検索

健康コラム

Vol.47

「タバコをやめて、お金持ち、健康持ちに」

2018.05.01

5月31日は世界禁煙デー。世界保健機関(WHO)が制定した禁煙推進記念日です。日本でも、5月31日から1週間を「禁煙週間」とし、禁煙や受動喫煙防止について啓発活動が行われていますが、その対策は世界に大きく遅れをとっています。
そこで、タバコが健康とお財布に与える影響を知ってもらうことで、禁煙や受動喫煙防止につなげていきたいと思います。

1.タバコと健康について

タバコが健康に良くないということはもはや周知の事実ですが、このことについて詳しく見ていきましょう(新型タバコ[加熱式非燃焼タバコ]、電子タバコについては研究データが不足しているため触れません)。

①タバコによる健康被害

タバコの煙には、三大有害物質とされるニコチン、タール、一酸化炭素だけでなく、約4,000種類の化学物質、約200種類の有害物質、60種類以上の発がん物質が含まれています(厚生労働省ホームページより)。
また、タバコは、肺がんのみならず、ほとんどの部位のがんの原因になることが多くの研究によってわかっています。がん以外にも、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、さらには妊娠に伴う異常(早産や低出生体重児など)、歯周病など、さまざまな病気のリスクを高めます。
喫煙者本人だけの問題ではありません。タバコから立ち上る煙は、喫煙者の周囲にいる人にも影響を与えます。
これが受動喫煙問題です。

②受動喫煙による健康被害

東京都では、2018年4月1日から「子どもを受動喫煙から守る条例」が施行され、保護者らには子どもがタバコの煙を吸わないよう、努力義務が課せられることになりました。
また、奈良県生駒市では、同じく4月1日から職員による職務時間内(昼休みを除く)の喫煙を禁止するとともに、職員や来庁者に対し、喫煙後45分間はエレベーターの使用を禁止しました。これは、喫煙後の呼気に含まれる有害物質が喫煙前のレベルに戻るまでに、45分間は要するとされる大学などの研究結果に基づいています。

タバコの煙には、喫煙者が直接吸い込む「主流煙」と、タバコが燃焼して立ち上る「副流煙」、そして、喫煙者の息から出る「呼出煙」に分かれます。
この副流煙や呼出煙を、自分の意思とは関係なく吸い込んでしまうことを「受動喫煙」といい、受動喫煙によって非喫煙者にもさまざまな健康被害が発生するのです。
なお、副流煙に含まれる有害物質濃度は、主流煙に含まれるそれより高いということが知られています。

2.タバコとお金

タバコによる健康へのダメージがわかったところで、次はお財布へのダメージについて。どのような損失があるのでしょうか?

①タバコ代

筆者が子どもの頃、100円玉を2枚握りしめて父のタバコを買いに行った記憶があります。同じ銘柄のタバコが現在は440円。
仮に1箱440円のタバコを1日1箱、10年間吸い続けたとしたら、約160万円の出費! 160万円あれば、海外旅行や家のリフォーム、車の買い替えなどが可能です。
タバコは今後もさらなる値上げが予測されており、喫煙者のお財布もさらなるダメージを受けることでしょう。

②医療費

前述したように、タバコはさまざまな病気のリスクを高めます。
ということは、喫煙者や喫煙者の身近にいる人の医療費は高くなる可能性があります。
参考までに、2014年度に喫煙が原因で余計にかかった医療費は約1兆4,900億円で国民医療費の4%近くを占めています。また、患者数は100万人を超え、病気で入院し、働けないことによる損失額は約2,500億円に上ると推計されています(厚生労働省研究班「受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究(2014年度)」)。
喫煙は、家計レベルでも国家レベルでも損失なのです。

③労働生産性の低下

喫煙と収入の関係については定かではありませんが、喫煙が労働生産性を下げる可能性は大いにあるでしょう。
タバコを吸うためには、その時間が必要となります。オフィスでタバコ片手に仕事ができた時代もありますが、今はたいていの職場で喫煙場所が定められており、喫煙者は喫煙場所へ移動する時間も必要となるのです。たとえ1本5分の「タバコ休憩」だとしても、10本で1時間近くの損失に!

3.禁煙治療の知識

これまで見てきたように、タバコは「百害あって一利なし」です。わかってはいるけど、なかなかタバコがやめられない……。それは、ニコチンの強い依存性のせいかもしれません。喫煙者のおよそ7割がニコチン依存症といわれ、禁煙外来での治療が必要とされます。

健康保険等で禁煙治療を受けるには、以下の4要件を満たす必要があります。

*出典:日本循環器学会ほかによる「禁煙治療のための標準手順書(第6版)」

一般的な治療の流れとしては、まず、ニコチン依存症テストを受けてから禁煙補助薬の選択をし、治療を開始します。
禁煙治療は12週間で5回の診療が1セットになっており、費用は、健康保険が適用されて2万円程度。治療にこれだけの費用をかけたとしても、タバコ代が浮くため節約になります。
なお、禁煙治療にかかる費用は、医療費控除(1月1日から12月31日までの間に、本人とその家族のための医療費を支払った場合に一定金額の所得控除が受けられる制度)の対象となりますので、領収書はしっかり保管しておきましょう。

いかがでしたか?
タバコはお金の面でも健康の面でも損失を出し、その損失は喫煙者だけにとどまらず、大事な家族や身近な人たちにも及ぶ可能性があります。
自分の意志だけで禁煙できなければ、一度禁煙外来で相談してみてください。

バックナンバー

全てを表示閉じる