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健康コラム

Vol.22

離れて暮らす親の健康とお金を守る

2016.04.01

離れて暮らす親の健康とお金を守る

核家族化が進み、親と離れて暮らしている人も多いでしょう。
筆者もそのひとりです。育児と仕事の両立をなんとか必死でこなした後は、看病・介護と仕事の両立という問題が待ち構えているかもしれません。
今回は、看病・介護と仕事の両立がテーマです。
離れて暮らす親に健康上の問題が起こったら……
ある日突然訪れるかもしれない状況に備えましょう。

■介護離職

子どもを保育園に預けてお勤めしていた頃、職場の電話のナンバーディスプレイに保育園の電話番号が表示されるとヒヤッとしたものです。
たいていは「熱が出たので迎えに来てください」というものでしたが、徐々に抵抗力がつき、呼び出し電話も少なくなってきました。
先日、親を施設に預けている知人が同じようなことを言っていました。施設の電話番号が表示されるとヒヤッとすると。子どもは年数が経つにつれ、熱も出にくくなるし、いろいろなことが自力でできるようになります。
一方で、高齢の親は、年々病気をしやすくなるし、これまで自力でできていたことができなくなるかもしれません。看病・介護と仕事が両立できず、仕事をやめざるを得ないケースも。

■介護休業と介護休暇

そこで、仕事をやめずに親を介護するために整備された二つの制度をご紹介します。
介護休業と介護休暇。いずれも育児介護休業法に基づいて定められた制度ですが、ネーミングが似ていて紛らわしいので整理しましょう。

まず、介護休業とは、家族に介護が必要となった場合、最大93日間の休業を雇用者に申請することが認められているというもの。 介護休業開始2週間前までに、書面で、事業主に申し出る必要があります。書面のほか、事業主が認めれば、FAXまたは電子メールでも構いません。

一方、介護休暇とは、家族に介護が必要となった場合、その介護や世話(買い物や通院の付き添い、事務手続き代行等の間接的な世話も含む)を行うために取得できる単発の休暇のこと。 介護が必要な家族1人につき、1年に5日取得でき、介護が必要な家族が2人以上になると5日追加されます。介護休暇は口頭でも申請でき、休暇当日の申請も可。

介護休業と介護休暇の違いのまとめ

介護休業で賃金が著しく低下した人には介護休業給付金が支払われます。
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×40%相当額
休業開始時賃金月額証明書に賃金台帳や出勤簿などを添付し、事業主もしくは被保険者がハローワークに提出することで支給を受けることができます。

ほかにも、お勤めの会社独自の制度がある場合もありますので、一度チェックしてみてください。

■遠距離介護の交通費

介護休業などを利用して休みが取れたとしても、遠距離介護のために帰省するとなると移動が大変です。

先日、親の介護のために週に2回、奈良から名古屋へ通っているという50代くらいの女性と電車の座席が隣になりました。「介護のための交通費と食費が生活費を圧迫している」と話してくれました。親の家で作ると食材に無駄が出るので、家で夫や子どもの食事と一緒に、多めに作って親の家へ届けているのだそうです。
交通費に関しては、「鉄道には介護割引がないので回数券を買っている」とのこと。

ちなみに、飛行機では、一定の利用条件のもと、介護割引があります。
日本を代表する2大航空会社の日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の利用条件を見てみましょう。

<JALの「介護帰省割引」>
・要介護、要支援被認定者の「二親等以内の親族」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」であること。
・介護帰省割引のお客さま情報登録済みのJALカードまたはJALマイレージバンクカードがあること。

<ANAの「介護割引」>
・要介護、要支援被認定者の「二親等以内の親族」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」で、満12歳以上であること。
・介護割引情報登録済みのANAマイレージクラブカードがあること。

両社とも最大約40%の割引率とかなりお得ですので、状況によっては利用したいですね。

■ライフプラン表に別居の両親が入っていますか?

このように、看病・介護に付随するお金はいろいろとあります。
子どもが仕事をやめずに働き続けることは、ひいては、離れて暮らす親の健康とお金を守ることにもつながるのです。

みなさんはライフプラン表を作ったことがありますか?
ライフプラン表は家族の未来の生活設計図です。
ライフプラン表の家族の欄には同居している家族しか書かない人が多いですが、ぜひ、離れて暮らしている親も記入してみてください。
子どもの学費や自分たちの老後のお金はプランニングできていたとしても、親の看病・介護に関しては問題に直面してから考え始める人が多いように思います。 看病・介護の要不要やその程度はわかりませんが、「子どもが大学受験の頃に親は○歳なのかぁ」などとイメージを持っておくだけでも違います。
いざ介護が必要になったときはどうするのか、自分の勤め先は独自の制度があるのか、家族・親戚でどのように分担して動くのか、普段から話し合っておくことが大切です。
そして、地域の介護サービスについて情報収集したり、親元のご近所さんと良好な関係を築いたりして、頼れるところは頼れるようにすることも、仕事と両立するうえで大切なこと。介護する家族の健康を守るためにも、家族だけで抱え込まないでください。

ファイナンシャルプランナー 萩原 有紀

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