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健康コラム

Vol.76

ニューノーマル時代に健康でいられる家

2020.10.01

新しい生活様式が求められるニューノーマル(新常態)の時代。在宅時間が増えたことで「家」に対する意識が高まっています。なかでも、心身ともに健康でいられる家には多くの人が関心を抱いています。
今後のリフォームや住み替えにぜひ役立ててください。

■生活動線から考える家づくり

コロナ禍は長期化すると予測されていることから、私たちはこの新型コロナウイルスと共存・共生していく必要があり、このWithコロナ社会において「新しい生活様式」が提唱されています。

新しい生活様式の実践例で最も基本的なものは「手洗い」です。新型コロナウイルスも、これから流行シーズンを迎えるインフルエンザウイルスも、くしゃみや咳などによる飛沫(ひまつ)感染だけでなく、「接触感染」(※1)によりうつるといわれており、接触感染を予防するには手洗いが効果的です。

※1 接触感染:感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスがつきます。他の方がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ると粘膜から感染します。

電車のつり革やエスカレーターの手すりなど、外出先で色々なものを触った手には多数のウイルスが付着しているかもしれません。そのウイルスを家の中に持ち込まないためには、帰ったらどこにも手を触れずに、まず洗面台に直行できるような生活動線が理想的です。それが難しい場合は、玄関にアルコール消毒液を置いておきましょう。

なお、2006年に感染症学雑誌で発表された「手洗いの時間・回数による効果」では、手洗いによって残存ウイルス数は減ることが証明されています。

感染症学雑誌「手洗いの時間・回数による効果」

■空気が通る窓の位置とは?

新しい生活様式の具体例として手洗いのほかに挙げられる重要なこととしては「換気」があります。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためには「3つの密(密閉・密集・密接)を防ぐ」ことが重要となり、そのためにも換気は必要です。

換気とは、外気を取り入れて、内部の空気を排出することをいいます。換気で大事なのは、空気の通り道を意識することです。1か所の窓だけでなく、2か所の窓を開けることで空気の通り道ができて効率的な換気ができます。2つの窓は対角線上にあるとさらに効率的です。

これから家を建てるなら、効率的な換気が行えるような窓の位置を意識するとよいでしょう。すでに家があり、しかも窓が1つしかない部屋の場合は、部屋のドアを開けて、扇風機などを窓の外に向けて、汚れた空気を部屋の外に出してあげるとよいでしょう。

■「在宅」のストレスを減らす家づくり

新しい生活様式の実践例として、「働き方の新しいスタイル」が提案され、テレワークも広がってきました。テレワークとは、tere(離れた所)とwork(働く)を組み合わせた造語で、ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを指します。在宅勤務もテレワークの一つです。
在宅勤務は、満員電車に乗らないですむなどのメリットがある一方、テレワーク環境が整っていない家の場合は、仕事がはかどらずストレスになる可能性もあります。

例えば、同じ家に住む複数人が在宅勤務で、オンライン会議やウェブ動画の視聴をし、加えて子どもがオンライン授業を受けるなどした場合、Wi-Fiのスピードが低下する問題が起きることがあります。ほかにも、家族それぞれの個室がない場合や、個室があってもテレワーク環境が整っていない場合もあるでしょう。

では、整ったテレワーク環境というのはどのような環境でしょうか? 次のような項目が考えられます。

<快適なテレワーク環境チェックリスト>

これを機に、ご自宅のテレワーク環境をチェックしてみてはいかがでしょうか。

■「テレワークうつ」を防ぐ家づくり

テレワーク(在宅勤務)によって、仕事も家事もリラックスタイムも同じ家の中で行うようになると、オンとオフの切り替えが難しくなり、メンタルヘルスに不調をきたす恐れがあります。いわゆる「テレワークうつ」です。

対処法として、オンとオフの切り替えを意識的に行うことをおすすめします。そのツールの一つとして「家庭菜園」はいかがでしょう?外の空気を吸って土をさわることで無心になることができ、リラックスできます。

心身の癒しを目的に植物の世話をすることを「園芸療法」「園芸セラピー」と呼び、ストレス緩和や免疫力向上効果があると、医療現場でも注目を浴びています。

また、「テレワークうつ」の原因としては運動不足も考えられます。厚生労働省が策定した「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、1週間で計23エクササイズ以上が望ましいとされています。「エクササイズ」とは身体活動の強度「メッツ」に実施時間をかけた運動の量のこと。たとえば、普通に歩くと3メッツ程度の身体活動なので、毎日60分程度歩くことが健康に良いということです。

規模にもよりますが、家庭菜園での作業は立ったりしゃがんだりするので適度に汗をかきます。国立健康・栄養研究所の改訂版『身体活動メッツ(METs)表』によると、米や野菜の植え付けといった作業は3.8メッツで、肥料を撒いたり作物を収穫したりする作業は4.8メッツとかなりのエクササイズを獲得できます。

これから家を建てる人は、小さくてもいいので庭を作ることをおすすめします。
マンションの人も、ベランダのプランターでもいいので、土を触ることができる環境を作ってみてください。
心身の健康だけでなく、美味しい野菜も手に入れば一石二鳥です。

ニューノーマル時代の家は、「暮らすこと」と「働くこと」が結びついた空間となるでしょう。心も体も健やかでいられるような家づくりを工夫してみてください。

(執筆者:萩原有紀)

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