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健康コラム

Vol.23

貧乏ゆすりは金持ちゆすり?!

2016.05.01

貧乏ゆすりは金持ちゆすり?!

「貧乏ゆすり」とは、広辞苑(第六版)によると、「すわっている時、膝を絶えずこまかくゆすること」。
会議やレストランの席で、貧乏ゆすりをする人が近くにいたら、なんだかこちらまで落ち着かない気分になります。
一般的にお行儀が良くないとされている貧乏ゆすりですが、近年、健康に良いということで注目を集めているのをご存知ですか?

■貧乏ゆすりをすると貧乏になる?!

 お行儀が良くないだけでなく、「貧乏ゆすりをすると貧乏になる」ともいわれます。諸外国でも足をゆするのはお行儀が良くないとされていますが、「貧乏」という概念が加わるのは日本だけ。これはどうしてなのでしょう?
 貧乏ゆすりという言葉は、江戸時代の書物や、俳句や川柳に登場します。この頃に、足をゆすると貧乏神に取り憑かれるという迷信が生まれたそうです。名前の由来は諸説ありますが、着るものも食べるものもままならない貧乏な人が、寒さや飢えからブルブルと小刻みに震えている様子から命名されたという説が有力のようです。

■貧乏ゆすりが多い女性は死亡リスクが低い?!

 このように江戸時代から続く根強いマイナスイメージを覆したのが、2015年にアメリカの医学会誌「American Journal of Preventive Medicine」(2015年9月23日号)に掲載されたロンドン大学などの研究チームの報告です。なんと、貧乏ゆすりが多い女性は死亡リスクが低くなるというのです。

 イギリスでは、長時間座っているオフィスワーカーの健康問題に焦点を当て、これまで対象を変えて様々な調査が行われてきました。長時間座ることが死亡リスクを高めるということが知られていましたが、今回の研究では、貧乏ゆすりの多い女性は、長時間座ることに伴う死亡リスクを下げる可能性があるということが判ったのです。

 「第二の心臓」とも呼ばれている足の筋肉を動かすことで、血液を全身に巡らせることができ、死亡リスクを下げる可能性があるというもの。今回は女性対象の調査でしたが、このような身体の仕組みは男性にも共通するかもしれません。

「貧乏ゆすり」は、実は良く知られた病気にも有効であるとされています。

■貧乏ゆすりでエコノミークラス症候群を予防

エコノミークラス症候群(別名ロングフライト血栓症)とは、狭い飛行機で長時間座っていた乗客が、飛行機を降りた直後に呼吸困難などで倒れる病気のこと。足を動かさずに長時間座ることで、足の静脈にできた血の塊(血栓)が、足を動かした途端に血流に乗って肺に飛び、肺血栓塞栓症を引き起こすというメカニズムです。この病気を防ぐためにも貧乏ゆすりが有効とされています。

 実際、航空会社も、エコノミークラス症候群予防のための足の運動について、イラストや動画で説明しています。ただし、この場合、一般的な貧乏ゆすりのようにこまかくゆするのではなく、もう少しゆっくりとした運動です。

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 当然のことながら、エコノミークラス症候群が起こりうる場所は飛行機だけではありません。渋滞中の車中も同じ状況にあります。このゴールデンウィークに車で遠出する方も、この予防運動を参考にしてみてください。

■貧乏ゆすりで集中力アップ

健康に良いだけではありません。貧乏ゆすりは集中力をアップさせます。
 筆者は子どもの頃から親に「貧乏ゆすりはお行儀が悪い」と注意され続けたので、家の外では足をじっとしていられるようになりました。しかし、こういった原稿を書くには集中力が必要になるため、実は今この原稿を書いている筆者の足はじっとしていません。

 長時間じっと座っている状態は、血液を足の方へ下げやすくします。つまり、頭に血液が上がりにくいということなのです。頭を使って集中するためには、頭に血液が必要です。そこで、貧乏ゆすりで血液循環を助けてあげることで、集中力が増すというわけです。
 健康に良いことから医療費を下げる効果が期待できるだけでなく、仕事や勉強の効率が上がれば、収入アップにもつながります。
 もしかしたら、貧乏ゆすりが金持ちゆすりに化けるかもしれません。

 ただし、貧乏ゆすりが人を不快な気持ちにさせてしまいがちなことを忘れてはいけません。それが原因で、会社での評価を下げたり、周囲の人に嫌な思いをさせたりしたら、本当に貧乏神に取り憑かれるかもしれません。時と場所を選んで貧乏ゆすりを実践しましょう。

ファイナンシャルプランナー 萩原 有紀

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