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健康コラム

Vol.57

かかりつけ医の探し方

2019.03.01

かかりつけ医とは、「健康のことを何でも相談でき、必要なときは専門の医療機関へ紹介してくれる、身近にいて頼りになる医師」のこと(日本医師会総合政策研究機構による定義づけ)。医師はたくさんいるけれど、その中からどうやってかかりつけ医を見つければよいのでしょうか?
そこで、今回は、失敗しないかかりつけ医の探し方をお伝えします。

■かかりつけ医はいますか?

イギリスやフランスには、かかりつけ医を登録する制度があります。日本では2016年に一部の小児科でかかりつけ医の登録、同年、日本医師会のかかりつけ医機能研修制度・届出制度が始まったばかりで、まだまだ広がっていません。今のところは患者側がかかりつけ医だと思う医師がかかりつけ医ということでよいでしょう。
では、日本ではどのくらいの人がかかりつけ医をもっているのでしょう?

日本医師会総合政策研究機構は、「第6回 日本の医療に関する意識調査(2017年)」の中で、かかりつけ医に関する調査を行っています。
かかりつけ医の有無については、全体の55.9%が「かかりつけ医がいる」と答えています。かかりつけ医がいる人を年代別、男女別にみると、70歳以上は81.6%であるのに対し、20~30歳代は31.5%、また、女性は61.6%なのに対し、男性は49.3%とやや低い割合になっています。
全体的に見ると、かかりつけ医がいる人は年々じわじわ増加傾向にあるのですが、若い世代にはそれほど浸透していないようです。

■かかりつけ医を探す際のヒント

では、かかりつけ医がいると答えた人は、その医師をどのように選んでいるのでしょう?
前述の調査によると、20~44歳までの比較的若い年代はホームページから探す割合が6割超で、年代が上がると、現在かかっている医師から探す割合が増えています。
一方で、かかりつけ医がいない人の理由として、「あまり病気にかからない」(62.6%)、「その都度、受診する医療機関を選んでいる」(32.6%)に続き、「かかりつけ医をどのように選んでよいか分からない」(12.1%)という結果になりました。
そこで、かかりつけ医を探す際のポイントを5つに絞ってお伝えします。

① 近い

なんでもすぐ相談しに行けるくらいに「近い」ということが重要です。
働いている人は、職場の近くに頼れる医師がいるかもしれませんが、転職や退職によって通いにくくなる可能性があるので注意が必要です。
自宅近くの医師の場合、市区町村によって異なる予防接種の助成などの行政サービスや、近隣での感染症の流行状況などを教えてもらえるのがありがたいです。

② 説明がわかりやすい

医師の説明がわかりやすいということは、その技量もさることながら、それ以前に、患者のことをよく観察し、丁寧に話を聴いてくれているという表れです。
つまり、自分の性格や理解力、要求に応じたレベルでの説明をしてくれる医師かどうかが重要なポイントです。

③ 専門医との連携がある

医師同士の連携をしっかり持っていて、むやみに患者を抱え込んだり診療を長引かせたりせず、自分の領域外と判断した場合はすぐに専門医に紹介してくれる医師が理想的です。

④ 家族も同じ医師

家族みんなの顔を知っていて、それぞれの体質や持病などを把握してくれている医師がいると心強いものです。
「もうすぐお嬢ちゃん小学生だね」「旦那さんの血圧はどう?」などと家族のことまで気にしてもらえる安心感があります。
また、一人の医師が家族全員を診ると、家庭環境や家族の嗜好などといった情報を活かせます。「おばあちゃんの介護で寝不足かも」「毎日の食事の味付けが濃いかも」などといった細やかな気づきから、地域内の介護や栄養の専門家へ繋いでもらうことも期待できます。

⑤ 相性

そして、最も重要なのが相性。
ネットなどの口コミで評価が高い医師だとしても、必ずしも自分や家族に合う医師だとは限りません。やはり、実際に会って話をしてみないとわからないものです。

■かかりつけ医の役割とは?

下の表は、前述の調査内の[かかりつけ医に望むこと、かかりつけ医が対応していると思うこと]です。
これを見ると、かかりつけ医を探す際のポイントでも挙げた「必要時に専門医に紹介」というのが、かかりつけ医に求められる大きな役割ということがわかります。
時間外の連絡や緊急時の連携など、まだまだ課題はありますが、患者の病歴や受診・処方歴を把握しているかかりつけ医が、色々な診察や相談に応じている様子が伺えます。
また、今後増えていくと思われる在宅での医療や臨終において、かかりつけ医のさらなる役割が期待されます。

〈表:日本医師会総合政策研究機構「第6回 日本の医療に関する意識調査(2017年)」より〉

■かかりつけ医をもつことで時間とお金を節約?

最後に、大病院志向が強い人や、ハシゴ受診(次から次へと医師を変えて受診)をしがちな人は、自分自身にも自分以外の誰かにも負担が伴うことをぜひ知っておいてください。
たとえば、ハシゴ受診では、同じ検査が繰り返されたり、同じ薬が処方されたり、初診料(初めての医療機関を受診するとかかる費用)を何度も支払うことになったり……肉体的にも経済的にもダメージを受けるだけでなく、不必要に治療を長引かせることにもなりかねません。体質や病歴などに関しても一から説明することが求められます。

また、大学病院や都道府県立病院などといった高度な設備がある大病院(400床以上)を紹介状なしで受診すると、初診時は5,000円以上、再診時は2,500円以上が上乗せされます。
かかりつけ医は必要に応じて紹介状を書いてくれます。紹介状にかかる費用(正確には、診療情報提供料)は3割負担で原則750円。
かかりつけ医をもつことで、時間だけでなく、お金も節約することができます。加えて、難病などの病気で大病院の専門医を必要としている患者さんがたくさんいるということも知っておいてください。

いかがでしたでしょうか?
若いうちに、健康なうちに、日頃から何でも気軽に相談できるかかりつけ医を見つけて、安心して歳を重ねていきましょう。

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