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健康コラム

Vol.39

救急の日に考える救急車のお作法

2017.09.01

9月9日は、「きゅう(9)きゅう(9)」の語呂合わせから「救急の日」とされています。救急医療について理解と認識を深めることを目的として、1982年に厚生労働省が制定しました。
今年の夏も猛暑により熱中症で救急搬送される人が多くいました。救急搬送に欠かせないのが救急車。今回は、救急の日をきっかけに、救急車のお作法についてお伝えしたいと思います。

■救急車のこと知っていますか?

救急車とは、「当座の医療具・薬品をそなえ、事故による負傷者や急病人などを収容して急速に医療機関に輸送する自動車」のことをいいます(広辞苑第六版より)。
119番通報で駆けつけてくれる救急車は、地方公共団体(消防)が所有するもので、乗っているのは救急隊員として訓練を受けた消防士。中には、救急救命士という国家資格を取得し、高度な救命処置を行える隊員もいます。
その他、主に患者の転院搬送目的で使用される病院救急車(病院などの医療機関が所有する救急車)や、自衛隊や空港が所有する救急車もあります。
なお、近年増えてきている民間救急車(民間の事業者が緊急を要しない患者を搬送する搬送用自動車)は、有料で、緊急走行はできません。

■救急車で運ばれているのはどんな人?

ここからは119番通報で駆けつけてくれる救急車に限って話を進めます。
総務省消防庁が公表している「平成28年版 救助の現況」によると、平成27年中の救急搬送の内訳を見ると、疾病による急病が63.6%と過半数を占め、不慮の事故である一般負傷(14.8%)、交通事故(8.3%)と続きます。
東京消防庁の発表によると、昨年平成28年中の救急出場件数が過去最多を更新したとのことですが、救急搬送された人の半数以上が入院を要さない「軽症」と判断されています。もちろん、重症かもしれないと思って診断を受けたら軽症だったというケースもあるでしょうが、「タクシー代がかかるから」とか「救急車で行けば優先的に診てもらえると思った」などという理由で救急車が呼ばれたケースも報告されています(東京消防庁ホームページより)。
救急車にも救急隊員にも限りがあります。緊急性がなく、自力で病院に行ける場合は、救急車以外の交通機関等を利用しましょう。交通手段がない場合は、前述した民間救急車も選択肢のひとつかもしれません。

■救急医療のしくみについて

救急医療とは、事故や急病による傷病者に対して行う医療のこと。日本の救急医療体制は、厚生労働省が有識者の協力を得て整備しており、下表のように、医療機関を重症度に応じて三段階に分けています。救急業務に協力する医療施設が手を挙げ、都道府県知事が審査・告示するしくみです。

日本の救急医療体制

救急車の出番は、このうち二次救急と三次救急ということになります。

■救急車がタダなのも今のうち?!

現在のところ、日本では救急車の利用は無料です。税金でまかなわれているからです。
今後も、高齢者人口や一人暮らし世帯の増加が続き、救急車の需要が増えれば、救急車の有料化もしくは一部有料化もあり得るかもしれません。
実は、世界的にみて、救急車が有料の国は珍しくありません。
外務省のホームページを参考に、海外の救急車事情をいくつか紹介します。

①アメリカ(ニューヨーク)

救急車は全て有料で、費用は600ドルほど。病院の指定はできません。

②中国(広州市)

救急車の費用は前払いで、最低料金は121元。救急車の設備や医療関係者の同乗などで金額が数倍から数十倍となることも。

③フランス

救急車の費用は、基本料金(約60ユーロ)に移送距離料金(約2ユーロ毎キロメートル)が加算されます。フランスの救急車には医師が同乗しており、救急車内で必要な治療を開始することが可能です。

いかがでしたか?
日本の救急車にも、車両購入費やメンテナンス費、人件費などがかかっています。費用負担する自治体によって金額は異なりますが、救急車を1回出場させるのにかかる費用は4万円以上といわれています。
限りある社会資源を大切に使うために、私たち利用者ができることはどんなことでしょうか?

■救急車を呼ぶ前に

軽症の場合は救急車を呼ばず、なるべく近くのかかりつけ医などで診てもらうのがよいとはいうものの、軽症かどうか、救急車が必要かどうかの判断は難しいケースもあります。特に、子どもの場合は症状が急に進む場合があるので心配です。
判断に迷ったときは、お住いの都道府県や市町村にある救急相談窓口が利用できます。

緊急相談窓口

ただ、この相談窓口に電話をしたけれど、なかなかつながらないという声も聞きます。
そこでおすすめしたいのが「全国版救急受診アプリ『Q助(きゅーすけ)』」。総務省消防庁が、今年の5月に運用を開始したばかりのアプリです。急な病気やケガの際、該当する症状を画面上で選択していくと、緊急度に応じた対応(「いますぐ救急車を呼びましょう」、「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」「緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう」など)が表示されます。
救急車を安易に呼ばないようにするためだけではなく、救急車を呼ばずに様子を見ていて重症化するというケースを防ぐ目的もあります。
救える命を救うために、正しい情報やモラルを身につけましょう。

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