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健康コラム

Vol.85

肝硬変や肝がんに進行することもある慢性肝炎

2021.07.01

一生に一度は肝炎ウイルス検査を受けよう

肝臓の代表的な病気は肝臓に炎症が生じる肝炎。大きく急性肝炎と慢性肝炎に分けられ、その多くはウイルスに感染することで発症し(ウイルス性肝炎)、急性の場合は発熱や頭痛、倦怠感などの症状が出ることがあります。通常は1か月程度で治まりますが、まれに急性肝不全という重篤な病態になることがあり、油断は禁物です。

一方の慢性肝炎はB型とC型のウイルスを原因としたものが多く、B型約100万人、C型150万~200万人の感染者が国内にいると考えられていましたが、近年は減少傾向です。また、肝硬変の成因(原因)もB型とC型が計約60%を占めていますが、近年診断された患者では非B非C型が50%以上になっています。

主に血液を介して感染するB型肝炎の感染経路はキャリアの母親から出生時に感染する母子感染が多数ですが、今では防止対策が徹底しており、母子感染はほとんどなくなりました。

一方、成人の場合、キャリアのパートナーとの性交渉で感染することがありますが、その多くは一過性で済み、血中からウイルスが排除される場合がほとんどです。ただし、最近は外国由来のタイプの異なるB型感染ウイルスへの感染例も報告されており、その場合、成人でもキャリアになる可能性があるため、注意する必要があります。

肝硬変の成因

B型の慢性肝炎になると、肝硬変や肝がんを発症する可能性があります。B型の場合、ウイルスを排除することは難しいため、注射薬か、飲み薬の抗ウイルス薬を使って肝硬変や肝がんへの進行を防ぐ治療を行います。

一方のC型肝炎の感染経路は1990年以前の輸血や血液製剤の投与、注射針や注射器の共用といった医療行為が中心で、母子感染や性行為による感染は少ないと考えられます。

キャリアのうち約70%がC型慢性肝炎となります。慢性化すると、自然に治癒することはほとんどなく、炎症が続くと線維化と呼ばれる現象が進行して肝臓が硬くなり、肝硬変になってしまいます。男性では60歳以降、女性では70歳以降に肝硬変にいたることが多く、しかも、肝硬変になると年率6~8%の頻度で肝がんを発症し、高齢の場合は肝硬変を経ずに肝がんを発症するケースもあります。C型の場合、効果の高い飲み薬の抗ウイルス薬が登場しており、治療によるウイルスの排除が可能です。

肝炎ウイルスの有無は医療機関や地域の保健所による血液検査で調べることができますので、一度も受けたことがない人は受検することをおすすめします。

持田 智

監修/持田 智

埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科診療部長(教授)。一般社団法人日本肝臓学会副理事長、一般財団法人日本消化器病学会副理事長。専門は肝臓病学。

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