Vol.60
セカンドオピニオンのイロハ
2019.06.01
セカンドオピニオンとは、いま診てもらっている医師とは別の医師に「第2の意見」を求めること。言葉は知っているけれど、いざ自分がセカンドオピニオンを受けようとするとき、どのように言えばいいの? いま診てもらっている医師の気分を害してしまわない? など、不安なことだらけ。
今回は、セカンドオピニオンをスムーズに受ける方法やその注意点についてお伝えします。
■セカンドオピニオンってどのくらいの人が受けている?
セカンドオピニオンとは、患者さんが納得のいく治療法を選択することができるように、治療の進行状況、次の段階の治療選択などについて、現在診療を受けている担当医とは別に、違う医療機関の医師に「第2の意見」を求めることです(東京都福祉保健局ホームページより)。
いったいどのくらいの人がセカンドオピニオンを受けているのでしょう?
少し古いデータですが、厚生労働省が全国の500病院を対象に行った調査「平成23年受療行動調査の概況」によると、セカンドオピニオンの必要性について、「必要」と考える患者のうち、実際にセカンドオピニオンを受けたことがある患者の割合は3割程度にとどまっています。
セカンドオピニオンを受けた患者の8割近くは受けて「良かった」と回答しており、その満足度も高いのですが、どうして多くの患者はセカンドオピニオンの必要性を感じながらも受けていないのでしょうか?
同調査で、セカンドオピニオンを受けなかった患者にその理由を尋ねた結果、「受けた方がいいのか判断できない」、「どうすれば受けられるのかわからない」、「主治医に受けたいと言いづらい」といった理由が上位にあがりました。
■セカンドオピニオンってどんな人が受けるの?
セカンドオピニオンは、納得のいく治療法を選択するためのものです。したがって、現在の主治医から説明された診断や治療方針について納得がいかない場合はセカンドオピニオンを視野に入れましょう。
例えば……
- ・外科的治療(手術)をすすめられたけれど、内科的治療(薬など)で治せないか?
- ・乳がんで乳房切除術をすすめられたけれど、乳房温存術で治せないか?
- ・歯科で矯正治療をすすめられたけれど、必要だろうか?時期は今が良いのだろうか?
なお、セカンドオピニオンとは、ファーストオピニオン(主治医の意見)をもとに成り立つものなので、現在の主治医がセカンドオピニオンを了承しない場合や、主治医への不満や苦情、訴訟等を目的とする場合はセカンドオピニオンの対象外となります。また、セカンドオピニオンを受けようとする病院に対応できる専門医がいない場合もありますので、まずは問い合わせてみましょう。
■セカンドオピニオンはどこでどのように受けるの?
近年、セカンドオピニオンへの期待の高まりを受け、セカンドオピニオンを専門とするセカンドオピニオン外来が広がりつつあります。
セカンドオピニオン終了後は主治医のところに戻ります。セカンドオピニオンは転院を目的にできず、治療もしませんが、結果的にセカンドオピニオンを受けた病院で治療を受けることになれば紹介状などで引き継ぎが行われます。
セカンドオピニオンにかかる費用は、1時間以内で3万円台から4万円台。最長1時間の病院もあれば、1時間以上は延長加算される病院も。いずれも自由診療で保険は使えません。
■セカンドオピニオンを医師はどう思っているの?
患者の立場からも、医療者の立場からも、ここが最大のネックだと感じます。
つまり、セカンドオピニオンの必要性も方法もわかった上で、それでもなおセカンドオピニオンを受けない患者は、医師との信頼関係が壊れてしまうのではないか、医師を不機嫌にさせてしまうのではないかと心配するのです。
セカンドオピニオンは、もともと1980年代のアメリカで医療判断の不均一性を是正し医療費を抑制する目的で始まり、その後、医療情報開示・患者人権擁護・患者の医療主体意識の高まりの中で社会に定着しました(日本循環器学会専門医誌、循環器専門医第10巻第2号、2002年より)。
日本における従来型の医師と患者の関係は、パターナリズムモデルです。パターナリズムとは父権主義的という意味。つまり、父親のような強い立場にある者が、小さな子どものような弱い立場にある者のためによかれと思って、本人の意思とは無関係に介入・干渉・支援をするイメージです。
近年では、医師と患者がコミュニケーションを多くとり、一緒に意思決定するシェアードディシジョンモデルと呼ばれるものへと変化しつつありますが、年配の医師や患者の中にはまだパターナリズム的な考えが残っていることがあります。よって、セカンドオピニオンによる医師との関係悪化を恐れる患者が多いのが現状です。
では、医師の本音はどうなのでしょうか?
2015年MedPeer会員医師へのアンケート調査(運営:メドピア株式会社)によると、「他の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞きたい」と言われた際にどう感じるかという質問に対し、実際に言われた経験がある医師のうち87.4%が「不快に感じない」と答えています。むしろ、「医師の側から勧めることもある」や、「他の医師の意見を知りたい」といった回答の医師もいます。
セカンドオピニオンは、医師と患者の信頼関係を壊すものではなく、むしろ、治療への理解を深めることで信頼関係を強めるものです。
セカンドオピニオンを切り出した時、もし医師が不快感をあらわにするようなことがあれば、それはそれで医師を見直すよいきっかけとなるのではないでしょうか?
バックナンバー
- Vol.123 最新の知見を盛り込んだ日常活動の指針
2024.09.01
- Vol.122 自分に合った飲酒量の見極めを
2024.08.01
- Vol.121 明らかになってきた飲酒量と病気の相関
2024.07.01
- Vol.120 国が初のガイドライン作成「健康に配慮した飲酒」とは
2024.06.01
- Vol.119 肥満症の治療や予防の新薬が登場
2024.05.01
- Vol.118 減量は食事・運動・体重「見える化」で
2024.04.01
- Vol.117 「肥満」の判定基準と「肥満症」の診断基準
2024.03.01
- Vol.116 アレルギー性鼻炎の治療法
2024.02.01
- Vol.115 慢性化すると危険な副鼻腔炎
2024.01.01
- Vol.114 生活の工夫でアレルギー性鼻炎を予防
2023.12.01
- Vol.113 外来・入院治療でかかるお金の話
2023.11.01
- Vol.112 限度額超過分を還付する高額療養費制度
2023.10.01
- Vol.111 丸わかり日本の医療制度と医療費の仕組み
2023.8.31
- Vol.110 認知症リスクを高める加齢性難聴
2023.8.01
- Vol.109 イヤホンやヘッドホンの利用に注意
2023.7.01
- Vol.108 耳鳴りやうつの原因にもなる難聴
2023.6.01
- Vol.107 食事と運動が高血糖改善の2本柱
2023.5.01
- Vol.106 食後に血糖値急上昇の血糖値スパイクに注意
2023.4.01
- Vol.105 生活習慣の見直しで高血糖を予防する
2023.3.01
- Vol.104 体内時計のリズムが狂う睡眠・覚醒障害
2023.2.01
- Vol.103 生活の質を低下させる睡眠中の異常行動
2023.1.01
- Vol.102 睡眠休養感と睡眠時間・床上時間の関係
2022.12.01
- Vol.101 帯状疱疹 50歳以上の人はワクチン接種の検討を
2022.11.01
- Vol.100 帯状疱疹 早期の治療開始で痛み緩和と後遺症予防
2022.10.01
- Vol.99 新型コロナ禍で増加中?帯状疱疹に要注意
2022.9.01
- Vol.98 五十肩との見極めが大切な腱板断裂
2022.8.01
- Vol.97 痛みが長期化することもある五十肩
2022.7.01
- Vol.96 1000万人以上が悩む肩こり・痛みを解消する
2022.6.01
- Vol.95 不整脈との付き合い方 種類や症状によって異なる治療法
2022.5.01
- Vol.94 不整脈との付き合い方 突然死につながる危険な「心室細動」
2022.4.01
- Vol.93 多種多様な不整脈 正しく知って適切に対処 心臓の拍動に異常が生じる病気の総称
2022.3.01
- Vol.92 40歳以上の人は必ず年1回の検診を受診しよう 命を守る大腸がん検診のすすめ
2022.2.01
- Vol.91 治療の幅を広げるロボット手術や分子標的薬
2022.1.01
- Vol.90 早期発見・早期治療でストップ!大腸がん
2021.12.01
- Vol.89 カビや羽毛が原因となる過敏性肺炎
2021.11.01
- Vol.88 体内にある細菌が引き起こす誤嚥性肺炎
2021.10.01
- Vol.87 身近にある肺炎の危険に注意
2021.09.01
- Vol.86 多量飲酒や生活習慣病が誘因となる脂肪肝
2021.08.01
- Vol.85 肝硬変や肝がんに進行することもある慢性肝炎
2021.07.01
- Vol.84 早期発見のカギは定期健康診断
2021.06.01
- Vol.83 「笑い」のパワーでNK細胞を活性化
2021.05.01
- Vol.82 免疫力を上げる生活習慣
2021.04.01
- Vol.81 砂糖との健康的な付き合い方
2021.03.01
- Vol.80 足を守る予防ケア
2021.02.01
- Vol.79 その症状、冬季うつかも
2021.01.01
- Vol.78 日本の年中行事と健康
2020.12.01
- Vol.77 冬支度をしよう
2020.11.01
- Vol.76 ニューノーマル時代に健康でいられる家
2020.10.01
- Vol.75 今こそ知りたいオンライン診療
2020.09.11
- Vol.74 夏野菜パワーで暑い夏を元気に過ごそう!
2020.08.01
- Vol.73 雨シーズンの不調はおうちケアで予防
2020.07.01
- Vol.72 テレワークと健康
2020.06.01
- Vol.71 メタボリックシンドローム予備群からの脱出
2020.05.01
- Vol.70 健康な人の時間管理
2020.04.01
- Vol.69 健康を心がけた外食とは
2020.03.01
- Vol.68 ボランティア活動をすると健康になれる?!
2020.02.01
- Vol.67 勉強すれば健康寿命が延びるって本当?!
2020.01.01
- Vol.66 体調を崩しやすい季節に試してほしい部分浴
2019.12.01
- Vol.65 趣味と健康の関係性
2019.11.01
- Vol.64 住み替えと健康
2019.10.01
- Vol.63 モノを減らすと健康になれる?!
2019.09.01
- Vol.62 夏のめまいを予防する3つの『す』
2019.08.01
- Vol.61 コミュニティナース
2019.07.01
- Vol.60 セカンドオピニオンのイロハ
2019.06.01
- Vol.59 ヘルスリテラシーを高めて健康寿命を延ばす
2019.05.01
- Vol.58 ゲームと健康
2019.04.01
- Vol.57 かかりつけ医の探し方
2019.03.01
- Vol.56 ラムネのお菓子で健康になれる?!
2019.02.01
- Vol.55 寒さに負けない筋肉のつくり方
2019.01.10
- Vol.54 代謝が上がると運気も上がる
2018.12.01
- Vol.53 社長が長生きする理由
2018.11.01
- Vol.52 本当の老後の備えとは
2018.10.10
- Vol.51 頭皮の健康習慣を考えてみませんか
2018.09.01
- Vol.50 経済的で健康的な天然のエアコンで夏を快適に
2018.08.01
- Vol.49 ラジオ体操の健康効果がすごい!
2018.07.01
- Vol.48 健康管理に役立つAI
2018.06.01
- Vol.47 タバコをやめて、お金持ち、健康持ちに
2018.05.01
- Vol.46 満員電車と働く人の健康
2018.04.01
- Vol.45 保健センターの活用法
2018.03.01
- Vol.44 健康のためにいくら使っていますか?
2018.02.01
- Vol.43 風邪を正しく理解しよう
2018.01.01
- Vol.42 暖房器具で健康を守る!
2017.12.01
- Vol.41 音楽を聴くだけでカラダにいいことがある?!
2017.11.01
- Vol.40 スポーツを観るだけで健康になれる?!
2017.10.01
- Vol.39 救急の日に考える救急車のお作法
2017.09.01
- Vol.38 献血で健康管理
2017.08.01
- Vol.37 夏の食中毒から身を守る方法
2017.07.01
- Vol.36 日記を書くだけで健康になれる?!
2017.06.01
- Vol.35 ナースに学ぶタッチング
2017.05.01
- Vol.34 ガッツポーズで元気になろう
2017.04.01
- Vol.33 花粉症と上手に付き合って春を楽しもう
2017.03.01
- Vol.32 インフルエンザ予防のカギは○○の湿度
2017.02.01
- Vol.31 お正月は胃腸と家計のリセットを!
2017.01.01
- Vol.30 お金持ちは姿勢が良い?!
2016.12.01
- Vol.29 ライフプランでお金と健康と生きがいをプランニング
2016.11.01
- Vol.28 健康とお金を守る働き方
2016.10.01
- Vol.27 三世代同居で金持ち元気持ち?!
2016.09.01
- Vol.26 健康のための旅行とその備え
2016.08.01
- Vol.25 休み上手になって稼ぎ力アップ!
2016.07.01
- Vol.24 心身とお家計に効く和食
2016.06.01
- Vol.23 貧乏ゆすりは金持ちゆすり?!
2016.05.01
- Vol.22 離れて暮らす親の健康とお金を守る
2016.04.01