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健康コラム

Vol.59

ヘルスリテラシーを高めて健康寿命を延ばす

2019.05.01

世界一の健康食である和食を生み出した日本。長寿国としても知られています。
しかし、今、日本では平均寿命と健康寿命のギャップ(健康上の問題から介護などの助けが必要となる期間)が問題となっています。その解決策の一端となるのがヘルスリテラシーです。
今回は、このヘルスリテラシーについてお伝えします。

■ヘルスリテラシーって何?

金融リテラシーに情報リテラシー、健康分野以外でも様々な分野でリテラシーという言葉が使われます。

もともとリテラシー(Literacy)とは、「文字を読み書きする能力」のことを指します。スキルとは違って、誰もが持つべき能力という意味合いの言葉です。
ヘルスリテラシーの定義はいくつかありますが、世界保健機関(WHO)の定義を引用すると、「ヘルスリテラシーは、より良い健康を促進し、維持する方法に関しての情報にアクセスし、理解し、利用するための個人の意欲や能力を決定する認知的・社会的スキル」です。

健康に関する情報源が多様化し、情報が溢れるなか、適切な情報を入手(情報にアクセス)し、その情報を正しく理解し、そして、それが信頼できる情報かどうかを評価し、信頼できる情報であれば利用する、というのがヘルスリテラシーのプロセスです。

■ヘルスリテラシーのレベル

ヘルスリテラシーには、以下のように基礎的なものから高度なものまでレベルがあります。

ヘルスリテラシーのレベル一覧

ヘルスリテラシーが低いと健康に少なからずよくない影響を及ぼすことは想像できます。特に、機能的ヘルスリテラシー(読み書き能力)が低いと、行政や医療機関から発信される健康に関するメッセージを読み解けません。日本人の場合、通常の読み書きは問題ないという方がほとんどでしょうが、医療関係の言葉は理解できない、ということは少なくないでしょう。その結果、健康診断を受けなかったり、健康上の問題を放置したりして、取り返しのつかないことにもなりかねません。

ヘルスリテラシーが低い人の傾向として、ノースカロライナ大学で保健行政や健康管理を研究しているNancy D.Berkman博士らは以下の項目を挙げています。

  • ・病気で入院しやすい
  • ・救急サービスを利用しやすい
  • ・健康診断や予防接種などを利用しない
  • ・適切な服薬ができない
  • ・健康に関するラベルやメッセージを理解できない
  • ・高齢者の死亡率が高い

(出所:Low health literacy and health outcomes : An updated systematic review, Annals of Internal Medicine,2011)

■ヘルスリテラシーと健康寿命の関係

ところで、内閣府の平成30年版高齢社会白書によると、平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳。健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳。つまり、寿命は長いのに、寝たきりや認知症など介護状態の不健康な期間が、男性8.84年、女性12.35年と比較的長いことが問題となっています。

要介護者等の介護が必要になった原因をみると、「認知症」(18.7%)が最も多く、その後に「脳血管疾患(脳卒中)」(15.1%)が続きます(厚生労働省「国民生活基礎調査」平成28年より)。
脳卒中の主な原因は動脈硬化。動脈硬化は高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が引き金となります。
これら生活習慣病は認知症の発症や進行に深く関わっていることが知られています。

そして、健康寿命を延ばすこととヘルスリテラシーの高さも関係しています。
健康寿命を延ばすためには生活習慣病をコントロールすることが鍵となりますが、ヘルスリテラシーが高い人は、健康診断の結果などを見て理解し、医師に的確な質問をし、その情報をもとに、バランスのとれた食事や適度な運動を心がけるなど、生活習慣病の予防行動をとることができます。
また、生活習慣病の危険因子とされるストレスへの対処もできます。

もしヘルスリテラシーが低くても、ヘルスリテラシーが高い人とつながり、その人を活用できるようになることも立派なヘルスリテラシーです。
たとえば、かかりつけ医や訪問看護師、薬局の薬剤師などはまさしく保険医療の専門家なのでヘルスリテラシーが高いはず。彼らが情報をわかりやすく説明することはもちろんのこと、情報を受け取る側も、情報提供の場に家族や友人を同席させるなどして、みんなでヘルスリテラシーを高め合うことが大切です。
最近注目を集めているコミュニティナース(地域の中で住民と触れ合いながら健康的なまちづくりをするナース)のような気軽に健康相談できる専門家も今後広がっていくでしょう。
このようにしてヘルスリテラシーが高まり、健康に関する情報を使いこなすことができれば、病気の早期発見に役立ったり、無用な救急受診が減ったりして、医療費削減にもつながります。

金融リテラシーを高めれば、より多くの金融資産を築くことができるように、ヘルスリテラシーを高めれば、より多くの健康資産を築くことができるのです。

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