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健康コラム

Vol.87

身近にある肺炎の危険に注意

2021.09.01

風邪やインフルエンザ、新型コロナが引き金に

人が生きていくために欠かせない、呼吸にまつわる体の組織を呼吸器と呼び、鼻腔や咽頭などから気管・気管支を経て肺に至る一連の器官を指します。このうち、肺は空気から酸素を体内に取り込み、逆に体内でつくられた二酸化炭素を体外に排出する「ガス交換」という大事な役割を果たしている臓器です。

その肺に病原微生物が感染して炎症を起こすと肺炎になります。厚生労働省の2019年人口動態統計によると、年間約9万5000人が亡くなっており、死因別では、がん・心疾患・老衰・脳血管疾患に次いで5位、別の疾患として分類されている誤嚥性肺炎の死者(約4万人)を合わせると3位です。肺炎は高齢者の罹患率・死亡率がともに高く、とくに注意が必要です。

1日に8000~1万リットルの空気を吸い込む肺は、無数の細菌やウイルスの脅威につねにさらされた状態です。そこで肺の組織や空気の通り道である鼻腔や気道にはそれらを肺に侵入させない防御システムが備わっています。しかし、細菌やウイルスの量が多かったり、加齢や持病で防御機能が低下していたりすると感染して炎症を起こします。

脂炎とは?

原因となる微生物は「肺炎球菌」「マイコプラズマ」などの菌や「インフルエンザウイルス」「コロナウイルス」などのウイルス、さらに真菌(カビ)など多岐にわたります。なかでも最も多いのが、文字どおり肺炎を起こす球状の細菌である「肺炎球菌」です。名前に「肺炎」の文字を冠していますが、肺以外にも感染症を起こします。とくに小児ではしばしば中耳炎、副鼻腔炎の原因となり、ときに進行して髄膜炎を起こすこともあります。小児の鼻やのどにすみつき、せきやくしゃみによって成人に感染することも多いと考えられています。

昨年(2020年)からすっかり知名度を上げたPCR検査は近年、急速に普及が進み、これまでの認識より肺炎の原因としてウイルスの頻度が高いことがわかってきています。ウイルスに罹患した後に細菌感染を起こすこともあり、有名な「スペインかぜ」も直接の死因はインフルエンザ後の肺炎球菌性肺炎であったとされています。

昨年来、習慣化したマスク着用、手洗い、「3密」回避などはいずれの感染症にも有効な予防法です。それにより昨年のインフルエンザの発症が極端に少なかったのはよく知られています。また、肺炎球菌、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスには有効なワクチンがあります。それぞれ対象や接種法が異なりますので、確認のうえ接種することをお勧めします。

  • ※人口動態統計では「がん」は「悪性新生物<腫瘍>」と表記されています。
生島 壮一郎

監修/生島 壮一郎

産業医科大学卒業後、日本赤十字社医療センター(東京)の呼吸器内科部長などを経て、現在は企業の産業医を務めながら同科の非常勤医師として診療を続けている。

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