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健康コラム

Vol.71

メタボリックシンドローム予備群からの脱出

2020.05.01

2025年には団塊世代全員が75歳以上の後期高齢者となり、国民の4人に1人が75歳以上になります(いわゆる「2025年問題」)。
この超高齢社会において「予防医療」の重要性はますます高まっています。
そしていよいよ2020年度から、予防医療への取組が不十分な自治体にはペナルティが課されることになりました。
今回は、この予防医療への取組において重要視されているメタボリックシンドロームについて取り上げます。

■予防医療への取組を評価する仕組み〜保険者努力支援制度について〜

特定健診(いわゆるメタボ健診)の実施率や後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)の使用割合が高いなど、予防医療に力を入れている自治体には交付金が手厚く配分される「保険者努力支援制度」があります(2018年度から国民健康保険(国保)の保健事業として実施)。
2020年度からは、この交付金にメリハリを効かせ、予防医療に実績がある自治体にはより多く交付金が配分され、逆に、予防医療への取組が不十分な自治体への交付金は減額されます。
では、その取組を評価するための指標とはどういうものなのでしょうか?
以下に例を挙げます。

図:指標の例

それぞれの自治体は、上記のような取組を行い、その達成状況によって支給額が審査されるという仕組みです。
この指標の1番目に挙げられているのが、メタボリックシンドロームに関するものです。メタボリックシンドローム対策は予防医療の要なのです。

■メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群とも呼ばれ、内臓脂肪蓄積を基盤として血圧や血糖、血清脂質の異常をひきおこす病態と考えられています(厚生労働省e-ヘルスネット「メタボリックシンドローム改善のための基本戦略」より)。食べ過ぎや運動不足といった長年の生活習慣の積み重ねによって、お腹に内臓脂肪が蓄積されるのです。

メタボリックシンドロームは、2006年に日本新語・流行語大賞のトップテン入りしたことで注目が集まり、人々の健康意識を高めました。巷ではパッケージに「血圧が高めの方に」「体脂肪が気になる方に」などと書かれたトクホ(特定保健用食品)の市場が拡大しました。 こうしてその存在が世に広まったものの、略語の「メタボ」という名前の親しみやすさなどから、それほどまでに怖いものだとは認識されてきませんでした。しかし、本当のところ、メタボリックシンドロームは、命の危険を知らせる警告なのです。

日本人の死亡原因の約6割を占めるのは「生活習慣病」だと言われています。日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、更に脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であるとされています(厚生労働省e-ヘルスネット「生活習慣病」より)。
この生活習慣病の前段階にあるのがメタボリックシンドロームです。

図:主な死因の構成割合

■メタボリックシンドロームの診断について〜特定健診(メタボ健診)〜

生活習慣病の予防のために、40歳から74歳までの人を対象に行われる、メタボリックシンドロームに着目した健診を「特定健診」といいます。
この特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる人に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポート「特定保健指導」を行います(厚生労働省ホームページ「特定健診・特定保健指導について」より)。

特定健診では、標準的には、基本的な項目が実施され(※加入している保険者によって検査項目が異なる場合があります)、詳細な項目は、一定の基準をもとに、医師が必要と認めた場合に実施されます。

図:基本的な項目

上記の検査結果からメタボリックシンドロームを診断していくのですが、その診断基準はこちらです。

図:メタボリックシンドロームの診断基準

■メタボリックシンドローム予備群脱出のカギは食事!

「3つの項目のうち1つの項目しか該当しなかった」「まだ予備群だから」と安心するのは禁物です。
なぜなら、高血圧と脂質異常症と高血糖は繋がっているからです。
医師と管理栄養士が参画する「トリプルリスクを考える会」監修の「みんなで解消トリプルリスク!」では、「血圧・血糖・血中脂質は、どれか1つでも高くなると、残りの2つも高くなる『トリプルリスク』を誘発する可能性」が指摘されています。

このトリプルリスクを回避するために、食事の面で心がけるべきことは、塩分・糖分・脂肪分を3つ同時にケア(トリプルケア)することです。
前掲のトリプルリスクを考える会のページでは、塩分・糖分・脂肪分を3つ同時にケアするための食事づくりについてのポイントが2つ紹介されています。

ポイント①
お皿を増やす:副菜を追加するなど、お皿を増やすことで、品目数の増加と全体的なボリュームダウンを心がける。
ポイント②
「減らす」「加える」の使い分け:調味料の使用量を減らし、風味づけや食感で工夫することにより料理にアクセントを加える。

このような食事のケアに加え、適度な運動を心がけることで、メタボリックシンドローム予備群から早く脱出しましょう!

参考

(執筆者:萩原有紀)

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