経済的で健康的な天然のエアコンで夏を快適に
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いよいよ暑さがピークを迎えます。エアコンで冷やされた屋内で過ごすと、電気代はかさむし、冷房病(冷えすぎによって起こるさまざまな症状)も心配。そこで経済性が高く、健康にも優しい森林の涼しさを試してみませんか? 日本は国土の約7割が森林です。世界でトップレベルの森林大国だからこそできる、森林を活用した夏の過ごし方をご提案します。
日本の主要都市における、8月の平均気温は100年あたり約2〜2.5℃の割合で上昇しているそうです。その要因としては、温室効果ガスの増加に伴う地球の温暖化に加え、都市化の影響による局地的な気温上昇(ヒートアイランド現象)が挙げられています(気象庁ホームページ参照)。
つまり、私たち人間の活動が気温の上昇をもたらしているということです。気温上昇抑制への対策も急がれますが、ひとまず夏期休暇の間だけでも暑さから逃れたい人におすすめのスポットが森林です。森林の多い場所は、避暑地としても人気。
では、森林はどうして涼しいのでしょう? 森林が涼しい3つの理由について、これから説明します。
1.森林はどうして涼しいの?
① 標高の高いところに多いから涼しい
気温は、標高が高くなればなるほど低くなります。
太陽から熱エネルギーを受けると、地面が熱せられ、周囲の空気も温められます。空気には保温効果があるのですが、標高が高くなるにつれ空気が薄くなるので、保温効果も小さくなります。
一般的に、日本では標高が100m上がるごとに気温が約0.6℃下がること(気温減率)が知られています。
森林地帯は標高の高い場所にあることが多いですから、ひときわ涼しく感じられます。
② 地表面からの大気加熱が少ないから涼しい
アスファルトやコンクリートなどに比べて保水力が高い森林は、水分の蒸発による熱の消費が多く、地表面から大気へ与えられる熱が少なくなるため、主に日中の気温の上昇が抑えられます。草地などでも同じことがいえます(気象庁ホームページ参照)。
③ 日陰だから涼しい
森林でなくても、都会の公園でも木陰は涼しいもの。木々の枝葉が日射を遮り、日陰を作ってくれるから涼しいのです。
日射を遮るという点においては、テントの下でもよさそうですが、そのもの自体が熱くなるテントに比べ、木々の枝葉は蒸散などにより熱くなりにくいのです。
2.暑さを決めるのは?
私たちが感じる暑さというのは、気温だけで決まるわけではありません。湿度や気流(風速)、放射(日射や地面からの赤外放射)などの環境要素が総合的に影響しています。

森林は、これら涼しさを感じる環境要素が整っているといえます。ほかにも、鳥の声や水の音などの聴覚情報からも涼しさを感じることができます。
3.森林の予防医学的効果
森林環境は、涼しさを感じるだけでなく、ストレス軽減や免疫力向上に役立つといわれています。
林野庁が外部委託して行った調査によると、森林環境では、①免疫機能を有するナチュラル・キラー(NK)細胞の活性が上昇し、②ストレスホルモンであるコルチゾールが減少するという結果が得られています(林野庁「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査報告書」参照)。
こういった森林の効果に着目し、森林セラピー(科学的な証拠に裏付けされた森林浴)や森林医学(森林セラピーの効果を科学的に評価する学問)の分野も発展しています。
森林セラピーの要素を取り入れたヘルスツーリズムという取り組みも行われていて、森林の中でウォーキングや呼吸法の指導を受けたりするツアーが人気です。
4.森林から学ぶ「涼」の知恵
そうはいっても、なかなか森林に行けないという人のために、都会で実践できる「涼」の知恵を2つご紹介します。
① 「打ち水」
庭や道路などの地面に水をまき、その水が気化する時に、地面の熱を奪うことで、その周辺の温度を下げます。さらに、打ち水をすることで打ち水をした場所と、していない場所との間に気圧差ができ、打ち水をした場所から、していない場所へ空気が流れます。
②「緑のカーテン」
緑のカーテンとは、ゴーヤやアサガオなどのツル性の植物を、窓の外に這わせてカーテンのように覆ったもの。直射日光による室内温度の上昇を防ぐのが目的で、日射の熱エネルギーの遮断率は約80%! すだれの遮断率(50〜60%)よりも優れています(環境省ホームページ「グリーンカーテンプロジェクト」参照)。
いかがでしたか? 天然のエアコン(森林)を活用することで、地球温暖化の抑制につながり、気温の上昇にも歯止めがかかります。
ただし、この猛暑の中、エアコンを我慢して過ごすのは危険です。天然のエアコンとうまく組み合わせながら涼を求めてください。