Vol.79
その症状、冬季うつかも
2021.01.01
この冬は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり憂うつな気持ちになることが多いかもしれませんが、この冬に限らず、毎年冬になると気持ちが落ち込むという方は、ぜひこの記事を読んでセルフチェックしてみてください。
新しい一年を少しでも気持ちよく過ごすために、日常生活の工夫についてもお伝えします。
■うつ病について
うつ病とは「脳のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続く」ことに加え、ときには「さまざまな身体的な自覚症状を伴う」状態をいいます。このような状態が「時間の経過とともに改善しない、あるいは悪化する場合には生活への支障が大きくなり、『病気』としてとらえることになります。」(厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」より)
一口にうつ病と言っても、色々な種類があるので、まず整理してみましょう。
■食べ過ぎ眠り過ぎは冬季うつのサインかも!?
上記うつ病の分類の中で「季節型」は、季節によって変動する環境因子(日照時間、気温、降水量など)によって起こる不調のことです。その季節が過ぎると症状は治りますが、季節が変わるとまた繰り返すというのが特徴的です。
なかでも、今回は冬にうつ症状が出る「冬季うつ」を取り上げます。冬季うつとは季節性感情障害(SAD)のひとつで、1980年代に精神科医のノーマン・E・ローゼンタール氏らによって病態や治療法の研究が行われたことで広く知られるようになりました。夏季に症状が出るケースもありますが、多くは冬季に症状が現れます。
うつ病と聞くと、食べられない、眠れないといった症状が思い浮かびますが、SADの場合は、食べ過ぎたり眠り過ぎたりする傾向が見られます。過眠、過食のほかに、SADの特徴として体重増加、炭水化物渇望などの症状が挙げられます。
日が短くなる冬の間だけこのような症状が出るようならSADが疑われますので、下記チェックリストSPAQ(ローゼンタール氏らによって開発されたチェック方法)を使って確かめてみてください。ただし、正確な判断は専門家に仰いでください。
チェックリスト「SPAQ (Seasonal Pattern Assessment Questionnaire)」
気分や睡眠の季節変動の大きさを知ることができるチェックリスト。A〜Fの各項目の点数を合計し、合計点が7点以下であれば「正常範囲内」、8〜11点であれば「冬季うつの前段階」、12点以上は「冬季うつの可能性がある」とされます。
■幸せホルモンの出し方
冬季うつの発症には、冬の日照時間の減少が大きく関係していると考えられています。日照時間が減ると、脳内の神経伝達物質のひとつであるセロトニン分泌が減ります。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、脳の疲れを防いで心を安定させてくれます。このセロトニンが不足すると、気持ちが落ち込みやすくなります。
また、セロトニンの分泌減少はメラトニン(良質な睡眠に誘うホルモン)の分泌にも影響を与えるため、睡眠障害を引き起こすこともあります。
抗うつ薬は無効なことが多く、光療法が効果的とされています。
光療法とは、簡単にいうと太陽の光を浴びることです。治療効果を得るためには、一般家庭の蛍光灯(300〜500ルクス)などでは足りず、太陽の光のような高照度(2,500〜10,000ルクス)の光が必要です。その光が網膜に届くよう30〜90分ほど浴びます。網膜から光が入ることでセロトニンの分泌が促されます。
太陽の光を浴びることが難しい場合は、医療用の光治療器に頼るのもひとつです。最近では家庭用の安価なものも販売されています。
参考までに、以下に「照度と明るさの目安」(大阪市立科学館ホームページより抜粋)を示します。
■冬季うつを改善・予防するための日常生活の工夫
・太陽の光を浴びる
前述した通り、冬季うつには太陽の光が有効であるため、部屋に太陽の光を取り入れる工夫をしたり、早起きして太陽の光を浴びる時間を多くするなどしましょう。また、朝の太陽の光は、体内時計をリセットしてくれる働きもあります。
体内時計についてはこちらの記事(Vol.70「健康な人の時間管理」)もご覧ください。
・バランスのよい食事
気持ちの落ち込みを防いでくれるセロトニンは、トリプトファン(必須アミノ酸の一種)から作られます。トリプトファンは体内で作ることができず、食物から摂取しなくてはなりません。
トリプトファンは穀類や豆類、肉や魚など幅広い食品に含まれるので色々な食品をバランスよく摂り入れるようにしましょう。
参考:文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表
・軽い運動
セロトニンを増やすには運動も効果的です。
加えて、運動すると、ドーパミンという意欲や快楽に関係するホルモンの分泌も促され、気分の落ち込みを防ぐべくセロトニンと一緒に手助けしてくれます。
朝の軽い運動は、太陽の光も浴びられるのでおすすめです。
いかがでしたか?
冬季うつの方だけでなく、部屋にこもることが増えて光不足になりがちなウィズコロナ時代を生きる私たちにとって、心の健康管理がこれまで以上に重要となってきます。セルフチェック・セルフメンテナンスをして、どうか幸せな一年をお過ごしください!
(執筆者:萩原有紀)
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