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マネーコラム

Vol.104

法務局に預けて安心
自筆遺言作成のハードルが低下

2022.09.01

民法で定められた遺言(普通の方式による遺言)には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類があります。①はその名のとおり自筆による遺言、②は公証人が本人から内容を聞き取るなどして作成する遺言、③は本人以外に内容を秘密にすることができる遺言です。このうち③は利用件数が極めて少なく、①か②が一般的な形式といえます。

年間10万件余(2021年)の作成実績がある②は、専門家である公証人が作成するため、方式の不備で遺言が無効になるおそれがありません。公証役場で保管するため、紛失などのリスクもなく、安全・確実な遺言の方法といえます。ただし費用面では数万円単位の負担が必要です。

一方の①は、費用はかからないものの、内容や方式に不備があって無効になったり、自宅で保管している間に紛失したりするリスクがありました。こうしたデメリットを補完するために「自筆証書遺言書保管制度」が2020年に始まりました。

自筆の遺言を全国の法務局で保管してくれる制度で、遺言の方式などについて外形的な確認もしてくれます。手数料は1件3900円。方式の不備や紛失などのリスクを防いでくれる制度です。遺言者は預けた遺言を閲覧したり、保管の申請を撤回したりすることができます。

遺言者があらかじめ希望すれば、遺言者の死亡が確認できた時点で、相続人などのうちの1人に遺言書が保管されていることを知らせることが可能です。遺言者が亡くなり相続が開始すると、相続人は全国の法務局で遺言内容を閲覧でき、また相続人のうちの誰かが閲覧などをすると、他の相続人にも遺言書が保管されていることを伝えるお知らせが届きます。家庭裁判所による検認という手続きが不要になることもメリットです。

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民法で定められた遺言は上記のとおり複数のタイプがありますが、優劣の差はなく、法的効果は変わりません。しかし、改ざんや紛失のおそれは避けたいもの。そこで検討したいのが、法務局で保管してもらえる「自筆証書遺言書保管制度」です。本人が申請する必要があるので、法務局へ出向くことができるのが大前提。また、内容の有効性確認はないので、相続内容が複雑だったり、内容の正当性に自信がなかったりする場合は、専門家に相談しながら作成しましょう。

田中 香津奈

田中 香津奈

株式会社フェリーチェプラン代表取締役。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。テレビ・ラジオ出演、雑誌への執筆、講演・セミナーなど多彩な活動を展開。

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