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健康コラム

Vol.89

カビや羽毛が原因となる過敏性肺炎

2021.11.01

エアコンや加湿器、羽毛ふとんなどに注意し、疑わしい場合早めの対処を

ウイルスや細菌の「感染」による肺炎とは異なり、カビや鳥の羽毛などへの「アレルギー反応」による肺炎も存在します。「過敏性肺炎」と呼ばれ、一般には認識が薄いため、しばしば「感染」による肺炎と誤って診断されます。しかし、命にかかわるような呼吸困難に至ることもあり、軽視できません。

代表的なものが梅雨時期から初秋にかけて発症者が増える「夏型過敏性肺炎」。日当たりの良くない家屋の畳や押し入れ、浴室や洗面所などの水回りに生息するトリコスポロンと呼ばれるカビによって起こり、咳や微熱、息苦しさなどの症状が出ます。

エアコンのなかに生じるいくつかのカビによっても同様の症状が起きることが判明しています。そのカビに対しアレルギーをもつ人だけに起きるため、気づいていない人も少なくありません。世相を反映し、故郷に帰省して空き家となっている実家を掃除した後に決まって肺炎になる人もおられます。

重い症状はないものの、長く続く「慢性過敏性肺炎」の場合はより厄介で、そのうち治るだろうと市販の風邪薬などで済ませているうちに肺が致命的なダメージを受けることもありますので、症状が長引く場合は早めに呼吸器内科専門医に相談してください。

予防は押し入れの奥や畳の裏、浴室、洗面所などをこまめに掃除して換気も行うこと。エアコンは取扱説明書にしたがいフィルターを丁寧に掃除します。

過敏性肺炎の原因となる環境因子と予防・対処法など

一方、冬の乾燥対策として利用する加湿器がもとで過敏性肺炎を発症することもあります。加湿器内部に発生したカビがタンクの水とともに放出され肺に炎症を起こすのです。これもすべての人が肺炎を起こすわけではなく、原因に気づきにくい傾向があります。

カビを増やさないためには、スチーム式(加熱式)の加湿器の方が安全です。また、どのタイプの加湿器でも取扱説明書にしたがって内部や吹き出し口、フィルターの掃除をし、残ったタンクの水は継ぎ足しせず、新しい水に入れ替えましょう。水は水道水を使用すること。含まれている残留塩素が細菌の繁殖抑制に有効だからです。

このほか、「鳥」も過敏性肺炎の原因になります。鳥の糞に含まれるたんぱく質に対するアレルギーが原因ですが、羽毛ふとんやダウンジャケットに使われている羽毛に付着するたんぱく質が原因のケースも報告されています。

いずれも原因物質から離れると自然に症状が軽くなり診断が難しいことも多いため、疑わしい場合には呼吸器内科専門医の受診をおすすめします。

生島 壮一郎

監修/生島 壮一郎

産業医科大学卒業後、日本赤十字社医療センター(東京)の呼吸器内科部長などを経て、現在は企業の産業医を務めながら同科の非常勤医師として診療を続けている。

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