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健康コラム

Vol.37

夏の食中毒から身を守る方法

2017.07.01

いよいよ7月。毎日暑いですね。湿度や気温が高くなると心配されるのが食中毒。7月頃から9月頃にかけて食中毒はピークを迎えます。このシーズンはレジャーやイベントが盛りだくさん。そんな楽しいシーズンに食中毒になってしまっては大変です。
そこで、今回は、食中毒の基本的知識と、食中毒から身を守る方法についてお伝えします。

1.食中毒の定義と分類

食中毒とは、食品に起因する下痢、腹痛、発熱、嘔吐などの症状の総称で、原因となる物質によって分類されます。

食中毒の分類

2.食中毒の発生状況

厚生労働省の食中毒統計資料を見ると、昨年2016年の1年間で、食中毒は1,139件(患者は20,252人、うち死者14人)報告されています。しかし、これは、医者が食中毒だと診断し、保健所に報告があった数なので、実際はもっと多くの人が食中毒になっていると思われます。
食中毒の事件数は、細菌性、ウイルス性、寄生虫、自然毒の順に多く、2016年の統計では、細菌性が約4割、ウイルス性が約3割を占めます。

また、食中毒の月別発生状況を見ると、季節と深い関係があることがわかります。
細菌性食中毒の発生事件数は7月と8月がピークなのに対して、ウイルス性食中毒の発生事件数のピークは12月と1月。一方、自然毒による食中毒については、有毒植物は春、毒きのこは秋に多くなります。

図表:厚生労働省の食中毒統計資料(2016年)をもとに筆者作成

3.夏に気をつけたい食中毒

細菌性食中毒がピークを迎えるこの時期に、代表的な食中毒の原因となる物質の知識と、家庭における食中毒予防法を知っておきましょう。

①カンピロバクター

日本で発生している細菌性食中毒の中で最も多いのがカンピロバクター食中毒です。
カンピロバクターは牛や鶏などの家畜や、犬や猫などのペットが保菌し、直接的あるいは間接的に人に感染します。
潜伏期間が2?5日と長いので原因不明となることがありますが、肉類の中でも鶏肉による事例が多いようです。
主な症状は下痢・腹痛・発熱等の胃腸炎症状。胃腸炎症状が治癒した数週間後にギランバレー症候群という自己免疫性末梢神経疾患(手指や四肢のしびれ、震え等)を発症することも。
[カンピロバクターの予防法]
・食肉を十分に加熱調理する
・食肉を扱うときは他の食品と調理器具や容器を分ける
・食肉を扱った後は十分に手を洗ってから他の食品を扱う
・食肉に触れた調理器具等は使用後洗浄・殺菌を行う

②黄色ブドウ球菌

健康な人の皮膚や鼻粘膜、咽頭等に常在している身近な菌です。皮膚の化膿巣(傷)も感染源のひとつ。
さまざまな食べ物の中で増殖し、エンテロトキシンという毒素を出します。日本では米飯や和食折詰弁当等による事例が多く報告されているそうです。感染すると、1?5時間ほどで発症し、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢等の症状を引き起こします。
エンテロトキシンは熱に強く、加熱しても毒性がなくなりません。予防するには、食品内での菌の増殖を防ぐことが大事です。
[黄色ブドウ球菌の予防法]
・手指に傷がある人は調理をしない
・調理の前にはしっかりと手を洗う
・食品は10℃以下に冷蔵保存する
・調理後は速やかに食べる

③アニサキス

生の魚介類に付いている寄生虫です。9月頃に最も多く見られます。
細菌ではありませんが、近年急増しており、注意が必要です。
厚生労働省によると、アニサキス食中毒報告件数は、2007年に6件だったのが、2016年には124件と約10年で20倍以上に増加。食中毒の原因としては、ノロウイルスとカンピロバクター菌に次いで3番目に多いという結果に。
また、アニサキスは、サバに付いていることが多く、シメサバによる食中毒報告もあることから、酢で処理しても予防できないことがわかります。
[アニサキスの予防法]
・目視で確認して見つけたら除去する
・60℃以上で加熱する
・マイナス20℃以下で24時間以上冷凍する

その他、食中毒の原因に応じた予防法について知りたい場合は、厚生労働省のホームページ を参考にしてください。
厚生労働省は、食中毒予防3原則「付けない・増やさない・やっつける」を提唱し、そのホームページ上で食中毒予防に関するさまざまな情報を発信しています。

4.食中毒に負けないカラダ作り

さて、これまでお伝えしていた予防策は、主に家庭におけるものですが、実は、食中毒は家庭よりも飲食店で多く発生します。
厚生労働省の昨年の原因施設別食中毒発生状況によると、家庭における食中毒は全体の約1割程度であるところ、飲食店における食中毒は全体の7割近くにものぼります。
そこで、最後に、家庭でも飲食店でも役立つ食中毒予防のヒントをお伝えします。

同じものを同じだけ食べても食中毒になる人とならない人、症状が重い人と軽い人がいるのはなぜだと思いますか?
その差は免疫力の差!
細菌性食中毒のピークを迎えるにあたって、免疫力を保つ生活を心がけることも、食中毒予防策のひとつなのです。 免疫力を保つためにも、ストレスをコントロールし、バランスの良い食事と良質な睡眠を心がけ、体を冷やさないようにしましょう。 ストレスコントロール方法としては、旅行もおすすめです。夏季休暇を利用して自分の健康のために旅行してみてはいかがでしょう? 旅行がストレス軽減に役立つということを書いた健康のための旅行とその備えもぜひ合わせてご覧ください。

<参考図書>
「図解 食品衛生学 第5版 食べ物と健康、食の安全性」2016年、講談社

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