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健康コラム

Vol.84

早期発見のカギは定期健康診断

2021.06.01

肝機能検査で「沈黙の臓器」の異常を見つける

肝臓は体の右上腹部、肋骨の内側付近にある三角形に近い形をした臓器。成人では重量が1キログラム以上にもなり、人の臓器のなかで最大です。2000種類以上ともいわれる酵素を産生し、「体内の化学工場」と称されるその働きは多岐にわたります。

そんな肝臓の大切な働きのひとつが解毒です。アルコールやアンモニア、薬物など体に有害な物質や老廃物を無害化して体外に排出。また、代謝も大切な機能で、体内に取り込まれた栄養素を体が要求する形につくり替えたり、一時的に貯蔵したりしています。ほかにも、脂肪の消化や吸収を助ける胆汁をつくり出す機能や、血液量を調節することによって体温を維持する機能も有します。

そんな重要な役割を担う肝臓ですが、実は痛みを感じる神経がありません。また、代償(失った機能を補うこと)や再生の能力が高く、全体の70%ほどが切除されても数か月後にはほぼ元の大きさまで戻るとされています。それが、多少のダメージを受けても自覚症状が現れにくく、「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんとなっているのです。このため、肝臓の病気を早期に発見して治療するためには、定期的な健康診断で自分の肝臓が正常に働いているかどうかをチェックすることが重要になります。

健康診断などでの肝機能検査(血液検査)の概要
検査項目 概要 異常なし※ 要医療※
AST
(GOT)
ともに肝臓の細胞に含まれている酵素で、肝臓の細胞が壊れると高値になる。基準値内(異常なし)でもALTがASTより高値の場合は肝臓病が疑われる場合があるので注意が必要。 30
以下
51
以上
ALT
(GPT)
30
以下
51
以上
γ-GT
(γ-GTP)
肝臓の解毒に関与している酵素で、とりわけアルコールに敏感に反応するため、アルコール性肝障害の指標になる。 50
以下
101
以上
  • ※公益社団法人日本人間ドック学会「2021年度判定区分表」より。数値は検査機関などによって異なります。単位はU/L。

職場などで受ける定期健康診断や40~74歳の人が受診する特定健康診査(いわゆる「メタボ健診」)の検査項目には、肝機能検査が含まれています。通常は血液検査によって、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)という3つの酵素の数値に異常がないかを調べます。それぞれの概要は上の表を参照してください。

これらの数値が基準値を上回ると、その程度に応じて「軽度異常」、「要経過観察」、「要医療」などに分類され、場合によっては再検査や精密検査、治療の対象となります。なお、基準値などの数値は医療機関や検査機関などによって異なりますので、あなたが受診した機関の数値を確認してください。

これらの数値の異常に加え、家族に肝臓病の人がいる/尿の色が濃い黄色になった/脂っこいものを食べられなくなった/体がだるい/急にお酒に弱くなった、といった症状に思いあたる人は要注意。すぐにでも精密検査を受けるべきです。

なお、再検査は最初の検査結果を確認するための検査、精密検査は見つかった異常の原因を調べ、治療が必要かどうかを判断する踏み込んだ検査になります。近年、肝臓病の治療技術は大きく進歩していますので、放置せず、指示に従い、早期発見に努めましょう。

持田 智

監修/持田 智

埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科診療部長(教授)。一般社団法人日本肝臓学会副理事長、一般財団法人日本消化器病学会副理事長。専門は肝臓病学。

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