検索

健康コラム

Vol.68

ボランティア活動をすると健康になれる?!

2020.02.01

阪神・淡路大震災をきっかけに、日本でもボランティア活動に注目が集まるようになりました。ボランティア活動は自分が他人を救っているようでいて、実は自分も他人に救われていることをご存知ですか?
今回は、いくつかの研究結果を参考にしながら、ボランティア活動が心身の健康に及ぼす影響をみていきます。

■ボランティア活動をしていますか?

まず、ボランティア活動の定義について考えたいと思います。
複数の定義づけがありますが、ここでは、総務省統計局による定義づけを採用し、「報酬を目的としないで自分の労力、技術、時間を提供して地域社会や個人・団体の福祉増進のために行う活動」とします。

自然災害が多い日本。近年も地震や豪雨などの被災地におけるボランティア活動がメディアに取り上げられています。「私はボランティア活動なんてやったことがない」と後ろめたく思っている人も、実は日常的にボランティア活動をやっていたりします。被災地などの活動以外にも下表のようなボランティア活動があります。

ボランティア活動の種類

総務省統計局の平成28年社会生活基本調査〜生活行動に関する結果〜によると、ボランティア活動の行動者数は2,943万8千人で、行動者率(10歳以上人口に占める割合)は26.0%となっています。
上記ボランティア活動の種類別に行動者率をみると、「まちづくりのための活動」が11.3%と最も高く、次いで「子供を対象とした活動」が8.4%となっています。また、ボランティア活動の形態としては、町内会などの組織に加入して行った活動が高い割合となっています。
みなさんも、町内会や自治会の清掃活動などに参加したことがあるのではないでしょうか?

■ボランティア活動と健康の関係とは?

ボランティア活動と健康の関係について考えるとき、そもそもボランティア活動をする人は健康な人であるとの見方があります。
しかし、ボランティア活動をすることでその健康が維持・増進できるのではないかと考えることもでき、世界中で、その仮説をもとにした高齢者ボランティアに関する多くの研究報告がされています。
少子高齢化社会が急速に進む私たちの国において、高齢者ボランティアの活躍とその健康との関連は、非常に参考になると思うので、2つご紹介します。

【ボランティア活動と健康に関する研究報告その1】
概要:マイアミ在住の65歳以上の人で、病院ボランティアを行った人と何もしなかった人について調査した結果、以下のような身体的健康面と心理社会面における効果がみられた。

  • ・ボランティア従事者は非従事者より過去6か月の入院日数が短く、投薬数は少なく、感覚・運動神経障害の程度が軽い(身体的健康面)
  • ・ボランティア従事者は非従事者より心身の愁訴、不安感、抑うつ、生きる意欲、生活満足度において優れている(心理社会面)

参考:K.I. Hunter, Margaret W.Linn “Psychosocial Difference between Elderly Volunteers and Non-Volunteers” The International Journal of Aging and Human Development、1980-1981

【ボランティア活動と健康に関する研究報告その2】
概要:アメリカの60歳以上の人に、ボランティア活動の有無や、その活動の他人への貢献度、自身の健康度などについて調査した結果、以下の効果がみられた。

  • ・ボランティア活動はすべてのwell-being(※)指標を高める効果がある。
  • ・週に約2〜3時間までは活動時間が長いほどwell-being(※)への効果が高まるが、それ以上長くなると効果は低くなる。

参考:Nancy Morrow-Howell, Jim Hinterlong, Philip A.Rozario, Fengyan Tang “Effects of Volunteering on the Well-Being of Older Adults” The Journals of Gerontology、2003

※well-beingとは「幸福」と翻訳されることが多い単語です。もともとは1948年に世界保健機関(WHO)が出した憲章の一文「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます」(日本WHO訳)から広まった言葉です。

■幸福な人は長生き?!

ボランティア活動と健康に関する研究報告から、ボランティア活動は、される側だけでなく、する側にも心身共に幸福をもたらすということがわかりました。

Dannerによる「尼僧研究」では、幸福感が強かった尼僧のうち90%が85歳まで生きて、さらに、54%が94歳まで生きたのに対し、幸福感が弱かった尼僧は、その11%しか94歳まで生きられなかったという結果が得られ、幸福感と寿命に関連性が見られました。

参考:Danner,D.D.,Snowdon,D.A.,& Friesen,W.V. Positive emotions in early life and longevity:Findings from the nun study. Journal of Personality and Social Psychology,2001

いかがでしたか?
誰かに喜んでもらったり、地域課題を解決したりしながら、自分自身の健康も守ることができれば、個人や地域にとって良いことはもちろん、日本社会全体にとって医療費削減などのメリットは大きいでしょう。

まだボランティア活動をやったことがないという方は、たとえば、週に2〜3時間、自分の身近なところでボランティア活動をしてみてはいかがでしょうか?

(執筆者:萩原有紀)

バックナンバー

全てを表示閉じる