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健康コラム

Vol.83

「笑い」のパワーでNK細胞を活性化

2021.05.01

ストレスをため込まない生活習慣を

運動や食生活に加え、ストレスも私たちの免疫力に影響を与えています。順天堂大学の調査では、ストレスを受けると、体内の重要な免疫細胞であるNK細胞の活性を低下させることがわかっています。逆にストレスをため込まず、上手に受け流すことができる人はNK細胞の活性を低下させずにすむ可能性が高まります。そのための重要なファクターのひとつが「笑い」です。

「笑い」がNK細胞を活性化させるという研究結果もあります。有名なのが1991年、吉本興業のなんばグランド花月(大阪)で、20~62歳の男女19人(うち、8人はがんなどの病気で通院治療中)に漫才・漫談・喜劇などを3時間にわたって見せて、その前後のNK細胞の活性度を調べたものです。

それによると、笑い体験後、測定不能だった1人を除く18人中、14人でNK細胞の活性度が上昇していることが確認されました。また、活性度が下降していた4人についてはもともとの活性度が高かった人たちで、下降後もその数値は基準値内に収まっていました。

奥村式「ストレスをため込まない生活習慣」
笑いがNK細胞を活性化する。1日1回は「わはは」と大笑いするよう心がけよう。 嬉しければ喜び、悲しければ悲しむ。感情をため込まず、その都度解放しよう。
親しい人間関係をもとう。適量のお酒を飲んで楽しく会話をするのも良。ただし、飲み過ぎは厳禁。 人づきあいが苦手な人ほど、趣味や地域のサークルなどに積極的に参加を。
「いい人」であることをやめ、
適度にいい加減な人生を送ろう。
なるべく外に出て人と会い、脳に刺激を与えよう。

この結果は、笑いが免疫力アップの強い味方であることを示唆しています。つまりNK活性を上げるためには日頃から笑いを心がけることが必要です。落語が好きで寄席によく行く人や、テレビのお笑い番組を見ていつも笑っている人は、高い免疫力を保持している可能性が高いといえるでしょう。

ただ、「そんなこと言われても簡単に笑えないよ」という人もなかにはいるかもしれません。そんな人は1日1回でもいいので、鏡の前で笑顔をつくってみてはどうでしょうか。つくり笑いをするだけでもNK細胞が活性化するとの報告もあり、努めて笑顔をつくっているうちに心から笑えるようになることもあるかもしれません。笑いだけでなく、喜怒哀楽はなるべくため込まずに、その都度発散したほうが、心が解放されてストレスがたまりにくくなります。

人づきあいが苦手で、親しい友人が少ない人はむしろ積極的に趣味や地域のサークルなどに参加して人と触れ合い、仲間を増やすようにしましょう。

前回と今回の健康コラムで紹介してきた内容をヒントにして免疫力を上げ、新型コロナ禍を乗り切ってください。

※「笑いと免疫能」(伊丹仁朗・昇幹夫・手嶋秀毅、『心身医学』1994年10月号)。

奥村 康

監修/奥村 康

順天堂大学医学部長などを経て、同大医学部特任教授、アトピー疾患研究センター長。免疫学の権威。ベルツ賞、安田記念医学賞、日本医師会医学賞などを受賞。

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