Vol.52
本当の老後の備えとは
2018.10.10
みなさんは老後に備えていますか? 若いうちは老後のために切り詰めた暮らしをしてお金を蓄え、いざ老後となると蓄えたお金をこわごわ切り崩す……。
これでは、今も老後も豊かとはいえません。高齢化の最先端を走る日本の私たちが豊かな老後を描けるように、本当の老後の備えについて考えていきたいと思います。
【「老後」は何歳からだと思いますか?】
まず、「老後」という言葉についてです。
厚生労働省の平成24年の調査「高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」を見ると、人々が「老後」のことをどのように考えているかよくわかります。
まず、老後生活のイメージについては、「年金を受給」(54.0%)という人が最も多く、次いで「仕事から引退」(38.4%)、「(老化に伴い)体が不自由」(34.7%)となっています。
次に、老後は何歳からと考えるかについては、「70歳から」が32.0%、「65歳から」が28.6%と、ほぼ同じ割合になっています。
参考までに「高齢者の年齢」の定義について記載しておきます。
【老後の不安って何ですか?】
前述の厚生労働省の資料によると、老後の不安で最も多いのは「健康の問題」(45.7%)で、次いで「生活費の問題」(35.1%)となっています。
厚生労働省が平成28年に実施した「高齢社会に関する意識調査」を見ても、老後の不安については、「健康上の問題」(73.6%)と「経済上の問題」(60.9%)が上位の項目でした。
【健康の不安を軽減するには】
加齢に伴う心身機能の変化は、誰にでも起こることですが、そのスピードや程度には個人差があります。
健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を延ばすための日々の心がけは、健康不安を軽減することにつながります。その心がけとして、「適度な運動」と「良質な睡眠」、そして「栄養バランスのとれた食事」が大切です。
先の平成28年の調査でも「健康寿命を延ばすために重要なこと」という質問項目があり、「適度な運動」「休養・睡眠」「食事」の3つが上位でした。
次に、「適度な運動」について、「脚」に着目して見ていきましょう。
【ロコモのすすめ】
日本は、人類がかつて経験したことのない超高齢社会を、世界でいち早く迎えようとしています。そんな日本の未来を見据えて、日本整形外科学会が提唱している「ロコモ」という概念をご紹介しましょう。
ロコモとは、ロコモティブシンドロームの略称で、和名では運動器症候群といいます。
ロコモは、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態で、進行すると日常生活に支障を及ぼし介護が必要になるリスクが高くなります(日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト参照)。
ロコモを予防し、健康寿命を延ばすために、同サイトではバランス能力をつける「片脚立ち」と、下肢筋力をつける「スクワット」のトレーニング方法が紹介されています。
「老いは脚から」といわれるように、人は、脚から衰えていきます。雨の日でも場所を選ばず無理なく続けられるこのような運動を日常に取り入れると良いでしょう。
【老後に必要となるお金はいくら?】
健康の次はお金。
老後に必要となるお金は人それぞれ。年金がいくらくらいもらえるのか、老後はどこでどのように暮らしたいのかによって違ってくるからです。
基本的には、年金などの収入から生活費などの支出を引いた額を、蓄えておくことになります。
あるいは、働いて収入を増やすこともできるでしょう。
健康でいれば働けますし、働くことで健康を保つことができます。ただし、健康を保てるような柔軟な働き方をする必要があります。
例えば、週の半分だけ働くとか、誰かに雇われるのではなく自分の身の丈で起業するとか。
最初に書いたように、老後には「年金を受給」「仕事を引退」「体が不自由」といったイメージがあるうえ、年金不安がささやかれる昨今、収入が途絶え、年金が減り、医療費がかさみ、長生きし、お金が底をつく……。そんなシナリオを思い浮かべて、不安になる人もいるでしょう。
そんな不安を取り崩すためには、お金の積み重ねだけを考えるのではなく、収入を途絶えさせないようなキャリアの積み重ね、医療費がかさまないような健康習慣の積み重ねが大切です。
つまり、本当の老後の備えというのは、お金づくりではなく、お金に変換できるキャリアづくりや、健康づくりといえます。加えて、家族・友人との時間や、趣味の時間を大切にしておくことで、人生はより豊かになるでしょう。
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