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マネーコラム

Vol.112

認知症への備え 成年後見制度でお金の管理を

2023.5.01

厚生労働省の「2021年簡易生命表」によると、同年の平均寿命は男性が81.47年、女性が87.57年で、前年より微減でしたが、依然世界トップクラスの長寿国です。65歳以上の人の割合を示す高齢化率も29.1%(2022年9月15日時点)で、世界トップ。認知症を発症する人の数も増えており、2012年に462万人だった認知症有病者が2025年には約700万人に増えるという推計もあります※。

高齢の家族が認知症を患ったときに心配なのが、現金をはじめとした財産の管理。とりわけ離れて暮らしている老親がいる人は不安が大きいことでしょう。

認知症をはじめとした病気や障がいで判断能力が不十分になった人の財産管理や契約などの法律行為を法的に支援し、悪質商法などの被害から保護する制度が成年後見制度です。法定後見と任意後見の2つのタイプがあります。

法定後見は本人の判断能力が不十分になった後に家庭裁判所に選任された成年後見人などが本人を支援する制度。本人の判断能力の程度に応じて、「後見」、「保佐」、「補助」の3つに分かれ、成年後見人などが一定の範囲内で本人の代理をしたり、本人が締結した契約を取り消したりすることができます。判断能力の喪失の程度がもっとも重い「後見」の場合、財産に関するすべての法律行為が代理権の対象です。

申し立てができるのは本人や配偶者、四親等内の親族など。申し立てる家族がいない場合は市町村長が申し立てることもできます。

一方の任意後見は本人が十分な判断能力を有する時点で、あらかじめ任意後見人となる人やその権限などを公正証書による契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に任意後見人が、委任された事務を本人に代わって行う制度です。

  • ※ 厚生労働省「認知症の人の将来推計について」より。

2つのタイプがある成年後見制度

かづな先生の今月のおさらい

成年後見制度は2000年4月、介護保険制度と同時に施行されましたが、まだ十分に浸透していません。当初は親族などが大半でしたが、2022年には親族以外の専門職後見人が約8割を占めるようになりました。利用には申立費用以外に毎月の報酬が財産額に応じて2万~6万円ほどかかりますが、国も利用促進に取り組み、市町村の助成が適用になる場合もあります。長生きしても、介護になっても安心して生きていくために成年後見制度があることを知っておきましょう。

田中 香津奈

田中 香津奈

株式会社フェリーチェプラン代表取締役。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。テレビ・ラジオ出演、雑誌への執筆、講演・セミナーなど多彩な活動を展開。

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