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健康コラム

Vol.40

「スポーツを観るだけで健康になれる?!」

2017.10.01

スポーツの秋。子どもたちは運動会などで汗を流している季節ですが、大人のみなさんはどうでしょう? スポーツが健康に資すると分かってはいても、いざスポーツを「する」となるとハードルが高いと感じる方も多いはず。
そこで、今回はスポーツを「観る」だけで健康になることができないかを考えてみます。

1.スポーツ実施の現状

最初に、「スポーツ」という言葉の定義についてですが、本稿では、競技種目に限らず、ウォーキングや体操、子どもの遊び等、身体を動かすあらゆる運動を含みます。
 さて、平成28年にスポーツ庁が公表した「スポーツ施策に関わる課題の整理」によると、成人の週1回以上のスポーツ実施率は、現状(平成27年度)において40.4%とのこと。国は、これを65%程度にまで引き上げることを目標としていますが、なかなか難しいようです。ライフステージごとに、スポーツを妨げる要因があるからです。

2.スポーツを妨げる要因

スポーツを妨げる要因について、スポーツ庁がライフステージごとにわかりやすくまとめてくれていますのでご紹介します。

スポーツ実施の現状

〈平成28年スポーツ庁発表「スポーツ施策に関わる課題の整理」より抜粋〉

実際、私も結婚して子どもが生まれてからスポーツをしなくなりました。仕事や子育てで物理的にゆとりがなくなったからです。同世代のママ友に至っては、子育てと介護のダブルケア問題に直面していて、とても自分のスポーツどころではないと言います。
 洗濯物をたたみながらでもスポーツの効果を得ることができれば……。そこで、スポーツを「観る」ことに健康効果を見出そうと思います。

3.スポーツを「観る」ことが心身に与える影響

スポーツを「観る」ことの重要性は、前掲の「スポーツ施策に関わる課題の整理」の中でも触れられています。スポーツを「する」人を増やす手段にもなり得る点のみならず、スポーツ観戦と健康増進の関係性についても着目されています。
 ここからは、スポーツ観戦が心身に与える影響について、2つの根拠を示して検討していきます。

1〉ミラーニューロン効果

テレビドラマの追いかけられるシーンでドキドキしたり、格闘シーンで手に汗握ったり……そんな経験はありませんか? これは、他人の行為を自分の行為のように捉えて活性化する神経細胞群「ミラーニューロン」の働きによるものと考えられています。他人の行為と自分の行為が「ミラー(鏡)」のように同じ反応をするのです。「ものまね細胞」とも呼ばれており、上手な人の動きを真似ると自分も上達しやすいということで、スポーツのイメージトレーニングなどですでに活用されています。
 憧れの選手を真似ることでセルフイメージを高めたり、ナイスプレーを脳内で追体験することで擬似的な成功体験を得たり、テレビの前にいながらスポーツの効果を受け取ることができる素晴らしい効果です。

2〉自律神経の働き果

 国際ジャーナル『Frontiers in Autonomic Neuroscience』に掲載された論文(Rachael Brown,Ursula Kemp and Vaughan Macefield:
Increases in muscle sympathetic nerve activity, heart rate, respiration, and skin blood flow during passive viewing of exercise,2013)を読むと、「他人が運動しているのを観るだけで、まるで自分が運動しているかのように、筋交感神経活動が活発になり、心拍数、呼吸数、皮膚血流量が増加する」という調査結果が示されています。
 この調査は、リラックスして座る9名の被験者に、走る人が撮影した映像を見せ、生理学的パラメーターを計測する方法で行われました。実際の運動に匹敵するような健康効果は得られないとしながらも、他人の運動によってわずかながら運動したことになると結論付けています。

いかがでしたでしょうか?
家で洗濯物をたたみながらでも、スポーツによる健康効果を少しは得ることができそうです!
それぞれのライフステージにおける様々な事情により、スポーツを「する」ことができなくても、スポーツを「観る」ことから始めてみませんか?

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