ出演、雑誌への執筆、講演・セミナーなど多彩な活動を展開。

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