検索

健康コラム

Vol.95

不整脈との付き合い方
種類や症状によって異なる治療法

2022.05.01

一部の頻脈性不整脈を根治できる治療法も

前々回でご紹介したように、不整脈にはさほど心配の要らないものから命にかかわるものまで多くのタイプがあり、治療法も不整脈の種類や程度、他の心疾患や基礎疾患の有無などを考慮して決められます。

治療は、大きく薬物療法と非薬物療法に分けられ、薬物療法は主に頻脈性不整脈の発作を抑え、症状を改善させる抗不整脈薬が中心です。このうち頻度が高い不整脈である心房細動の薬物療法には、異常な興奮を抑えて拍動を正常なリズムに戻すリズムコントロールや、心室に伝わる電気刺激を抑えて心拍数を減らすレートコントロールなどがあります。

また心房細動では血栓をつくり、危険な脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こす恐れがあるため、血栓予防の抗凝固薬の使用も検討されます。

一方、非薬物療法ではカテーテルアブレーションという治療が増えています。カテーテル電極を心臓に送り込み、高周波電流で不整脈の原因部分を焼ききる治療法で、発作性上室性頻拍や特発性心室頻拍、心房粗動などは根治が期待できます。治療には入院が必要です。なお、近年は心房細動でもこの治療を行えるようになり、治療成績も上がっています。

不整脈の主な治療法

また、徐脈性不整脈でよく用いられるのがペースメーカ。人工的な電気刺激を自動で心筋に送って心拍数を増やす機器です。洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈性不整脈で、めまいや失神、心不全がある場合などに検討されます。ペースメーカ本体は20~30グラムと小型化し、術後もほとんど目立ちません。左の鎖骨下に植え込む手術は局所麻酔により1~3時間ほどで終わる比較的安全なものです。電池の寿命は5~10年で、電池交換は本体ごと交換する手術が必要です。

最後にご紹介する植え込み型除細動器(ICD)は、近年公共の場所への設置が増えているAED(自動体外式除細動器)の体内版といえるものです。心室頻拍や心室細動など突然死につながる恐れのある致死性不整脈が対象で、ペースメーカと同じように体内に埋め込みますが、手術には全身麻酔が必要になります。電池の寿命は4~5年で、寿命が尽きたら再手術で本体ごと取り替えます。

なお、不整脈はストレスや睡眠不足、大量の飲酒、喫煙、肥満なども誘因となります。生活習慣の改善にも努めるようにしましょう。

清水 渉

監修/清水 渉

日本医科大学大学院医学研究科循環器内科学分野教授。広島大学医学部卒。国立循環器病研究センターを経て現職。

バックナンバー

全てを表示閉じる