Vol.56
ラムネのお菓子で健康になれる?!
2019.02.01
子どもの頃によく食べたラムネのお菓子。いまこのラムネのお菓子が大人たちの間で密かにブームになっているのをご存知でしょうか?
「疲れに効くってほんと?」「お酒を飲んだ後に効くってほんと?」今回は、ラムネのお菓子に隠された健康効果をお伝えします。
■ラムネのお菓子の主原料とは?
ラムネのお菓子のブームの秘密は何なのか……謎を解くため、スーパーのお菓子売り場で売られているラムネ菓子のパッケージをよく見ると、ブドウ糖が主原料になっているものと、砂糖が主原料となっているものとがありました。最近ブームになっているというラムネはブドウ糖をウリにしているようです。
ここで、ブドウ糖と砂糖の違いについて説明します。
ブドウ糖は、英語ではグルコースと呼ばれていますが、日本ではフルーツのぶどうから発見されたためこのように呼ばれています。
栄養学上は三大栄養素のひとつである糖類(炭水化物)です。ブドウ糖は「糖類の中で最も基本的な単糖類(糖の最小単位)の代表的なもので、他の単糖類である果糖やガラクトースと(あるいはブドウ糖同士で)結びついてショ糖・乳糖・でんぷんなどを構成しています。」(厚生労働省e-ヘルスネットより)
ここで出てくるショ糖(別名スクロース)というのは、ざっくり言うと砂糖のこと。たとえば、上白糖に含まれるショ糖の割合は97.6%で、三温糖だと98.5%(七訂食品成分表2016より)。
ブドウ糖が単糖類なのに対し、砂糖の主成分であるショ糖は、ブドウ糖と果糖が結合した二糖類なのです。
■ブドウ糖が選ばれる理由
ショ糖(砂糖)ではなく、ブドウ糖が選ばれる理由は、その消化吸収の過程を見ればよくわかります。
まず、口から入った糖類は、唾液や小腸の消化酵素によって消化され、最小単位である単糖類にまで分解されます。そして、小腸から血液中に吸収され、まず肝臓に一部貯えられます。その後、全身に血液を通して送られ、エネルギー源として利用されます。ここで前述した糖類について再度詳しく表で見ておきましょう。
糖質の単位として最も小さい単糖類であるブドウ糖は、二糖類や多糖類のものに比べて体内に吸収されやすいことは容易に想像がつくでしょう。
■ラムネのお菓子が疲れを取ってくれるって本当?
この疲れというのは、肉体の疲れというよりも脳の疲れのこと。実は、私たちの脳は、エネルギー源としてブドウ糖のみを利用し、しかも、からだの中で最も多くブドウ糖を消費します。寝ている間など、からだが休んでいる間でも、脳は休むことなくエネルギーを使っています。
脳へのエネルギー供給ということであれば、例えば、でんぷんが多く含まれているお米でもいいのです。ただし、先ほどの表でも見たように、でんぷんは糖質の中でも三糖類以上の多糖類のため、ブドウ糖として効果を発揮するまでに時間がかかります。よって、すぐ効くのはブドウ糖などの単糖類ということになります。
「甘いものを食べると疲れが取れる」という話は、糖質による脳へのエネルギー補給効果という点において、あながち間違っておらず、また、エネルギー補給効率の良さから、ラムネのお菓子が注目されるのも理にかなっているといえるでしょう。
■ラムネのお菓子が飲酒後に効くって本当?
ラムネのお菓子がサラリーマンの注目を集めるようになった大きな理由が、この飲酒後の効果。通常、からだに入ったアルコールは、肝臓で分解・解毒され、最終的に炭酸ガスと水という無害な物質になって体外に排出されます。 しかし、お酒をたくさん飲むと、肝臓でのアルコール処理が追いつかず、残った有害物質(アセトアルデヒド)が顔面紅潮、頭痛、吐き気、動悸、千鳥足、二日酔いなどを引き起こします。水分をしっかり摂って、汗や尿としてアセトアルデヒドを体外に出す必要があります。
それと同時に、肝臓が大量のアルコール処理をしていると、肝臓の糖新生(ブドウ糖の自力再生産)が邪魔され、低血糖(血液中に含まれるブドウ糖が少ない状態のこと)を併発しがちに。特に、何も食べないでお酒を飲んでいるときや、インスリン注射や経口血糖降下薬を飲んでいる糖尿病患者は要注意です。低血糖の症状としては、だるさ、冷や汗、動悸、頭痛、吐き気、意識障害、手足の震えなど。低血糖の対処法としては、ブドウ糖を補給することなのです。
そこで、ブドウ糖を多く含むラムネのお菓子が注目されたのです。
とはいえ、お酒の飲み過ぎは控えましょう。私たち日本人は他の人種に比べてアセトアルデヒドを分解する力が弱い人が多いとされています。
いかがでしたでしょうか?
頭を使ったときや、お酒を飲んだときなどの健康のお供にラムネが選ばれる理由がお分かりいただけたでしょうか?
しかし、いくら健康に資するからといっても過ぎたるは及ばざるがごとし。
ブドウ糖は、穀類、イモ類、豆類、果物など、身近な食材に多く含まれていますので、毎日バランスよく食べていれば基本的には問題ありません。
ちょっとした自分へのご褒美や、いざというときのために、カバンにラムネをしのばせておく程度をおすすめします。
バックナンバー
- Vol.124 身体活動・運動ガイド 国が10年ぶりに内容刷新
2024.10.01
- Vol.123 最新の知見を盛り込んだ日常活動の指針
2024.09.01
- Vol.122 自分に合った飲酒量の見極めを
2024.08.01
- Vol.121 明らかになってきた飲酒量と病気の相関
2024.07.01
- Vol.120 国が初のガイドライン作成「健康に配慮した飲酒」とは
2024.06.01
- Vol.119 肥満症の治療や予防の新薬が登場
2024.05.01
- Vol.118 減量は食事・運動・体重「見える化」で
2024.04.01
- Vol.117 「肥満」の判定基準と「肥満症」の診断基準
2024.03.01
- Vol.116 アレルギー性鼻炎の治療法
2024.02.01
- Vol.115 慢性化すると危険な副鼻腔炎
2024.01.01
- Vol.114 生活の工夫でアレルギー性鼻炎を予防
2023.12.01
- Vol.113 外来・入院治療でかかるお金の話
2023.11.01
- Vol.112 限度額超過分を還付する高額療養費制度
2023.10.01
- Vol.111 丸わかり日本の医療制度と医療費の仕組み
2023.8.31
- Vol.110 認知症リスクを高める加齢性難聴
2023.8.01
- Vol.109 イヤホンやヘッドホンの利用に注意
2023.7.01
- Vol.108 耳鳴りやうつの原因にもなる難聴
2023.6.01
- Vol.107 食事と運動が高血糖改善の2本柱
2023.5.01
- Vol.106 食後に血糖値急上昇の血糖値スパイクに注意
2023.4.01
- Vol.105 生活習慣の見直しで高血糖を予防する
2023.3.01
- Vol.104 体内時計のリズムが狂う睡眠・覚醒障害
2023.2.01
- Vol.103 生活の質を低下させる睡眠中の異常行動
2023.1.01
- Vol.102 睡眠休養感と睡眠時間・床上時間の関係
2022.12.01
- Vol.101 帯状疱疹 50歳以上の人はワクチン接種の検討を
2022.11.01
- Vol.100 帯状疱疹 早期の治療開始で痛み緩和と後遺症予防
2022.10.01
- Vol.99 新型コロナ禍で増加中?帯状疱疹に要注意
2022.9.01
- Vol.98 五十肩との見極めが大切な腱板断裂
2022.8.01
- Vol.97 痛みが長期化することもある五十肩
2022.7.01
- Vol.96 1000万人以上が悩む肩こり・痛みを解消する
2022.6.01
- Vol.95 不整脈との付き合い方 種類や症状によって異なる治療法
2022.5.01
- Vol.94 不整脈との付き合い方 突然死につながる危険な「心室細動」
2022.4.01
- Vol.93 多種多様な不整脈 正しく知って適切に対処 心臓の拍動に異常が生じる病気の総称
2022.3.01
- Vol.92 40歳以上の人は必ず年1回の検診を受診しよう 命を守る大腸がん検診のすすめ
2022.2.01
- Vol.91 治療の幅を広げるロボット手術や分子標的薬
2022.1.01
- Vol.90 早期発見・早期治療でストップ!大腸がん
2021.12.01
- Vol.89 カビや羽毛が原因となる過敏性肺炎
2021.11.01
- Vol.88 体内にある細菌が引き起こす誤嚥性肺炎
2021.10.01
- Vol.87 身近にある肺炎の危険に注意
2021.09.01
- Vol.86 多量飲酒や生活習慣病が誘因となる脂肪肝
2021.08.01
- Vol.85 肝硬変や肝がんに進行することもある慢性肝炎
2021.07.01
- Vol.84 早期発見のカギは定期健康診断
2021.06.01
- Vol.83 「笑い」のパワーでNK細胞を活性化
2021.05.01
- Vol.82 免疫力を上げる生活習慣
2021.04.01
- Vol.81 砂糖との健康的な付き合い方
2021.03.01
- Vol.80 足を守る予防ケア
2021.02.01
- Vol.79 その症状、冬季うつかも
2021.01.01
- Vol.78 日本の年中行事と健康
2020.12.01
- Vol.77 冬支度をしよう
2020.11.01
- Vol.76 ニューノーマル時代に健康でいられる家
2020.10.01
- Vol.75 今こそ知りたいオンライン診療
2020.09.11
- Vol.74 夏野菜パワーで暑い夏を元気に過ごそう!
2020.08.01
- Vol.73 雨シーズンの不調はおうちケアで予防
2020.07.01
- Vol.72 テレワークと健康
2020.06.01
- Vol.71 メタボリックシンドローム予備群からの脱出
2020.05.01
- Vol.70 健康な人の時間管理
2020.04.01
- Vol.69 健康を心がけた外食とは
2020.03.01
- Vol.68 ボランティア活動をすると健康になれる?!
2020.02.01
- Vol.67 勉強すれば健康寿命が延びるって本当?!
2020.01.01
- Vol.66 体調を崩しやすい季節に試してほしい部分浴
2019.12.01
- Vol.65 趣味と健康の関係性
2019.11.01
- Vol.64 住み替えと健康
2019.10.01
- Vol.63 モノを減らすと健康になれる?!
2019.09.01
- Vol.62 夏のめまいを予防する3つの『す』
2019.08.01
- Vol.61 コミュニティナース
2019.07.01
- Vol.60 セカンドオピニオンのイロハ
2019.06.01
- Vol.59 ヘルスリテラシーを高めて健康寿命を延ばす
2019.05.01
- Vol.58 ゲームと健康
2019.04.01
- Vol.57 かかりつけ医の探し方
2019.03.01
- Vol.56 ラムネのお菓子で健康になれる?!
2019.02.01
- Vol.55 寒さに負けない筋肉のつくり方
2019.01.10
- Vol.54 代謝が上がると運気も上がる
2018.12.01
- Vol.53 社長が長生きする理由
2018.11.01
- Vol.52 本当の老後の備えとは
2018.10.10
- Vol.51 頭皮の健康習慣を考えてみませんか
2018.09.01
- Vol.50 経済的で健康的な天然のエアコンで夏を快適に
2018.08.01
- Vol.49 ラジオ体操の健康効果がすごい!
2018.07.01
- Vol.48 健康管理に役立つAI
2018.06.01
- Vol.47 タバコをやめて、お金持ち、健康持ちに
2018.05.01
- Vol.46 満員電車と働く人の健康
2018.04.01
- Vol.45 保健センターの活用法
2018.03.01
- Vol.44 健康のためにいくら使っていますか?
2018.02.01
- Vol.43 風邪を正しく理解しよう
2018.01.01
- Vol.42 暖房器具で健康を守る!
2017.12.01
- Vol.41 音楽を聴くだけでカラダにいいことがある?!
2017.11.01
- Vol.40 スポーツを観るだけで健康になれる?!
2017.10.01
- Vol.39 救急の日に考える救急車のお作法
2017.09.01
- Vol.38 献血で健康管理
2017.08.01
- Vol.37 夏の食中毒から身を守る方法
2017.07.01
- Vol.36 日記を書くだけで健康になれる?!
2017.06.01
- Vol.35 ナースに学ぶタッチング
2017.05.01
- Vol.34 ガッツポーズで元気になろう
2017.04.01
- Vol.33 花粉症と上手に付き合って春を楽しもう
2017.03.01
- Vol.32 インフルエンザ予防のカギは○○の湿度
2017.02.01
- Vol.31 お正月は胃腸と家計のリセットを!
2017.01.01
- Vol.30 お金持ちは姿勢が良い?!
2016.12.01
- Vol.29 ライフプランでお金と健康と生きがいをプランニング
2016.11.01
- Vol.28 健康とお金を守る働き方
2016.10.01
- Vol.27 三世代同居で金持ち元気持ち?!
2016.09.01
- Vol.26 健康のための旅行とその備え
2016.08.01
- Vol.25 休み上手になって稼ぎ力アップ!
2016.07.01
- Vol.24 心身とお家計に効く和食
2016.06.01
- Vol.23 貧乏ゆすりは金持ちゆすり?!
2016.05.01
- Vol.22 離れて暮らす親の健康とお金を守る
2016.04.01