Vol.24
心身とお家計に効く和食
2016.06.01
2013年、「和食」が食の世界遺産であるユネスコ無形文化遺産に登録されてから、和食が注目されています。
ただ残念なことに、外国人の和食への関心が高まる一方で、私たち日本人の食卓からは和食が消えつつあるのが現状です。
和食で心身を豊かに保ちたいと考える私としては、放っておけない事態。ということで、今回は和食が心身や家計に与える影響について考えてみます。
■和食って何?
まず和食とは何かについてみてみましょう。
農林水産省のホームページやリーフレットに記載されている「『和食』の4つの特徴」が参考になるので表にまとめました。
これによると、ユネスコに申請し認められた和食というのは「食に関する慣習」であり、「食文化」です。たとえば、「ちらし寿司」という料理が登録されたのではなく、「ひな祭りにちらし寿司を食べる文化」が登録されたということです。
■食事で病気を防ぐ
和食が海外からも注目を集めているのは、やはり健康的だからでしょう。
前述の和食の4つの特徴②にもあるように、和食は長寿や肥満防止に役立っています。「だし」などの「うま味」は食事の満足度を上げ、減塩効果も期待できるのです。
みなさんは「食養生」という言葉を聞いたことがありますか?東洋医学の言葉で「食事を通して健康を維持すること」をいいます。
似たような意味で、「医食同源」という言葉もあります。日ごろの食事こそが病気を防ぐ良薬となるのです。
■最も長生きする職業は?
次に、食事と健康について、少し違った角度から見てみましょう。
1980年代と古い研究ですが、郡山女子大学の森一教授(研究当時は福島県立医科大学教授)らの「職業と寿命の研究」という興味深い研究があります。
その中の「1980~82年における10種の職業集団の平均死亡年齢と死因に関する調査」(民族衛生51巻144-145頁)によると、最も長生きする職業は宗教家(僧侶)でした。その理由として、森教授は、食生活と精神的ゆとりを挙げています。
僧侶の食事というのは、玄米などの穀類全粒や野菜、発酵食品を中心としたもの。
これら和食の代表食材を腹八分目に食べるという食生活が長寿の秘訣だとされます。
僧侶のレシピ本「お寺ごはん」が人気なのも納得です。
■和食のおすすめポイント3つ
和食にはいいことがたくさんありますが、ここでは筆者のおすすめポイントを3つだけお伝えします。
1つ目:発酵食品が多いこと
僧侶の食生活の特徴として、発酵食品を挙げましたが、和食に発酵食品は欠かせません。
日本の気候風土の影響により、納豆や漬物、味噌、醤油などの発酵食品は、古くは縄文時代から存在したと考えられています。
当時の人たちは保存が主目的だったかもしれませんが、発酵により、栄養成分を増したり、免疫力を高めたりする効果も同時に手に入れることができます。
2つ目:一汁三菜の献立スタイル
前述の和食の4つの特徴②に出てくる「一汁三菜」というのは、ご飯に汁もの、おかず3品(主菜1品、副菜2品)で構成された和食の賢い献立スタイルのこと。
ご飯でエネルギー源となる炭水化物を、汁もので水分を、そして、3品のおかずでその他の栄養をバランスよく摂れるよう考えられた和食の知恵です。
3つ目:地域や家族の絆を深める
地元の新鮮な食材を活かすということも大切な和食の精神です。
昔から、「四里四方に病なし」といいますが、これは、身近な地域で採れる食材は身体に馴染むため病気になりにくいという意味です。
地産地消、つまり身近な地域で採れる食材(地産)を食べること(地消)は、地域の活性化やその土地の食文化の継承にも一役買っています。
また、和食の4つの特徴④でも紹介したように、日本人は様々な行事ごとに食を通して地域や家族の絆を深めてきました。
地域や家族との繋がりは、精神的安定をもたらします。
和食が心身に効くというお話をしましたが、家計にも効くでしょう。
なぜなら心身が健康だとバリバリ働けるし医療費が少なくすむからです。
自分の家計だけでなく、国の医療費削減にも効果があるのではないでしょうか。
団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達する2025年に、介護費や医療費などの急増が懸念されています。
いわゆる「2025年問題」です。
そのような危機に瀕している国であるからこそ、和食を見つめ直し、和食を食卓に取り戻して健康でいられるよう心がけていきたいものです。
ファイナンシャルプランナー 萩原 有紀
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