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健康コラム

Vol.86

多量飲酒や生活習慣病が誘因となる脂肪肝

2021.08.01

早期に発見し、生活習慣の改善に取り組む

ウイルス性肝炎以外の肝臓病の代表格が脂肪肝です。肝細胞は糖質を中性脂肪に変えてためる性質があり、適切に消費されていれば問題ありませんが、糖質や脂質の摂り過ぎで中性脂肪が過剰にたまると、脂肪肝になります。

脂肪肝は、お酒の飲み過ぎを原因とするアルコール性脂肪肝と、お酒以外を原因とする非アルコール性脂肪肝(NAFLD(ナッフルディー))に大別されます。

このうち、アルコール性脂肪肝はさらにお酒を飲み続けていると、アルコール性肝炎やアルコール性肝線維症になり、さらには肝硬変や肝がんへと進行して命の危険にさらされることになります。原因がはっきりしているだけに、脂肪肝になる前に医師の指示に従い禁酒や節酒に取り組むのが治療の基本です。

一方のNAFLDはお酒をそれほど飲まない(純アルコール量で男性が1日30グラム未満、女性が同20グラム未満)人が発症する脂肪肝で、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などを伴うことが多く、メタボリックシンドロームの病態のひとつと考えられており、患者数は1000万人以上と推定されています。

脂肪肝の分類と進行の経過

その80~90%は病気がほとんど進行しないNAFLと呼ばれる脂肪肝で、10~20%は肝硬変や肝がんにつながるリスクが高い非アルコール性脂肪肝炎(NASH(ナッシュ))。ただし、NAFLとNASHは相互に移行することがあり、NAFLの一部も線維化が進行して肝硬変や肝がんになり得ます。

このように肝硬変や肝がんの発症には線維化が深く関係しており、線維化の程度をスクリーニングすることが大切。「FIB-4 index」と呼ばれる肝線維化マーカーで数値が1・3以上なら「注意」、2・67以上なら「要注意」と判定されますので、肝臓専門医を受診して肝硬度を測定し、肝がん発症のリスクに応じて経過観察、ないし治療を行います。なお、「FIB-4 index」は日本肝臓学会のサイトで自動計算が可能です※。

治療の基本は食事療法と運動療法の併用です。食事は1日3食を決まった時間に規則正しく食べ、栄養のバランスに注意しましょう。食べる量は「腹8分目」で、脂肪分の摂り過ぎにはとくに注意。肉を食べる場合、牛肉・豚肉ならひれ肉やもも肉、鶏肉ならささみやむね肉が脂質が少なく、おすすめです。

運動はウオーキングやジョギング、水泳などがおすすめ。それまであまり運動をしていなかった人は1日20分程度の早歩きから取り組みます。仕事帰りに1駅手前で降りて歩くなど、日常生活でも体を動かす時間を増やしましょう。

持田 智

監修/持田 智

埼玉医科大学病院消化器内科・肝臓内科診療部長(教授)。一般社団法人日本肝臓学会副理事長、一般財団法人日本消化器病学会副理事長。専門は肝臓病学。

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