体調を崩しやすい季節に試してほしい部分浴
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いよいよ寒くなり、体調を崩しやすい季節になりました。
自分や家族が体調不良でお風呂に入れないときなどに、ぜひ試していただきたいのが部分浴です。部分浴には、手を湯に浸ける手浴と、足を湯に浸ける足浴があります。温泉地でよく見かける「足湯」も部分浴の一つですが、今回は、自宅でできる部分浴の方法やその効果についてお伝えします。
■寒くなるとどうして体調を崩しやすいのか?
気温が下がる冬は、身体が冷えやすくなります。身体が冷えると血管が収縮し、血流が悪くなります。冷えて血流が悪くなると代謝も落ち、老廃物が溜まりやすくなります。寒さで筋肉が緊張することと、老廃物が溜まることによって痛みやコリが生じます。
また、内臓など身体の内部の温度(深部体温)が下がると免疫力も低下します。免疫力が低下すると、身体は様々なウイルスの影響を受けやすくなり、風邪を引きやすくなるなど病気のリスクが高まります。
■お風呂の三大作用とは?
冷えた身体を温めるのに効果的なのがお風呂です。お風呂は単に身体を温めるだけでなく、身体に様々な影響を与えます。日本でお風呂といえば、肩までお湯に浸かる方法(全身浴)が一般的です。
全身浴が人間の身体にもたらす3つの作用、静水圧作用、浮力作用、温熱作用をみていきましょう。
1.静水圧作用
お風呂に入ると、身体に水圧がかかります。その圧力で、手足にたまった血液が押し戻されて心臓の働きが活発になり、血液やリンパの流れを良くします。
また、水圧によって胸やお腹が圧迫され、横隔膜が押し上げられ、肺の容量が少なくなり、呼吸数が増えます。
注意して欲しいのはお風呂から上がるとき。急に立ち上がると、静水圧が突然なくなるため、重力の影響で血液は下肢に流れやすくなります。その結果、一時的に脳の血流が不足し、立ちくらみが起こることがあります。
2.浮力作用
お風呂に入ると、浮力が働くため、水中での体重が普段の10分の1程度にまで軽くなります。そのため、日頃、体重を支えている筋肉や関節を休ませることができます。
この作用は、骨・関節疾患や脳血管障害後遺症のリハビリにも役立ちます。
3.温熱作用
お風呂に入ると、まずは体の皮膚の表面温度が上がり、皮膚で温められた血液が身体を巡り、深部体温を上昇させます。身体が温まると、全身の血管が広がり、血液の流れが良くなります。温熱作用により、新陳代謝が高まって、体内の老廃物や疲労物質が取り除かれ、痛みやコリなどが和らぎます。
ちなみに、38〜40度の微温浴では副交感神経が優位になってリラックスできますが、42度以上の高温浴では交感神経が優位になって、心拍数も血圧も上昇します。高血圧の人などは湯温に注意が必要です。
参考文献:北海道大学大学院教育学研究院人間発達科学分野教授 大塚吉則「入浴の生理学」JIM10、2000
■部分浴のすすめ
上記のような作用を受ける全身浴は、高齢者や心肺機能が低下している人の身体にとっては大きな負担となります。
実際、60〜80歳代の高齢者が入浴時に死亡する事故は後を絶ちません。このことについては、「加齢による身体的変化が入浴時の温熱作用、静水圧作用、浮力への適応能力を低下させ事故につながることが考えられる」といった専門家の意見があります(愛知医療学院短期大学教授 美和千尋「全身浴と部分浴における生理心理反応と加齢の影響」人間-生活環境系学会シンポジウム資料より)。
看護の現場においては、高齢や病気により体力が落ちている患者さんや、術後の傷のため入浴ができない患者さんに対しては清拭(温めたタオルで身体を拭くこと)をしますが、清拭だと身体が冷めやすいので、部分浴も組み合わせます。
・部分浴の特徴
全身浴や半身浴に比べ、水圧や温熱による作用を受ける領域が少ないため、心臓などへの負担が小さいという特徴があります。服を着た状態で、手軽に行うことができるのも特徴です。
・部分浴の効果
手足はとても汚れやすい部分なので、清潔を保つ意味でも手浴・足浴は効果的です。
ほかにも、血流促進効果があります。人間には内臓を守ろうとする本能があり、身体が冷えると、先に内臓を温めようとします。そのため、身体の末端にある手足は特に冷えがちです。そんな冷えた手足を手浴・足浴で温めることにより、全身の血流が促進され、まるで全身浴したかのような満足感を得ることができます。
マッサージやアロマオイルなどを組み合わせるとリラックス効果が高まり、家族で行うとスキンシップにもなります。
■部分浴をやってみよう!
準備するもの:お湯を入れた風呂桶、湯温調節用のお湯を入れたポット、タオル、防水シーツ
方法:防水シーツを敷いた上に、お湯を入れた風呂桶を置き、そこに手や足を浸けて15〜20分。
途中、熱いお湯を足して、湯温を一定にする。
お湯から手や足を出したら、湯冷めしないようにすぐタオルでくるむ。


体調を崩した家族のため、疲れが溜まった自分のため、ぜひ家庭で気軽にできる部分浴を試してみてください。
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(執筆者:萩原有紀)